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千五十話 苦手ではないが
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「ソウスケ殿は、教育者としての経験がかなり豊富、なのですか?」
ある日の休憩時、護衛の騎士からそんな質問を投げかけられたソウスケ。
「豊富……と言えるほどの経験はないと思いますよ。冒険者として何度かそういった依頼を頼まれたことはありますけど、基本的に模擬戦の相手? として期待されてた感じなので」
模擬戦の相手として期待する。
それは狩りに同行したり、庭での訓練を眺め始めてから、それを期待して依頼した人物たちの気持ちが心底解る。
歳は二十を越えていない筈なのに、剣術だけではなく体術や槍術、短剣術などまで並のレベルではない。
「では、模擬戦の相手として教え子たちと戦う中で、徐々に指導することに慣れていったと」
「そんな教え子なんて呼べるほどがっつり教えてはいませんよ。ただ、気付いたことを伝えたり……こういう事が出来たら便利だよって言うのを、彼らの常識の範囲内で出来ることを伝えていました」
彼等の常識内。
その言葉から、自分と他の人間では常識が違うという……ある種の傲慢さが見て取れる。
しかし、イスタンダル辺境伯から追加でソウスケの情報を伝えられていた騎士は……本当に一般の戦闘職と、ソウスケたちの常識が違うと理解していた。
(……やはり、大戦で武勲を立てる者はその辺りもしかと理解してるのだな)
仲間を殺させぬよう、戦場を駆けまわり、決して相手を殺すことだけに固執しない。
ただ、遠距離から狙われれば、必殺の槍を投擲して粉砕滅炎し……最終決戦では、敵国の戦力を担う一角を単独で撃破。
「……やはり、戦闘力が高い者が、決して良き指導者になる訳ではありません。しかし、ソウスケ殿はそうではないようだ」
「へへ、ありがとうございます。でも、俺の場合はなんと言いますか……色々と特殊なんで」
死線と言えるであろう激闘を越えたという思いはあれど、やはりこの世界に来る時、神から十五のスキルを得たからこそ、本来経験するであろう苦労を経験せずに強くなれたのだと自覚している。
「こんな事言うと、この人は何も言ってるんだ? って思われるかもしれませんけど、俺としては弱い人の気持ちも解るつもりです」
「気持ちの理解、か…………私も一応部下たちを束ね、指導することもあるが、耳が痛い言葉だ」
指導者として、部下のやる気も奮い立たせるのも仕事の一つ。
彼は決して人の気持ちを考えられない男ではないが、それでも人心掌握に特別長けているタイプではない。
「……若造の考えではありますけど、やっぱり背中がカッコいい人には、付いて行こうと思うかと」
「ふむ…………覚えは、あるな」
今はもう薄れているが、それでもぼんやりと憧れた人物の背中は覚えていた。
「後、上手く指導するコツとか、そういった細かいところは、正直自分にはないと思っています。ただ、やる気を出す簡単な方法なら一応あります」
「むっ、そんな方法が、あるのですか」
「えっとですね……我々は、男じゃないですか」
自分たちの性別は男だろ。
そう言われ……護衛の騎士も、ちゃんと野郎であるため、ソウスケが言わんとする内容は理解出来た。
「……なるほど。そうか……そうか、そうだな。そうなんだろうな」
そうかの三段活用を口にしながら、何故か苦笑いを浮かべながら俯いてしまった。
「? えっと、もしかしてそういった話題は苦手なタイプ、でしたか?」
「いや、そういう訳ではない。気持ちは解るのですが……私は一応、既婚者なのです」
現在は身に付けていないが、勤務時間が終われば、いつも結婚指輪を装着している。
世の中には、結婚していようが溜まる物は溜まるんだよ!!!! と高らかに宣言して店に通う者もいるが、この男は貴族の騎士として相応しい精神を有しており、決してその様な真似は出来なかった。
ある日の休憩時、護衛の騎士からそんな質問を投げかけられたソウスケ。
「豊富……と言えるほどの経験はないと思いますよ。冒険者として何度かそういった依頼を頼まれたことはありますけど、基本的に模擬戦の相手? として期待されてた感じなので」
模擬戦の相手として期待する。
それは狩りに同行したり、庭での訓練を眺め始めてから、それを期待して依頼した人物たちの気持ちが心底解る。
歳は二十を越えていない筈なのに、剣術だけではなく体術や槍術、短剣術などまで並のレベルではない。
「では、模擬戦の相手として教え子たちと戦う中で、徐々に指導することに慣れていったと」
「そんな教え子なんて呼べるほどがっつり教えてはいませんよ。ただ、気付いたことを伝えたり……こういう事が出来たら便利だよって言うのを、彼らの常識の範囲内で出来ることを伝えていました」
彼等の常識内。
その言葉から、自分と他の人間では常識が違うという……ある種の傲慢さが見て取れる。
しかし、イスタンダル辺境伯から追加でソウスケの情報を伝えられていた騎士は……本当に一般の戦闘職と、ソウスケたちの常識が違うと理解していた。
(……やはり、大戦で武勲を立てる者はその辺りもしかと理解してるのだな)
仲間を殺させぬよう、戦場を駆けまわり、決して相手を殺すことだけに固執しない。
ただ、遠距離から狙われれば、必殺の槍を投擲して粉砕滅炎し……最終決戦では、敵国の戦力を担う一角を単独で撃破。
「……やはり、戦闘力が高い者が、決して良き指導者になる訳ではありません。しかし、ソウスケ殿はそうではないようだ」
「へへ、ありがとうございます。でも、俺の場合はなんと言いますか……色々と特殊なんで」
死線と言えるであろう激闘を越えたという思いはあれど、やはりこの世界に来る時、神から十五のスキルを得たからこそ、本来経験するであろう苦労を経験せずに強くなれたのだと自覚している。
「こんな事言うと、この人は何も言ってるんだ? って思われるかもしれませんけど、俺としては弱い人の気持ちも解るつもりです」
「気持ちの理解、か…………私も一応部下たちを束ね、指導することもあるが、耳が痛い言葉だ」
指導者として、部下のやる気も奮い立たせるのも仕事の一つ。
彼は決して人の気持ちを考えられない男ではないが、それでも人心掌握に特別長けているタイプではない。
「……若造の考えではありますけど、やっぱり背中がカッコいい人には、付いて行こうと思うかと」
「ふむ…………覚えは、あるな」
今はもう薄れているが、それでもぼんやりと憧れた人物の背中は覚えていた。
「後、上手く指導するコツとか、そういった細かいところは、正直自分にはないと思っています。ただ、やる気を出す簡単な方法なら一応あります」
「むっ、そんな方法が、あるのですか」
「えっとですね……我々は、男じゃないですか」
自分たちの性別は男だろ。
そう言われ……護衛の騎士も、ちゃんと野郎であるため、ソウスケが言わんとする内容は理解出来た。
「……なるほど。そうか……そうか、そうだな。そうなんだろうな」
そうかの三段活用を口にしながら、何故か苦笑いを浮かべながら俯いてしまった。
「? えっと、もしかしてそういった話題は苦手なタイプ、でしたか?」
「いや、そういう訳ではない。気持ちは解るのですが……私は一応、既婚者なのです」
現在は身に付けていないが、勤務時間が終われば、いつも結婚指輪を装着している。
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