ペンフレンド~君と綴った季節~

クニ

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95,*四者会談 4*

  上田夫妻は舞を預けた小浜哲司と弁護士の桜庭洋子を交えて四回目の会合を持った。
 場所は前回同様、喫茶店『ピッコロ』の二階席である。

徹  「そろそろ決断をするべきでは無いだろうか?」
小浜 「とは言っても、舞ちゃんの気持ちはまだ、何とも言えないんですよ」

徹  「そんな悠長な事を言って居る間にも、加害者たちは野放で居て、おまけに、
    痛くも痒くもなくのほほんとしているんだよ」
綾  「でも、舞の気持ちを優先するって、この前に決めたでしょ」

徹  「じゃ、いつまでもこうして居ろって言うのか」
綾  「もう少し待って見ても。舞は転校したばかりだし、新しい環境に慣れるまでにはまだまだ    
    時間が必要だと思います。それに、そっちもこっちもと成ると身が持ちませんよ」

 徹は些か苛立っていた。自らが密かに報復の緒に着いて居る事を曝露(ばくろ)しかねない。
 
小浜 「他にも何らかの方法が有るのでは~。無暗に白黒を付けるのもどうかと思いますが」

 徹は懐から加害者がその時の様子を映しとった例の写真が入って居る封筒を取り出した。

徹  「桜庭さん、これが有れば彼らを糾弾する事が出来ますか?」
桜庭 「拝見します」

 以前から知られて居たいわくつきの写真に誰もが興味を示さない筈が無い。
 それよりも先に、どうしてそれを徹が手に入れたのかと云う疑問も生じて居る筈である。
 綾は桜庭が見入って居る様子をハラハラドキドキの体で凝視して居た。

綾  『一体、どんな風に撮られて居るのだろうか?』
 と思いつつも、その存在自体を失くしてしまいたい思いにも駆られて居る。

 桜庭はその写真を改めると、すぐさま、封筒の中に仕舞い徹の手もとに差し出した。
 とても、テーブルに広げて見せられる品物では無かったからだ。

 綾の視線がその封筒に釘付けになって居るのを見て取った徹は、

徹  「君は見ない方が善い。眼を背けずには居られないだろうから~」
綾  「でも~」

小浜 「綾さん、ここは堪えて然るべきだと思いますよ。僕も控えさせて貰いますから。実際に見 
    無くても凡その見当は付くでしょう」

 綾は小浜の言葉に諭されたのか、乗り出していた体を深々と椅子に沈めた。

徹  「で、どうしょうか?」
桜庭 「はい。起訴にまで持って行くには十分ですが、前にも言った様に舞さんの証言、若しくは  
    意思表示が必要に成るかと~」

徹  「やはり、舞を表に出させる事に変わりは無いんですね」
桜庭 「何分、当事者ですから~」


 しばらくの沈黙が有って、

綾  「舞の様子に変わりは有りませんか?」
小浜 「ええ、周りを気遣う事が無いので、時々、香と一緒に散歩に出たりしています」

 綾の表情に幾らかの安らぎが浮んだ。
 徹も一安心と云った所である。
 迷いあぐねたが舞を小浜に預けたのは正解だった様だ。

 結局、今回も被害届を出す出さないの結論には至らなかった。
 遅々として進まない状況に苛立ちの色が誰しもに覗われて居た。

 

 


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