906 / 1,259
八百七十六話 絶対やりたくない
しおりを挟む
「……ソウスケさん、あまり難しく考え過ぎなんじゃないか?」
「ん、何がだ?」
「王女様が戦闘大好き王族になったとしても、それでソウスケさんがどうこう言われることはないだろ」
「何言ってんだ、ザハーク。貴族の理不尽な面倒さはお前も知ってるだろ」
「……忘れてはいないが、それでもソウスケさんはただ王女様に戦っても良いと許可を出しただけじゃないか」
ザハークから見て、ソウスケは特に悪い事をしてるようには思えない。
だからこそ、主人が何故そこまでびくついてるのか解らない。
「そうだな。確かにそうだよ。ぶっちゃけ、ボス部屋のロックゴーレム戦も、数人の女性騎士に参加してもらったから、特に危険な戦いではなかった。アネット様が怪我を負う可能性は殆どなかった」
「俺の目から見ても、余裕の勝利だったな」
「そうだな……でもな、権力を持って……自分の方が絶対に偉いと思ってる人間ほど面倒な奴はいないんだよ。ザハーク……俺の性格、解ってるだろ」
貴族や王族の性格、ではなく俺の性格と口にした。
何故俺の性格なのか……数秒ほど考え考えた結果、解ってしまった。
「あぁ、なるほど。そういう事だったのか……ふふ、俺としては望むところといったところだがな」
「アホ言うな。王族と喧嘩になったら、この国の貴族全員を敵に回すことになるだろ!」
「全員とはならないだろ。それに、あの国王は……直感だが、ソウスケさんのヤバさが解らない程愚かではないと思うぞ」
国王陛下からは歴戦の戦士といった雰囲気はなかったが、それでも纏う空気に危うさを感じることはなかった。
「別に国王が動かなかったからと言って、他が動かないとは限らないだろ」
「……しかし、強硬手段を取ってくるのであれば、こちらも強硬手段に出るまでなのだろ」
「当たり前だろ。対抗できる力があるってのに、わざわざヘコヘコ頭を下げて従ってたまるかって話だろ」
矛盾してる様に思えなくもないが、ザハークは主人のやる時はやるといった考えが好きだった。
「俺たち三人なら国が相手でもなんとかなるだろ」
「簡単に言ってくれるな。まぁ……やれない事もない、か?」
先日の戦争……分身して己の力を分け、激戦を潜り抜けてきた。
その体験は、確実にソウスケを一回り強くした。
加えて、ソウスケが持つ武器には必殺になりうる武器が多い。
それはザハークとミレアナも同じであり……この三人の場合、たった三人と言えないのだ。
「そうだろそうだろ。だからそんなに心配する必要はないと思うぞ」
「ったく……ありがとな。ちょっと気が軽くなったよ。けどよ……仮に、仮にだぞ。本当にそうなった場合、俺たちが勝ったら……無茶苦茶面倒なことにならないか?」
「…………ソウスケさんが新しい国王になるのか?」
「なってたまるか。絶対に嫌だよ。俺は今まで通り冒険者ライフを楽しみたいんだから」
爵位や領地も要らない。
まだまだ冒険してない場所、国がある。
それらを死ぬまでに冒険したい。
国王や領主になんて、死んでもなりたくない。
「ソウスケさんらしい答えだな。まぁ……バカが一人か二人動けば、ソウスケさんのことを信じている者たちが動く筈だ」
「俺を信じてる者たち、か?」
「そうだ。俺は……そういうのが苦手だが、ソウスケさんは多くの者たちに手を差し伸べてきただろ」
「……確かに、戦争前に何度も武器造りは頼まれたな」
戦争が終わった後、ソウスケの元にはその武器を持って暴れ回り、戦果を上げた者たちから多くの手紙が届き……どの手紙にも感謝の言葉が綴られていた。
「気付いてないだけで、ソウスケさんは多くの縁というものと結ばれている……と思うぞ」
普段はこんな事を言うようなタイプではないザハーク。
それでも……主人を気遣う優しさから、珍しく考えに考え抜いた言葉でソウスケにそこまで悩む必要はないと、周りが敵だらけではないのだと伝えた。
「ん、何がだ?」
「王女様が戦闘大好き王族になったとしても、それでソウスケさんがどうこう言われることはないだろ」
「何言ってんだ、ザハーク。貴族の理不尽な面倒さはお前も知ってるだろ」
「……忘れてはいないが、それでもソウスケさんはただ王女様に戦っても良いと許可を出しただけじゃないか」
ザハークから見て、ソウスケは特に悪い事をしてるようには思えない。
だからこそ、主人が何故そこまでびくついてるのか解らない。
「そうだな。確かにそうだよ。ぶっちゃけ、ボス部屋のロックゴーレム戦も、数人の女性騎士に参加してもらったから、特に危険な戦いではなかった。アネット様が怪我を負う可能性は殆どなかった」
「俺の目から見ても、余裕の勝利だったな」
「そうだな……でもな、権力を持って……自分の方が絶対に偉いと思ってる人間ほど面倒な奴はいないんだよ。ザハーク……俺の性格、解ってるだろ」
貴族や王族の性格、ではなく俺の性格と口にした。
何故俺の性格なのか……数秒ほど考え考えた結果、解ってしまった。
「あぁ、なるほど。そういう事だったのか……ふふ、俺としては望むところといったところだがな」
「アホ言うな。王族と喧嘩になったら、この国の貴族全員を敵に回すことになるだろ!」
「全員とはならないだろ。それに、あの国王は……直感だが、ソウスケさんのヤバさが解らない程愚かではないと思うぞ」
国王陛下からは歴戦の戦士といった雰囲気はなかったが、それでも纏う空気に危うさを感じることはなかった。
「別に国王が動かなかったからと言って、他が動かないとは限らないだろ」
「……しかし、強硬手段を取ってくるのであれば、こちらも強硬手段に出るまでなのだろ」
「当たり前だろ。対抗できる力があるってのに、わざわざヘコヘコ頭を下げて従ってたまるかって話だろ」
矛盾してる様に思えなくもないが、ザハークは主人のやる時はやるといった考えが好きだった。
「俺たち三人なら国が相手でもなんとかなるだろ」
「簡単に言ってくれるな。まぁ……やれない事もない、か?」
先日の戦争……分身して己の力を分け、激戦を潜り抜けてきた。
その体験は、確実にソウスケを一回り強くした。
加えて、ソウスケが持つ武器には必殺になりうる武器が多い。
それはザハークとミレアナも同じであり……この三人の場合、たった三人と言えないのだ。
