あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

Gai

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成長出来ない

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「意外だったな」

「何がだ、ラスト」

昼食を食べ終えた後、ティールたちは冒険者ギルドから出て適当にブラついていた。

「マスターは、あの男の事を嫌っていただろう」

「まぁ、それは否定出来ないな」

過去の件がティールの中で完全に消えてはおらず、相変わらず思うところはある。

「先程ヒツギに対して行ったアドバイス……あれはそう簡単に実行出来る内容ではないと思うが、それでも絶対に出来ない事ではないだろう」

「……ラストの言う通り、困難ではある不可能ではない助言だな」

ヒツギと同じく刀を扱うアキラが、先程ティールがヒツギに対して伝えた内容は、紛れもなくアドバイスだったと断言する。

「…………なんと言うか、ヒツギが並の冒険者じゃないのは、間違いないだろう」

「あぁ、そうだな。これまで無謀にもマスターに敵意などを向けてきた者たちとは違った」

今回の模擬戦でラストも実際にヒツギと手合わせを行い、その実力が偽物でも虚勢でもないことを感じ取った。

「それで、俺に対する意識も変わったことも解った……俺と勝負をしたいって頼んできた時に気持ちが本物だったことも、解ってる」

「彼はティールと戦う為に、土下座までしたな」

恥を忍んで相手に何かを頼み込む時に行う行動の一つ、土下座。

嫌々行っているのではなく、心の底から頼み込んでいることが伝わってきたからこそ……ティールも速攻で無理だと断ることが出来なかった。

「それで、実際に戦闘を行って解ったこともあった…………だから、好きじゃない奴だからって一蹴するのは、良くないって感じたんだ」

ティールからすれば、初対面の時ほどの嫌悪感は薄れたものの、根っこはそこまで変わっていない。
しかし、ヒツギは間違いなくティールに対する態度が変わった。
それは媚びへつらう様な態度ではなく、一人の冒険者として……自分よりも強い猛者に対する敬意を持つようになった。

嫌っていた相手が変わった……であれば、ティールも考えを改めなければならないと思った。

「なんか、そういう風にしないと成長出来ないというか、俺は……ずっと子供のままなんじゃないかと思ってさ」

現在、ティールはまだ十五を越えていない。
冒険者として最前線で活躍しているが、それでも年齢的には子供であり、ギフトの影響で大人に近い思考は出来ても、感性などはまだ子供のまま。

だからこそ、まだ気にすべきことではない……と、ラストとアキラは口にしそうになった。

(っ…………いや、ここでそれを言うのは、無粋というものか)

(ティールは、間違いなく成長しようとしている。精神の成長は、時として肉体の成長以上に重要…………まだ子供のままでも良いと言うのは、ティールの向上心に対し、失礼というものか)

口に出しかけた言葉をグッと飲み込み、二人はリーダーの成長に対し……小さな笑みを零した。

「だから、どうすれば良いか教えたんだ。ラストやアキラさんの言う通り、結構無茶な内容ではあるけど」

「そうか…………良い判断だと、俺は思う」

「あぁ、私もだ」

お世辞ではない……そして、誇張表現もない。
シンプルな賞賛を受け、ティールは少々照れながらも、笑みを零した。




「ティールさん!!!」

「? あぁ、ノルガさんですか。どうしたんですか?」

数日後、宿の食堂で朝食を食べていた三人の元に、やや息切れしたノルガが訪れた。

「で、出来たん、です」

「出来たというのは……もしかして、アキラさんの刀のことですか?」

「そうです!!!! 本当に、凄いんです!!!!」

息切れした状態でも、興奮気味に語るノルガ。

ラストが気を利かせて水を貰い、有難く一気飲みして喉を潤すも……その興奮は冷め収まらない。

三人はまだ残っていた朝食を一気に食べ終わり、ノルガと共にサルバの鍛冶場へと向かった。
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