144 / 843
一日で見つかるなら良いが
しおりを挟む
「あの、ティールさん。この後お時間はありますか?」
「ありますけど……どうしたんですか」
「ギルドマスターが是非話したいと」
(またこのパターンか)
もしかしたら、こうなるかもしれないと思っていたが、その通りになってしまった。
(今回もランクアップを勧められるのか?)
この歳でランクがベテランの域に達すれば、厄介事が増えるかもしれないという考えは変わらない。
だが、その考えが徐々に変わり始めてきた。
「分かりました、今行きます。話が終わるまでに、換金の用意をお願いします」
「か、かしこまりました」
「おい坊主!! 全部売っても良いのか? 多分、肉は美味い筈だぞ!!!」
「……なら、肉と爪だけは残しておいてください」
肉は自分で食し、爪は武器の材料に使う。
空間収納を持っているティールであれば、好きなタイミングで行える。
そしてティールは受付嬢に案内され、ギルドマスターが案内されている部屋へと連れてこられた。
「やぁ、君が噂のモンスターを倒してくれた冒険者か」
「どうも、Eランクのティールです」
「君の話は噂程度が、知っているよ。さぁ、まずは座ってくれ」
言われるがままにソファーに座り、出された紅茶を飲む。
「味はどうだい」
「……舌が肥えてはいないですけど、美味しいと思います」
「そうか、そう言ってくれると嬉しいよ。おっと、自己紹介がまだだったね。僕はこの街のギルドマスター、オルアットだ。一応元Bランクの冒険者だ」
元高ランクの冒険者と聞き、ティールは直ぐに納得した。
(柔らかい雰囲気を出してるけど、多分……心の中には冒険者らしい鋭さがある筈だ)
相手がギルドマスターということもあり、鑑定は使わない。
しかし、視ずとも強者だということは解った。
「それで、ツインヘッドベアーをどうやって倒したのか教えて貰っても良いかな」
「まず、速さで不意を突いて背後を取り、剣を振るいました。だが、それは野生の勘で躱された」
「獣系のモンスターはそういうところがあるよね」
「避けられましたけど、体勢が悪かったので後ろから蹴り飛ばしました。ツインヘッドベアーは盛大にこけたので、上から二つの頭をほぼ同時に突いて終わらせました」
「なるほど、確かに死体から予想できる倒し方だ」
ポーカーフェイスを保っているオルアットだが、実際に起こったであろう現実に内心、驚きまくっていた。
(確かこの子は十二歳だよな……十二歳の冒険者がツインヘッドベアーの身体能力を上回っているのにまず驚かざるを得ない。もしかしたら、ティール君がブラッディ―タイガーを一人で倒したという話も本当なのかもしれないな)
旅の冒険者が漏らした噂であり、その話を誰も信じようとは思わなかった。
ギルドマスターであるオルアットも九割方は信じていなかった……こうしてその英雄を目にするまでは。
(雰囲気で解る……この子は異常だ。Cランクのモンスターを一人で倒すだけでも稀な存在だが、Bランクの猛獣をソロで倒すとは……とんでもない傑物が生まれたものだ)
同じ冒険者だった者として、嫉妬すら覚える才をティールから感じた。
「……オルアットさんなら、一人でツインヘッドベアーを倒せたんじゃないですか」
「ん? あぁ、なるほど。確かに僕なら噂のモンスター、ツインヘッドベアーを倒せたと思っている冒険者多いだろうね。でも、僕にも立場というものがある」
「立場……そうか、そうでしたね。ギルドマスターじゃなきゃ、できない仕事はたくさんありますよね」
「そういうことなんだ。解ってくれて嬉しいよ」
書類仕事はギルドマスターが直接確認しなければならない物が多い。
一日でツインヘッドベアーを発見出来るなら、オルアットも腰を上げて討伐に臨む。
だが、そう簡単に見つからないからこそ、オルアット自ら動けないのだ。
(なにはともあれ、ツインヘッドベアーを討伐してくれたことには感謝しなければ。スピードは微妙だが、四本の腕と力、そして視野の広い二つの頭が厄介なモンスターだ……倒せる冒険者がこの街にいるか、怪しいところだしね)
最悪の場合は他のギルドから救援を頼まなければならいのだが、他のギルドに借りを作る形になるので、オルアットとしては避けたい手だった。
「ありますけど……どうしたんですか」
「ギルドマスターが是非話したいと」
(またこのパターンか)
もしかしたら、こうなるかもしれないと思っていたが、その通りになってしまった。
(今回もランクアップを勧められるのか?)
