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八百六十七話 痛みより焦り
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「どうも」
「ソウスケさん、ミレアナさん、ザハークさん、いらっしゃいませ」
受付場所には轟炎流の中でも上位の実力を有するタリア……ではない女性の使い手が受付として待機していた。
とはいえ、三人もその女性とは面識があり、今回の事情は知っている。
「後ろの方々が今回、その……指導? をなさる方々でしょうか」
「一応そんなところです」
「そうでしたか。少々お待ちください。今すぐ師範に伝えてきます、の、で……」
受付の女性はそう言いながら……一人の女性に目が止まった。
ソウスケから手紙で、第三騎士団からダンジョンでの指導訓練を頼まれたため、そちらへ向かうと知らされていた。
その中にはお忍びでお姫様もおり、他言無用でよろしくお願いしますとも書かれていた。
受付の女性はタリア程の使い手ではないが、そこら辺の男よりはよっぽど強い。
そのため……ソウスケたちの中で、明らかに一人だけ異質な人物に気が付いた。
「…………はっ!? も、申し訳ありません!!! 直ぐに伝えてきます!!!!!」
「あ、はい。よろしくお願いします」
視界から消えた瞬間、物凄い音がソウスケたちの耳に入るが、直ぐに足音が聞こえ、走り去っていった。
「あの、彼女は……大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だと思いますよ。痛みよりも焦りが勝ってるでしょうから」
「???」
それなりにバッチリ変装はしてるため、アネットは自分が王女だとバレていないと思っているが、実際のところ……変装は出来ていても、高貴な雰囲気は隠せていなかった。
その高貴さはアマンダたちにもあるにはあるのだが、その中でもアネットは当然ながら群を抜いている。
受付の女性は師範であるレガースから内容を知らされている為、消去法的に彼女がアネットだと気付いてしまい、盛大に焦りながら走ってズッコケた。
「や、やぁソウスケ君。この前ぶりだね」
受付の女性から報告を受けたレガースはアネットたちに失礼の内容に……しかし待たせてしまわない様に速足で玄関まで来た。
「それで、アネット様と第三騎士団の方々でよろしかったでしょうか」
「はい、そうです。ソウスケさんに無理を言って付いて来させてもらいました」
「な、なるほど。そうでしたか。その……な、何も無いところではありますが、ごゆっくりして頂けると幸いです」
一先ず轟炎流という剣術道場であるため、アネットたちを門下生たちが訓練を行っている場所へと案内をする。
「そ、ソウスケ君。道場にはき、君たちだけで来るんじゃなかったのかい?」
当たり前だが、レガースが王女を相手に緊張しない訳がない。
確かにレガースは今回の戦争の最終三決戦のうちの二回戦に出て、勝利を上げた。
実質的なエイリスト王国の勝利はそこで決まったため、レガースの勝利が最後の決め手となったと言っても過言ではない。
騎士や高ランクの冒険者たちもその瞬殺劇を目にしており、あれはあれで痺れる決闘だったと語る者も多い。
そしてレガースは戦争で大活躍した人物という事で、国王陛下から褒美を受け取った人物でもある。
報酬を受け取った後のパーティーに参加した際も、多くの貴族や騎士たちに顔を覚えてもらい、轟炎流の名を広めることに一役買った。
とはいえ……実際に大きな権力を手に入れた訳ではなく、王女という本人にその気がなくても大きな権力を持つ者が来訪したとなれば、それはも生まれたての小鹿の様に震える。
「その、直前になって自分も付いて行きたいと言われまして……そう言われたら、断れないじゃないですか」
「いや、まぁ…………うん、そうだな」
レガースがソウスケの立場だったとしても絶対に断れない。
事情を理解してるからこそ、それ以上あれこれ文句を言うことは出来なかった。
「ソウスケさん、ミレアナさん、ザハークさん、いらっしゃいませ」
受付場所には轟炎流の中でも上位の実力を有するタリア……ではない女性の使い手が受付として待機していた。
とはいえ、三人もその女性とは面識があり、今回の事情は知っている。
「後ろの方々が今回、その……指導? をなさる方々でしょうか」
「一応そんなところです」
「そうでしたか。少々お待ちください。今すぐ師範に伝えてきます、の、で……」
受付の女性はそう言いながら……一人の女性に目が止まった。
ソウスケから手紙で、第三騎士団からダンジョンでの指導訓練を頼まれたため、そちらへ向かうと知らされていた。
その中にはお忍びでお姫様もおり、他言無用でよろしくお願いしますとも書かれていた。
受付の女性はタリア程の使い手ではないが、そこら辺の男よりはよっぽど強い。
そのため……ソウスケたちの中で、明らかに一人だけ異質な人物に気が付いた。
「…………はっ!? も、申し訳ありません!!! 直ぐに伝えてきます!!!!!」
「あ、はい。よろしくお願いします」
視界から消えた瞬間、物凄い音がソウスケたちの耳に入るが、直ぐに足音が聞こえ、走り去っていった。
「あの、彼女は……大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だと思いますよ。痛みよりも焦りが勝ってるでしょうから」
「???」
それなりにバッチリ変装はしてるため、アネットは自分が王女だとバレていないと思っているが、実際のところ……変装は出来ていても、高貴な雰囲気は隠せていなかった。
その高貴さはアマンダたちにもあるにはあるのだが、その中でもアネットは当然ながら群を抜いている。
受付の女性は師範であるレガースから内容を知らされている為、消去法的に彼女がアネットだと気付いてしまい、盛大に焦りながら走ってズッコケた。
「や、やぁソウスケ君。この前ぶりだね」
受付の女性から報告を受けたレガースはアネットたちに失礼の内容に……しかし待たせてしまわない様に速足で玄関まで来た。
「それで、アネット様と第三騎士団の方々でよろしかったでしょうか」
「はい、そうです。ソウスケさんに無理を言って付いて来させてもらいました」
「な、なるほど。そうでしたか。その……な、何も無いところではありますが、ごゆっくりして頂けると幸いです」
一先ず轟炎流という剣術道場であるため、アネットたちを門下生たちが訓練を行っている場所へと案内をする。
「そ、ソウスケ君。道場にはき、君たちだけで来るんじゃなかったのかい?」
当たり前だが、レガースが王女を相手に緊張しない訳がない。
確かにレガースは今回の戦争の最終三決戦のうちの二回戦に出て、勝利を上げた。
実質的なエイリスト王国の勝利はそこで決まったため、レガースの勝利が最後の決め手となったと言っても過言ではない。
騎士や高ランクの冒険者たちもその瞬殺劇を目にしており、あれはあれで痺れる決闘だったと語る者も多い。
そしてレガースは戦争で大活躍した人物という事で、国王陛下から褒美を受け取った人物でもある。
報酬を受け取った後のパーティーに参加した際も、多くの貴族や騎士たちに顔を覚えてもらい、轟炎流の名を広めることに一役買った。
とはいえ……実際に大きな権力を手に入れた訳ではなく、王女という本人にその気がなくても大きな権力を持つ者が来訪したとなれば、それはも生まれたての小鹿の様に震える。
「その、直前になって自分も付いて行きたいと言われまして……そう言われたら、断れないじゃないですか」
「いや、まぁ…………うん、そうだな」
レガースがソウスケの立場だったとしても絶対に断れない。
事情を理解してるからこそ、それ以上あれこれ文句を言うことは出来なかった。
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