あっさりと初恋が破れた俺、神からのギフトで倒して殺して奪う

Gai

文字の大きさ
803 / 833

絶対条件

しおりを挟む
(やはり、こうでなくてはなっっっ!!!!!!!)

ジャイアントオーガの右拳に対し、自身も同じく右拳を突き出すラスト。

空間に両者の拳がぶつかり合う衝撃音が鳴り響く。
両者の拳が鈍く軋むも……互いに、その軋みを気にしている暇はない。

次に繰り出すは、鋭い蹴り。
ジャイアントオーガにとっては下段の蹴りとなるが、鋭い一撃であるのは変わりない。

対して……ラストも蹴りで対抗。

「「っ!!!!!!!」」

結果は相打ちとなるが、体格の小さいラストの方が大きく弾かれた。

(ふふっ、ふっふっふ!!!!!)

それでも尚、彼の顔からは笑みが零れ続ける。
力と力を真正面からぶつけ合うことが出来る。

ラストにとって、これ以上のない……最高に闘争心が燃え上がる戦い。

(いつまでも、こうして、いたい、ものだが!!!! ふふ、そうも、いかない、なッ!!!!)

「ッ!?」

両拳を重ね合わせた鉄鎚に対し、アッパーで対抗するラスト。
結果は……相打ち、ではなくラストのアッパーがジャイアントオーガの鉄鎚を弾き返した。
押し勝った要因は、ラストが瞬間的に拳に竜化を使用したからであった。

ラストは……一人で探索している訳ではない。
リーダーであるティール、仲間であるアキラと共にこのダンジョンを探索している。

目的は、ダンジョンの最下層のボス部屋に眠るダンジョンコア。

サントレアル王国という別国の騎士たちがダンジョンの存在を把握しているからこそ、なるべく早めに手に入れなければならない。
そのため、延々と遊んでいられる訳ではないため、切りの良いタイミングで終わらせなければならない。

ジャイアントオーガとの戦闘が始まり、既に数分が経過。
名残惜しさはあれど、それなりに楽しんだのは間違いなく、ラストは攻撃をぶつかけ合うという戦闘スタイルは変わりないが、それでも勝利へと確実に駒を進めていく。

「ぬっ? 何を…………ほほぅ。そういう事も出来るのか」

後方へ跳んで距離を取ったジャイアントオーガ。
恐怖で本能的に距離を取ったのではなく、地面に手をめり込ませると……なんと、地中から一つの大剣を引き抜いた。

「っ、っ、グォォオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!」

「はっはっは!!!! では、今度は自慢の刃をぶつけ合おうか!!!!!!!」

拳や脚をぶつけ合えるだけではなく、最後の最後には自身が扱う中でも一番の得物……大剣をぶつけ合えるとなれば、これ以上の戦いはない!!! という気持ちが湧き上がる。

終わらせようとしていた気持ちに再度油が注がれた結果、最終的にジャイアントオーガを討伐したのはもう数分後となった。





「すまない、マスター」

「ん? どうしたんだよ急に」

戦いが終わった後、ラストは直ぐにティールへ謝罪の言葉を伝えた。

「本当は素手で戦っている間に終わらせるつもりだったが、その後も戦い続けてしまった」

たかが数分……されど数分、となるかもしれない。

しかし、ティールは笑って言葉を返す。

「ふっふっふ。別にそこまで気にしなくて良いよ。本当にさっさと終わらせようとしてるなら、今回みたいにわざと転移トラップを踏んでこういった場所にこないしね」

「む……それはそうかもしれないが」

「想定より増えたと言っても数分程度だよ。それに、ちゃんと生きて帰ってきてくれた。早く倒すことも重要ではあるけど、ちゃんと帰ってくる方が重要だよ」

「……そうか」

ティールとて、ラストが勝つとは思っていたものの、相手はBランクのモンスター。
決して油断出来ない強敵。

だからこそ、ラストが生きて帰って来てくれた事が素直に嬉しい。
一人で戦おうとするのであれば、それが絶対条件である。

「さて……どうやら、まだまだ続きそうだね」

地面に魔法陣が浮かび上がらず、宝箱が出て……扉が開く。
まだ先が長いことの証明。

三人はそれぞれ笑みを浮かべ、次の部屋へと向かった。
しおりを挟む
感想 123

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

〈完結〉貴女を母親に持ったことは私の最大の不幸でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」ミュゼットは初潮が来た時に母から「唯一のこの家の女は自分」という理由で使用人の地位に落とされる。 そこで異母姉(と思っていた)アリサや他の使用人達から仕事を学びつつ、母への復讐を心に秘めることとなる。 二年後にアリサの乳母マルティーヌのもとに逃がされた彼女は、父の正体を知りたいアリサに応える形であちこち飛び回り、情報を渡していく。 やがて本当の父親もわかり、暖かい家庭を手に入れることもできる見込みも立つ。 そんな彼女にとっての母の最期は。 「この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。」のミュゼットのスピンオフ。 番外編にするとまた本編より長くなったりややこしくなりそうなんでもう分けることに。

ありふれた聖女のざまぁ

雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。 異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが… 「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」 「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」 ※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

前世は厳しい家族とお茶を極めたから、今世は優しい家族とお茶魔法極めます

初昔 茶ノ介
ファンタジー
 代々続くお茶の名家、香坂家。そこに生まれ、小さな時から名家にふさわしくなるように厳しく指導を受けてきた香坂千景。  常にお茶のことを優先し、名家に恥じぬ実力を身につけた彼女は齢六十で人間国宝とまで言われる茶人となった。  しかし、身体は病魔に侵され、家族もおらず、また家の定める人にしか茶を入れてはならない生活に嫌気がさしていた。  そして、ある要人を持て成す席で、病状が悪化し命を落としてしまう。  そのまま消えるのかと思った千景は、目が覚めた時、自分の小さくなった手や見たことのない部屋、見たことのない人たちに囲まれて驚きを隠せなかった。  そこで周りの人達から公爵家の次女リーリフィアと呼ばれて……。  これは、前世で名家として厳しく指導を受けお茶を極めた千景が、異世界で公爵家次女リーリフィアとしてお茶魔法を極め優しい家族と幸せになるお話……。   ーーーーーーーー  のんびりと書いていきます。  よかったら楽しんでいただけると嬉しいです。

処理中です...