転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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七百六十三話 回収終了

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「…………」

ミスリルゴーレムは一般的なモンスターと比べて多くの魔力量を持っている為、ソウスケが何度腕や足を切断しても再生できる。

一瞬で再生することは不可能なので、その間に倒すという手段があるが、ソウスケは治療中のミスリルゴーレムを襲うことはない。

完全に再生を終えたミスリルゴーレムは再びソウスケに襲い掛かり、十秒ほど戦った後……再び腕か脚を切断される。
そしてソウスケは切断した部分を即回収し、距離を取る。

再びミスリルゴーレムが完全再生するまで待ち、同じことが繰り返される。
既に十度ほど繰り返される光景。

普通のモンスターなら……そろそろ異変に気付いてもおかしくない。
何故敵は自分が再生するのを待つのか。
そして切断した部分を回収するのか……何故、殺せるチャンスが何度もあるにも関わらず、自分を襲って来ないのか。

第一に、ソウスケが狩猟本能全開の笑みを浮かべた段階で、異変に気付いたかもしれない。

しかし、ミスリルゴーレムの仕事は部屋に侵入してきた相手を潰すこと。
侵入者が目の前にいる限り、相手を倒そうと動き続ける。

(同じモンスターとして、少しだけ同情するな)

後方で戦いを眺めているザハークは、ミスリルが大量にあれば、今後の鍛冶活動が楽しくなるのは理解している。
ミスリル鉱石の貴重性も理解している為、ソウスケの行動におかしな部分があるとも思わない。

ただ……それでも、ほんの少しだけ可哀そうと思ってしまう。

その後もソウスケの斬っては回収しての繰り返しは続き、ようやくミスリルゴーレムの魔力が尽きた。

「よし」

もう用がなくなったので、ソウスケはフルスロットルで倒しにかかる。

蛇腹剣の身体強化も使用し、ミスリルゴーレムが殆ど反応出来ない速度で動き、四肢を切断。
強化系のスキルを使えない状態となれば、水龍の蒼剣に魔力を纏わずとも両断が可能。

(凄い物、なんだろうな)

ソウスケはミスリルゴーレムが、ただ学習能力が高い個体……ではない事に気付き、動けなくなったミスリルゴーレムに刺突を放つ。

すると、魔石……に似た何かを破壊。
次に残った体を適当に切断し、魔石を傷付けずに回収することに成功した。

「お疲れ様です、ソウスケさん」

「おぅ。まっ……そうだな。意外とって言うのは失礼だけど、強い相手だったよ」

楽々といった表情でミスリルゴーレムの体を切断している様に見えたソウスケだが、蛇腹剣の身体強化を使っていない状態だと……蹴りや拳打を食らえば余裕で吹っ飛ばされ、最悪骨折する可能性がある。

当たり所が悪ければ、内臓を損傷するほどの威力を持つ。

スピードもゴーレムとは思えないほど速いため、割と冷や汗が垂れる場面が多かった。
何はともあれ、再生スキル持ちだったので、大量のミスリルゴーレムをゲットすることに成功。
そしてソウスケの戦闘欲も満たされ、良いこと尽くし。

「ソウスケさん、奥が動いたぞ」

「えっ」

後方に振り向くと、先程までただの壁……だった場所が静かに動き始め、やがて……そこに、一本の槍が現れた。

「……伝説、伝承? は本当だった、ってことで良いんだよな?」

一目見ただけで、水龍の蒼剣と同じく業物と解らせるほどの輝きを見せる、地面に埋まっている槍。

(すぅーーー、はぁーーーー……よし、視よう)

神々しさを感じさせる槍に、視ることを躊躇ったが、意を決して鑑定を使用。

「……化け物、だな」

「ソウスケさん、あの槍はどれ程の物なんだ」

ザハークは最低でもランク六か七はあると考えていた。

「名前はレヴァルグ……水龍の蒼剣と同じく、ランク九の炎槍だ」

「「ッ!!??」」

ソウスケの説明を耳にし、二人の意識はレヴァルグに集中。

おそらく高ランクの武器、というのは解っていたが、その予想を上回る超業物だった。

(ところで……あれ、抜けるんだよな)

結界などがない事を確認し、ソウスケはレヴァルグに向かって歩を進めた。
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