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討伐ではなく調査
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「っと!!!!」
「っ!!! す、すいません」
「気にするな。しかし、グレイズ」
「大丈夫です」
ティールの中々力の籠った右フックが炸裂し、そのまま殴り飛ばされたグレイズ。
なんとか先輩の調査隊員が受け止めてくれたお陰で、壁に激突せずには済んだ。
ただ……ダメージは大きい。
主な怪我は右腕だけだが、上腕の骨を完全に砕かれた。
これまでの戦闘経験からそれぐらいのダメージ、痛みであれば……戦闘を続けることは出来る。
しかし、槍は片腕で扱うような武器ではない。
「はぁ、はぁ」
「いや、えっと……まだ戦るんですか」
都合良く、片腕が使えなくなったのであれば、この武器を使えば良い!!! といった変えの武器は存在しない。
「当然だ。俺は、まだ意識を、失ってないぞ」
意識を失ってなければ、まだ戦える。
その闘争心に関しては、非常に立派だと称賛の拍手を送りたくなる。
ティールだけではなく、ラストやアキラたちもグレイズの事を本当に口先だけの、威勢だけの男ではないのだと認めるところ。
しかし、片腕を使えなくなったという状況は、万に一つを起こせない致命的な展開。
「それはそうなんですけど…………それじゃあ、次は片腕が片足か……細切れにしますね」
「っっっっ!!!!」
片腕を潰した。
それでも勝とうと向かってくる闘争心は見事なもの。
そこに関しては認めているものの、ティールにとってグレイズは友人ではなく、旧知の仲でもなければ、会えばそれなりに話す知人でもない。
ヒツギに関しては初対面であっても、まだ百パーセントと嫌いになり切れない部分があった。
しかし、グレイズは違う。
そのため……ティールが口から零した言葉は脅しではなく、本気だった。
「そこまで」
「なっ!!」
「勝者はティール君」
しかし、ティールが動き出すよりも前に、審判を務めているバレンダが試合終了を……ティールの勝利を宣言した。
「ば、バレンダさん!! 俺はまだ、戦れます!!!!」
「その気合、根性は君の良いところだ……本当にそう思っている」
グレイスの本名はグレイス・ウェルバン。
彼は侯爵家の令息であり、本来であれば騎士としての出世コースを用意される様な環境に身を置いていた。
しかし、その道を蹴って調査隊に入り、一般的な貴族令息らしくない……泥にまみれることが出来るタイプ。
そんな性格もあって、先輩たちから可愛がられている。
「でも、槍を両腕で震えなければ、槍使いとしては行動不能と同じだよ」
「っ!!」
「場所が場所で、相手がモンスターなら話は違うと思うけど、今回は対人戦。ティール君は傷一つ負っていなくて、魔力にもまだまだ余裕がある。それに、まだ手札を全て出し切っていない可能性もある……それらの状況、可能性を考えた上で、まだ彼に挑もうとするのかい」
「っっっっ…………自分の、負けです」
調査隊は、ファルティナの大秘境で遭遇したモンスターと戦うことはあ日常茶飯事。
ただ、最後の最後に優先しなければならないのは、討伐ではなく調査。
その場にいるメンバーたちの力だけでは討伐出来ないモンスターの強さ、特徴などを調査隊の屋敷にまで持って帰ってくること。
ティールとの戦いで頭に血が上っていたグレイズだったが、その調査隊の行動理由は目的などを忘れていた訳ではない。
「そうだね…………」
「うっ……っ」
ジッとバレンダに見つめられ、圧を掛けらるグレイズ。
隊長が自分に何を言いたいのかを察し、苦々しい表情を浮かべながらも移動。
ティールの前まで向かい、軽く頭を下げた。
「参りました、俺の負けです」
「うん……分かりました」
審判であるバレンダが妥当な判断を下してくれ、渋々といった表情ではあるが、グレイズ本人も自身の負けを認めた。
であれば、ティールとしても言うことはない。
「ティール君、今日はこちらの私情に付き合ってくれてありがとう」
「いえ。ちゃんと報酬は頂きましたので」
「ふふ、そうか……もし、ファルティナの大秘境で何か解らないことがあれば、空いている時間があれば相談に乗るから、いつでも声を掛けてね」
「覚えておきます」
