転移したらダンジョンの下層だった

四十話人を殺る覚悟

(買った奴隷の過去の人間関係か・・・・・・お金に関しては多分大丈夫だとは思うけど、確かに人間関係についてはめんどくさそうだな。俺が出来る解決する方法って言ったら、力技しかないからな。でも、そういったデメリットがあっても、やっぱり奴隷は欲しいかな。・・・・・・犯罪奴隷は勘弁だけどな)

マーサとニーナか奴隷のデメリットについて聞いたソウスケだが、それでも奴隷が欲しいという気持ちは変わらなかった。

「そう言えば、ソウスケ君はダンジョンに行ったことはあるかい？　僕が持っているこのマジックアイテムの武器も、ダンジョンで見つけたんだよ」

ライガンの言葉にソウスケは、うっかりありますよと言いかけたが、寸でのとこで喉から言葉が出るのを防いだ。

(あぶないあぶない。セーレさんにはダンジョンで魔物を倒したことは話したけど、目立ちたくはないから冒険者の人には言わないようにしてるんだった。まだ冒険者になって数日の奴が、いくら少し強いからってダンジョンに潜ったことがあるのは流石に可笑しいからな。にしても、マジックアイテムの武器か・・・・・・そういえば、俺も持ってたな。とんでもないマジックアイテムの武器)

ソウスケは、武器のランクの上限がいくつまであるのかは知らないが、九という数字が武器の性能をとんでもない
という事を示しているというのは、本能的に分かった。

(まさかあんな武器が手に入るなんて全く思ってなかったな。もしかしたら、神様が気も利かせてくれたのかもしれないな。まぁ、蛇腹剣に加えて二つの切り札があるんだから、嬉しい事には変わりないんだけどな)

地球にいた時にたくさんの漫画やラノベを読んでいたソウスケは、切り札があるに越した事は無いと良くわかっていたので、嬉しいと言えば嬉しかった。

「いや、僕はまだダンジョンにはいいた事は無いんですけど、どんな所なんですか？」

「そうだね・・・・・・一攫千金なところもあって、夢はあるね。でも地上より危険が多いね」

ライガンの顔には少し恐怖の色が浮かんでいた。
続いて話したガインの顔も、優れたものではなかった。

「確かに夢はある。ライガンが持っているマジックアイテムの武器や、宝石だって宝箱から手に入るからな。実の入りも地上よりは上手くいけば良いだろうな。けどな、ダンジョンの中の敵はモンスターだけじゃないんだ」

ガインの敵はモンスターだけではないと言う言葉に、ソウスケは言いたいことが何となく分かった。

「冒険者の命を狙てくる罠。そんで一番厄介なのは同業者、俺達と同じ冒険者だ。別に俺達が直接襲われた訳じゃないんだが、行ったダンジョンがある街の冒険者に聞いた話なんだけどな、聞いていてもの凄く背筋が冷たくなった。知ってるか？　ダンジョンの中で武器や服、死体になった物は一定時間経つと、ダンジョンに吸収されちまうんだ。つまりだ、冒険者が同じ冒険者を殺しても証拠が全く残らないんだよ」

ソウスケのいたダンジョンは、誰もいなかった野良のダンジョンのため、ソウスケは誰ともダンジョンの中で会う事は無かった。
だが、ガインの話を聞いてもしダンジョンの中で、そういった事を行っている冒険者と会った時の事を考えると、背中から冷汗が流れ出してきた。

（ガインさんの話を直訳すれば、ダンジョンの中では冒険者を殺す冒険者がいるってことだよな。・・・・・・今の俺に人を殺せるか？　人型のモンスターを殺すのはもう慣れた。匂いはまだ慣れないけどな。でも人は違うはずだ。出来るのか？　人を殺すことが。いや、こんな世界に来たんだ。いずれ人を殺さなきゃいけない時が来ることぐらい分かってたはずだ。逃げられない事なんだ。・・・・・・もし、その時は覚悟を決めとかなきゃな。殺すのは多分悪人、殺さないと寧ろ自分が殺られる。だから殺られるまえに殺るんだ。殺す相手は、殺さなきゃいけない相手だ。殺さなきゃ他の誰かが被害に遭うんだ。躊躇わず・・・・・・殺すんだ）

ソウスケは、人を殺した時に罪悪感に潰されないように、自分に襲い掛かってくる、誰かを不幸に、傷つける人間を殺すことに正当な理由を何回も心の中で呟いた。

下に俯き顔色を悪くしていたソウスケを見たマーサは、心配そうに声を掛けた。

「大丈夫、ソウスケ。顔色が悪いし、怖い顔になってるわよ」

「あ、だっ、大丈夫です。少し・・・・・・先の事を考えただけです」

ソウスケの一言に、四人は何となくだがソウスケがまだ人を殺した事がないのを察した。

（そうか・・・・・・まだ、冒険者になって一週間も経っていないんだったね。自分の中で勝手に、もう人を殺したことがあるのかと思ってたんだけど、そうじゃなかったんだな。重くて暗い話をし過ぎたね）

表情が暗くなっているソウスケを見たライガンは、話題を明るい話に変え様とした。