転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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八百七十六話 絶対やりたくない

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「……ソウスケさん、あまり難しく考え過ぎなんじゃないか?」

「ん、何がだ?」

「王女様が戦闘大好き王族になったとしても、それでソウスケさんがどうこう言われることはないだろ」

「何言ってんだ、ザハーク。貴族の理不尽な面倒さはお前も知ってるだろ」

「……忘れてはいないが、それでもソウスケさんはただ王女様に戦っても良いと許可を出しただけじゃないか」

ザハークから見て、ソウスケは特に悪い事をしてるようには思えない。
だからこそ、主人が何故そこまでびくついてるのか解らない。

「そうだな。確かにそうだよ。ぶっちゃけ、ボス部屋のロックゴーレム戦も、数人の女性騎士に参加してもらったから、特に危険な戦いではなかった。アネット様が怪我を負う可能性は殆どなかった」

「俺の目から見ても、余裕の勝利だったな」

「そうだな……でもな、権力を持って……自分の方が絶対に偉いと思ってる人間ほど面倒な奴はいないんだよ。ザハーク……俺の性格、解ってるだろ」

貴族や王族の性格、ではなく俺の性格と口にした。

何故俺の性格なのか……数秒ほど考え考えた結果、解ってしまった。

「あぁ、なるほど。そういう事だったのか……ふふ、俺としては望むところといったところだがな」

「アホ言うな。王族と喧嘩になったら、この国の貴族全員を敵に回すことになるだろ!」

「全員とはならないだろ。それに、あの国王は……直感だが、ソウスケさんのヤバさが解らない程愚かではないと思うぞ」

国王陛下からは歴戦の戦士といった雰囲気はなかったが、それでも纏う空気に危うさを感じることはなかった。

「別に国王が動かなかったからと言って、他が動かないとは限らないだろ」

「……しかし、強硬手段を取ってくるのであれば、こちらも強硬手段に出るまでなのだろ」

「当たり前だろ。対抗できる力があるってのに、わざわざヘコヘコ頭を下げて従ってたまるかって話だろ」

矛盾してる様に思えなくもないが、ザハークは主人のやる時はやるといった考えが好きだった。

「俺たち三人なら国が相手でもなんとかなるだろ」

「簡単に言ってくれるな。まぁ……やれない事もない、か?」

先日の戦争……分身して己の力を分け、激戦を潜り抜けてきた。
その体験は、確実にソウスケを一回り強くした。

加えて、ソウスケが持つ武器には必殺になりうる武器が多い。
それはザハークとミレアナも同じであり……この三人の場合、たった三人と言えないのだ。

「そうだろそうだろ。だからそんなに心配する必要はないと思うぞ」

「ったく……ありがとな。ちょっと気が軽くなったよ。けどよ……仮に、仮にだぞ。本当にそうなった場合、俺たちが勝ったら……無茶苦茶面倒なことにならないか?」

「…………ソウスケさんが新しい国王になるのか?」

「なってたまるか。絶対に嫌だよ。俺は今まで通り冒険者ライフを楽しみたいんだから」

爵位や領地も要らない。
まだまだ冒険してない場所、国がある。

それらを死ぬまでに冒険したい。
国王や領主になんて、死んでもなりたくない。

「ソウスケさんらしい答えだな。まぁ……バカが一人か二人動けば、ソウスケさんのことを信じている者たちが動く筈だ」

「俺を信じてる者たち、か?」

「そうだ。俺は……そういうのが苦手だが、ソウスケさんは多くの者たちに手を差し伸べてきただろ」

「……確かに、戦争前に何度も武器造りは頼まれたな」

戦争が終わった後、ソウスケの元にはその武器を持って暴れ回り、戦果を上げた者たちから多くの手紙が届き……どの手紙にも感謝の言葉が綴られていた。

「気付いてないだけで、ソウスケさんは多くの縁というものと結ばれている……と思うぞ」

普段はこんな事を言うようなタイプではないザハーク。

それでも……主人を気遣う優しさから、珍しく考えに考え抜いた言葉でソウスケにそこまで悩む必要はないと、周りが敵だらけではないのだと伝えた。
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