こうしてティールは楽な仕事で白金貨一枚を手に入れ、二人と共に調査隊の屋敷から出て行った。
「っ!!! す、すいません」
「気にするな。しかし、グレイズ」
「大丈夫です」
ティールの中々力の籠った右フックが炸裂し、そのまま殴り飛ばされたグレイズ。
なんとか先輩の調査隊員が受け止めてくれたお陰で、壁に激突せずには済んだ。
ただ……ダメージは大きい。
主な怪我は右腕だけだが、上腕の骨を完全に砕かれた。
これまでの戦闘経験からそれぐらいのダメージ、痛みであれば……戦闘を続けることは出来る。
しかし、槍は片腕で扱うような武器ではない。
「はぁ、はぁ」
「いや、えっと……まだ戦るんですか」
都合良く、片腕が使えなくなったのであれば、この武器を使えば良い!!! といった変えの武器は存在しない。
「当然だ。俺は、まだ意識を、失ってないぞ」
意識を失ってなければ、まだ戦える。
その闘争心に関しては、非常に立派だと称賛の拍手を送りたくなる。
ティールだけではなく、ラストやアキラたちもグレイズの事を本当に口先だけの、威勢だけの男ではないのだと認めるところ。
しかし、片腕を使えなくなったという状況は、万に一つを起こせない致命的な展開。
「それはそうなんですけど…………それじゃあ、次は片腕が片足か……細切れにしますね」
「っっっっ!!!!」
片腕を潰した。
それでも勝とうと向かってくる闘争心は見事なもの。
そこに関しては認めているものの、ティールにとってグレイズは友人ではなく、旧知の仲でもなければ、会えばそれなりに話す知人でもない。
ヒツギに関しては初対面であっても、まだ百パーセントと嫌いになり切れない部分があった。
しかし、グレイズは違う。
そのため……ティールが口から零した言葉は脅しではなく、本気だった。
「そこまで」
「なっ!!」
「勝者はティール君」
しかし、ティールが動き出すよりも前に、審判を務めているバレンダが試合終了を……ティールの勝利を宣言した。
「ば、バレンダさん!! 俺はまだ、戦れます!!!!」
「その気合、根性は君の良いところだ……本当にそう思っている」
グレイスの本名はグレイス・ウェルバン。
彼は侯爵家の令息であり、本来であれば騎士としての出世コースを用意される様な環境に身を置いていた。
しかし、その道を蹴って調査隊に入り、一般的な貴族令息らしくない……泥にまみれることが出来るタイプ。
そんな性格もあって、先輩たちから可愛がられている。
「でも、槍を両腕で震えなければ、槍使いとしては行動不能と同じだよ」
「っ!!」
「場所が場所で、相手がモンスターなら話は違うと思うけど、今回は対人戦。ティール君は傷一つ負っていなくて、魔力にもまだまだ余裕がある。それに、まだ手札を全て出し切っていない可能性もある……それらの状況、可能性を考えた上で、まだ彼に挑もうとするのかい」
「っっっっ…………自分の、負けです」
調査隊は、ファルティナの大秘境で遭遇したモンスターと戦うことはあ日常茶飯事。
ただ、最後の最後に優先しなければならないのは、討伐ではなく調査。
その場にいるメンバーたちの力だけでは討伐出来ないモンスターの強さ、特徴などを調査隊の屋敷にまで持って帰ってくること。
ティールとの戦いで頭に血が上っていたグレイズだったが、その調査隊の行動理由は目的などを忘れていた訳ではない。
「そうだね…………」
「うっ……っ」
ジッとバレンダに見つめられ、圧を掛けらるグレイズ。
隊長が自分に何を言いたいのかを察し、苦々しい表情を浮かべながらも移動。
ティールの前まで向かい、軽く頭を下げた。
「参りました、俺の負けです」
「うん……分かりました」
審判であるバレンダが妥当な判断を下してくれ、渋々といった表情ではあるが、グレイズ本人も自身の負けを認めた。
であれば、ティールとしても言うことはない。
「ティール君、今日はこちらの私情に付き合ってくれてありがとう」
「いえ。ちゃんと報酬は頂きましたので」
「ふふ、そうか……もし、ファルティナの大秘境で何か解らないことがあれば、空いている時間があれば相談に乗るから、いつでも声を掛けてね」
「覚えておきます」
こうしてティールは楽な仕事で白金貨一枚を手に入れ、二人と共に調査隊の屋敷から出て行った。
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