「そうだろそうだろ。だからそんなに心配する必要はないと思うぞ」
「ったく……ありがとな。ちょっと気が軽くなったよ。けどよ……仮に、仮にだぞ。本当にそうなった場合、俺たちが勝ったら……無茶苦茶面倒なことにならないか?」
「…………ソウスケさんが新しい国王になるのか?」
「なってたまるか。絶対に嫌だよ。俺は今まで通り冒険者ライフを楽しみたいんだから」
爵位や領地も要らない。
まだまだ冒険してない場所、国がある。
それらを死ぬまでに冒険したい。
国王や領主になんて、死んでもなりたくない。
「ソウスケさんらしい答えだな。まぁ……バカが一人か二人動けば、ソウスケさんのことを信じている者たちが動く筈だ」
「俺を信じてる者たち、か?」
「そうだ。俺は……そういうのが苦手だが、ソウスケさんは多くの者たちに手を差し伸べてきただろ」
「……確かに、戦争前に何度も武器造りは頼まれたな」
戦争が終わった後、ソウスケの元にはその武器を持って暴れ回り、戦果を上げた者たちから多くの手紙が届き……どの手紙にも感謝の言葉が綴られていた。
「気付いてないだけで、ソウスケさんは多くの縁というものと結ばれている……と思うぞ」
普段はこんな事を言うようなタイプではないザハーク。
それでも……主人を気遣う優しさから、珍しく考えに考え抜いた言葉でソウスケにそこまで悩む必要はないと、周りが敵だらけではないのだと伝えた。
124
あなたにおすすめの小説
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
虹色のプレゼントボックス
紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。
安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。
わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。
余計わけのわからない人物に進化します。
作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。
本当に尋常じゃないほど早いです。
残念ながらハーレムは無いです。
全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。
未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。
行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。
なかなかに最悪な気分になりました。
お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。
というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。
お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。
【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ
一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。
百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。
平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。
そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。
『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました
KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」
勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、
ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。
追放すらできない規約のせいで、
“事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。
だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。
《超記録》――
敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。
生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。
努力で《成長》スキルを獲得し、
記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。
やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。
対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、
記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。
一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。
さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。
街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。
優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。
捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。
爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる