転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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五百七十四話 焦って大技はアウト

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「これで三度目の戦いですね」

ようやくミレアナの番になり、待ち時間の間に造り続けたポーションをしまって、いざボス戦に挑む。
とはいえ、その足取りはとても軽い。

複数のトレントとエルダートレントは決して侮っていい相手ではない。
それはミレアナも解っているが、自分が負けるイメージがまるで浮かばない。

「……ふむ、ダンジョンイレギュラーが起きた様子はありませんね」

ミレアナがボス部屋の中に入ると、早速トレントたちが攻撃を仕掛けてきた。

無限に伸びる枝による攻撃を躱しながら、冷静に相手の状態を見極める。
先の二回と同じくボスのモンスターが同じであれば、特に慌てることなく対処出来る。

ただ、仮にボス部屋でダンジョンイレギュラーが起きた際には思考を切り替え、全力でボスのモンスターたちを潰さなければならない。

(トレントもエルダートレントも通常通り……それでは、まずトレントから潰していきましょう)

身体強化のスキルを使用し、迫る枝や木の槍を躱しながら接近。
魔石の位置を完全に把握してから貫手をぶち込む。

そして慣れた手つきで魔石を掴み、引っこ抜く。
トレントの体にある魔石は一体一体場所が違うので、冷静に確認してから奪わなければならない。

(倒したら直ぐに回収しなければなりませんね)

トレントを倒し終えたら魔石だけではなく、良質な木となったトレントも回収しなければならない。
回収を後回しにしておくと、エルダートレントが緊急時に養分を吸い取ってしまう。

そうなれば、良質なトレントの木が枯れて使い物にならなくなる。

(前回は周囲の木々を吸収していましたか、まさか戦いが終わる度に木々は復元しているのでしょうか? 普通ならあり得ないと思ってしまいますが……ダンジョンの中ですからね。戦いが終われば復元するのも当然かもしれませんね)

ダンジョンの壁を壊しても、ある程度時間が経てば修復されてしまう。
なので、戦いが終わればボス部屋の中は全て元通り。
そんなあり得ない内容をミレアナは当然なのだろうと受け入れた。

(エルダートレントからの攻撃も増えてきましたが、これぐらいなら問題ありませんね)

木と風魔法による連撃が止まらない。
あと少しでトレントは全滅してしまうが、そもそもエルダートレントの猛撃だけでも相当厄介。

だが、ミレアナの脚があればサラッと躱して難しタイミングであれば、無詠唱で相殺。
エルダートレントとも周囲の木々から生命力を吸い取って魔力を回復しているので、傍から見れば泥沼試合になるのは当然……そう思われるだろう。

しかし取り巻きのトレントを倒し終われば、泥沼試合も直ぐに終わる。

ボス部屋は縦も横も広いが、ミレアナが身体強化に加えて脚力強化、更に風魔法のウィンドステップを使用すればあっという間に距離を詰めてしまう。

エルダートレントも取り巻きが全滅すれば当然焦る。
焦って高威力の魔法を放とうとするが、準備の間に枝で攻撃してもミレアナには無意味。

高威力の魔法を発動する前にミレアナの魔の貫手が懐に迫り、なすすべもなく魔石が抜き取られてしまう。

(トレントは中身が木ですから、普通のモンスターと違って内臓などのヌメヌメ感がないのが良いですね)

なにはともあれ、三分程度でボス戦は終了。
これをギルドに報告すればとんでもない事になるが、生憎とこの件を冒険者ギルドに報告するつもりは一切無い。

宝箱も無事ゲットし、魔法陣に乗って地上へと帰った。

「もう夜ですか……ですが、まだお店は空いてそうですね」

偶には一人でお店に入り、夕食を食べるのも悪くない。
そう思ったミレアナはそれなりに美味しそうな料理が出てきそうなレストランを探した。

「ここにしてみましょう」

ミレアナが選んだ店は最低でもDランク以上の冒険者しか入れない様な店だが、ソウスケから個人の働きとして大金を貰っているミレアナは躊躇なく中へと入った。
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