この歳でランクがベテランの域に達すれば、厄介事が増えるかもしれないという考えは変わらない。
だが、その考えが徐々に変わり始めてきた。
「分かりました、今行きます。話が終わるまでに、換金の用意をお願いします」
「か、かしこまりました」
「おい坊主!! 全部売っても良いのか? 多分、肉は美味い筈だぞ!!!」
「……なら、肉と爪だけは残しておいてください」
肉は自分で食し、爪は武器の材料に使う。
空間収納を持っているティールであれば、好きなタイミングで行える。
そしてティールは受付嬢に案内され、ギルドマスターが案内されている部屋へと連れてこられた。
「やぁ、君が噂のモンスターを倒してくれた冒険者か」
「どうも、Eランクのティールです」
「君の話は噂程度が、知っているよ。さぁ、まずは座ってくれ」
言われるがままにソファーに座り、出された紅茶を飲む。
「味はどうだい」
「……舌が肥えてはいないですけど、美味しいと思います」
「そうか、そう言ってくれると嬉しいよ。おっと、自己紹介がまだだったね。僕はこの街のギルドマスター、オルアットだ。一応元Bランクの冒険者だ」
元高ランクの冒険者と聞き、ティールは直ぐに納得した。
(柔らかい雰囲気を出してるけど、多分……心の中には冒険者らしい鋭さがある筈だ)
相手がギルドマスターということもあり、鑑定は使わない。
しかし、視ずとも強者だということは解った。
「それで、ツインヘッドベアーをどうやって倒したのか教えて貰っても良いかな」
「まず、速さで不意を突いて背後を取り、剣を振るいました。だが、それは野生の勘で躱された」
「獣系のモンスターはそういうところがあるよね」
「避けられましたけど、体勢が悪かったので後ろから蹴り飛ばしました。ツインヘッドベアーは盛大にこけたので、上から二つの頭をほぼ同時に突いて終わらせました」
「なるほど、確かに死体から予想できる倒し方だ」
ポーカーフェイスを保っているオルアットだが、実際に起こったであろう現実に内心、驚きまくっていた。
(確かこの子は十二歳だよな……十二歳の冒険者がツインヘッドベアーの身体能力を上回っているのにまず驚かざるを得ない。もしかしたら、ティール君がブラッディ―タイガーを一人で倒したという話も本当なのかもしれないな)
旅の冒険者が漏らした噂であり、その話を誰も信じようとは思わなかった。
ギルドマスターであるオルアットも九割方は信じていなかった……こうしてその英雄を目にするまでは。
(雰囲気で解る……この子は異常だ。Cランクのモンスターを一人で倒すだけでも稀な存在だが、Bランクの猛獣をソロで倒すとは……とんでもない傑物が生まれたものだ)
同じ冒険者だった者として、嫉妬すら覚える才をティールから感じた。
「……オルアットさんなら、一人でツインヘッドベアーを倒せたんじゃないですか」
「ん? あぁ、なるほど。確かに僕なら噂のモンスター、ツインヘッドベアーを倒せたと思っている冒険者多いだろうね。でも、僕にも立場というものがある」
「立場……そうか、そうでしたね。ギルドマスターじゃなきゃ、できない仕事はたくさんありますよね」
「そういうことなんだ。解ってくれて嬉しいよ」
書類仕事はギルドマスターが直接確認しなければならない物が多い。
一日でツインヘッドベアーを発見出来るなら、オルアットも腰を上げて討伐に臨む。
だが、そう簡単に見つからないからこそ、オルアット自ら動けないのだ。
(なにはともあれ、ツインヘッドベアーを討伐してくれたことには感謝しなければ。スピードは微妙だが、四本の腕と力、そして視野の広い二つの頭が厄介なモンスターだ……倒せる冒険者がこの街にいるか、怪しいところだしね)
最悪の場合は他のギルドから救援を頼まなければならいのだが、他のギルドに借りを作る形になるので、オルアットとしては避けたい手だった。
102
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
兄が【剣聖】、妹は【聖女】になった双子の転生者はのんびり冒険者やってます♪
雪奈 水無月
ファンタジー
「兄は剣聖、妹は聖女──でも、転生理由は女神の“うっかり”でした。」
平凡な放課後が、空に走る黒い亀裂で終わりを告げる。
与えられたのは最強の力と、新しい世界イングレイスでの第二の人生。
しかし、転生直後に待っていたのは──濃い霧と、不気味な視線。
手を離したら、もう二度と会えない。
これは、剣と癒しで道を切り拓く兄妹の冒険の始まり。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ
翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL
十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。
高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。
そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。
要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。
曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。
その額なんと、50億円。
あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。
だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。
だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。
異世界立志伝
小狐丸
ファンタジー
ごく普通の独身アラフォーサラリーマンが、目覚めると知らない場所へ来ていた。しかも身体が縮んで子供に戻っている。
さらにその場は、陸の孤島。そこで出逢った親切なアンデッドに鍛えられ、人の居る場所への脱出を目指す。
〈完結〉貴女を母親に持ったことは私の最大の不幸でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」ミュゼットは初潮が来た時に母から「唯一のこの家の女は自分」という理由で使用人の地位に落とされる。
そこで異母姉(と思っていた)アリサや他の使用人達から仕事を学びつつ、母への復讐を心に秘めることとなる。
二年後にアリサの乳母マルティーヌのもとに逃がされた彼女は、父の正体を知りたいアリサに応える形であちこち飛び回り、情報を渡していく。
やがて本当の父親もわかり、暖かい家庭を手に入れることもできる見込みも立つ。
そんな彼女にとっての母の最期は。
「この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。」のミュゼットのスピンオフ。
番外編にするとまた本編より長くなったりややこしくなりそうなんでもう分けることに。
召喚聖女の結論
こうやさい
ファンタジー
あたしは異世界に聖女として召喚された。
ある日、王子様の婚約者を見た途端――。
分かりづらい。説明しても理解される気がしない(おい)。
殿下が婚約破棄して結構なざまぁを受けてるのに描写かない。婚約破棄しなくても無事かどうかは謎だけど。
続きは冒頭の需要の少なさから判断して予約を取り消しました。今後投稿作業が出来ない時等用に待機させます。よって追加日時は未定です。詳しくは近況ボード(https://www.alphapolis.co.jp/diary/view/96929)で。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/937590458
【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる