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七百六十五話 利はないのでお断り
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ソウスケたちがミスリルゴーレムが居た部屋から出るタイミングには、他の冒険者はおらず、あっさりと同業者にバレることなく地上に進むことが出来た。
(ミレアナの言葉通り、あのダンジョンコアさえ無事なら、これからも似非ダンジョンとして機能するみたいだな)
これからも、あの部屋の奥に置かれていたダンジョンコアを抜き取るようなことをしなければ、遺跡は今まで通り機能する。
因みに、ミスリルゴーレムが居据わる部屋の前に張り付こうとする冒険者たちはいない。
何故なら……今まで多くの冒険者が破れてきたため、そもそもミスリルゴーレムに挑もうとするパーティーが現れないと解ってるから。
その為、三人はレヴァルグを狙った輩たちから奇襲を受けることもなく、無事に地上へ戻った。
相変わらずソウスケに羨ましそうな目を向ける者は多いが、誰も三人があの凶悪なミスリルゴーレムを倒したとは思っておらず、他のパーティーたちは遺跡へ挑む。
(さて、これからどうしようかな)
目的の超名槍を手に入れることは出来た。
しかし、まだ遺跡には目ぼしい獲物が残っていない訳ではない。
一先ず三人はいつも通りシラブルに戻り、酒場で夕食を食べていた。
その間、ソウスケとミレアナは遺跡についての会話は殆どせず、適当な話題について喋り続けた。
冴えている者であれば、二人の僅かな異変に気付いたかもしれない。
だが……酒場では夕食時という事もあり、殆どの者たちが飯を食らい、酒を浴びるように呑んでいた。
という訳で、誰一人として二人の異変に気付く者はいなかった。
「これからどうしようか」
「いつも通り、これから何処へ向かうか、面白そうな情報を探しますか?」
それが一番……と思わなくもないが、ソウスケはもう少しシラブルに情報収集以外の目的で滞在すると告げた。
「今ここで、直ぐに潜らなくなると、怪しまれる気がするんだよ」
「私たちが名槍を……レヴァルグを手に入れた事が、ですか?」
「そうだ」
二人の会話はミレアナの風の魔力によって防音されているので、外に漏れない。
「だって、何だかんだでここに来てから一か月も経っていないんだぜ。仮に目的を達成出来なかったとしても、諦めるには早過ぎるだろ」
「……そうかもしれませんね」
冒険者ギルドとしては、ソウスケたちなら名槍を守っている番人……と思われている、ミスリルゴーレムを倒す戦力を有していると考えている。
その為、三人が今ここであっさりと引いてしまった場合「もしや、あの三人は……」と怪しまれる可能性が高い。
「だから、もう少し探索するフリをしてから、情報を集めて次の街を目指そうと思う」
「分かりました」
これからの方針が決まり、ソウスケたちは普段通り遺跡を探索し、戻ってきたら必要ないモンスターの素材を売るという生活を続けた。
浅い階層で狩りを行うのではなく、前回通り深い階層まで探索を行い、三日から五日……あるいは一週間ほど狩りを行ってから、地上へ戻る。
以前と変わらず、素材をギルドに売った買取金額で、周囲に驚かれることはある。
だが、それでもソウスケたちが、まさか既に噂の名槍を手に入れている……そう思う者はいなかった。
「俺に依頼、ですか?」
「はい、そうです」
予定通りの生活を送っていると、冒険者ギルドから指名依頼が届いていると伝えられた。
まさか……と思いながら、ソウスケはその内容を確認。
(ちっ……面倒だな)
依頼人は、シラブルを治める領主である貴族。
つまり、あの似非ダンジョンを造った人物の子孫。
依頼内容は、ミスリルゴーレムの討伐と名槍の確保。
それらの内容を確認したソウスケは……ギリギリで表情に不快感を出さず、堪えることに成功。
「申し訳ありませんが、断らせてもらいます」
「えっ!!??」
受付嬢はソウスケが指名依頼を断ったという事実に、驚きを隠せなかった。
「その、報酬金は悪くないと思いますが」
「お金については間に合ってます」
「うっ」
ソウスケに指名依頼を伝えた受付嬢も、三人が一度の探索で大量の買取金額を受け取っていることは知っていたので、そう言われると上手く勧められない。
「俺たちも、命は惜しいんで」
全く思ってもいない言葉を伝え、ソウスケは最後の探索へ向かった。
(ミレアナの言葉通り、あのダンジョンコアさえ無事なら、これからも似非ダンジョンとして機能するみたいだな)
これからも、あの部屋の奥に置かれていたダンジョンコアを抜き取るようなことをしなければ、遺跡は今まで通り機能する。
因みに、ミスリルゴーレムが居据わる部屋の前に張り付こうとする冒険者たちはいない。
何故なら……今まで多くの冒険者が破れてきたため、そもそもミスリルゴーレムに挑もうとするパーティーが現れないと解ってるから。
その為、三人はレヴァルグを狙った輩たちから奇襲を受けることもなく、無事に地上へ戻った。
相変わらずソウスケに羨ましそうな目を向ける者は多いが、誰も三人があの凶悪なミスリルゴーレムを倒したとは思っておらず、他のパーティーたちは遺跡へ挑む。
(さて、これからどうしようかな)
目的の超名槍を手に入れることは出来た。
しかし、まだ遺跡には目ぼしい獲物が残っていない訳ではない。
一先ず三人はいつも通りシラブルに戻り、酒場で夕食を食べていた。
その間、ソウスケとミレアナは遺跡についての会話は殆どせず、適当な話題について喋り続けた。
冴えている者であれば、二人の僅かな異変に気付いたかもしれない。
だが……酒場では夕食時という事もあり、殆どの者たちが飯を食らい、酒を浴びるように呑んでいた。
という訳で、誰一人として二人の異変に気付く者はいなかった。
「これからどうしようか」
「いつも通り、これから何処へ向かうか、面白そうな情報を探しますか?」
それが一番……と思わなくもないが、ソウスケはもう少しシラブルに情報収集以外の目的で滞在すると告げた。
「今ここで、直ぐに潜らなくなると、怪しまれる気がするんだよ」
「私たちが名槍を……レヴァルグを手に入れた事が、ですか?」
「そうだ」
二人の会話はミレアナの風の魔力によって防音されているので、外に漏れない。
「だって、何だかんだでここに来てから一か月も経っていないんだぜ。仮に目的を達成出来なかったとしても、諦めるには早過ぎるだろ」
「……そうかもしれませんね」
冒険者ギルドとしては、ソウスケたちなら名槍を守っている番人……と思われている、ミスリルゴーレムを倒す戦力を有していると考えている。
その為、三人が今ここであっさりと引いてしまった場合「もしや、あの三人は……」と怪しまれる可能性が高い。
「だから、もう少し探索するフリをしてから、情報を集めて次の街を目指そうと思う」
「分かりました」
これからの方針が決まり、ソウスケたちは普段通り遺跡を探索し、戻ってきたら必要ないモンスターの素材を売るという生活を続けた。
浅い階層で狩りを行うのではなく、前回通り深い階層まで探索を行い、三日から五日……あるいは一週間ほど狩りを行ってから、地上へ戻る。
以前と変わらず、素材をギルドに売った買取金額で、周囲に驚かれることはある。
だが、それでもソウスケたちが、まさか既に噂の名槍を手に入れている……そう思う者はいなかった。
「俺に依頼、ですか?」
「はい、そうです」
予定通りの生活を送っていると、冒険者ギルドから指名依頼が届いていると伝えられた。
まさか……と思いながら、ソウスケはその内容を確認。
(ちっ……面倒だな)
依頼人は、シラブルを治める領主である貴族。
つまり、あの似非ダンジョンを造った人物の子孫。
依頼内容は、ミスリルゴーレムの討伐と名槍の確保。
それらの内容を確認したソウスケは……ギリギリで表情に不快感を出さず、堪えることに成功。
「申し訳ありませんが、断らせてもらいます」
「えっ!!??」
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