1,057 / 1,259
千九十八話 なるべく綺麗に
しおりを挟む
「さすが、街が本当に大きいだけあって、活気も凄いな」
「そうですね。これだけ住人が多く活気があるということは、それだけ住人たちがこの街の防御力を信用してるのでしょうね」
「………………なるほど。良い街だな、強い匂いが充満している」
「「…………」」
二人がレイウルの活気などに感心してる中、ザハークだけは一人、相変わらず戦闘脳のまま初めて入る街の空気を楽しんでいた。
「とりあえず、あの門兵の人が教えてくれた通り、街の中心地に行ってみよっか」
ソウスケたちはまず冒険者ギルドに向かうのではなく、宿確保のため門兵のお兄さんに教えてもらった場所を目指す。
「なるほど。あの門兵の方は本当に良いところを勧めてくれたようですね」
街の中心地に近づくにつれ、上中下のランク帯の中で、確実に上に入る宿屋が増えてきた。
「ソウスケさん、あの宿などどうでしょうか」
「ん? あの宿か………………確かに、良さそうだね」
ミレアナが指さす方向には、主に木材が使用された宿であった。
全体的に大き過ぎず、小さ過ぎず。
ザ・高級宿かと言われると首を傾げるが、それでも外装をパッと見ただけで、ソウスケは悪くないと思った。
ミレアナはしっかりザハークの事も考えており、提案した宿には従魔用のスペースもある。
「ふむ……なんか良い雰囲気、があるな」
ザハークも異論はなく、ミレアナが提案した宿へと直行。
宿には警備兵をしている者がおり、街中に入ると時と同じくギルドカードを確認された。
「っ……確認させてもらった。まだ部屋は空いている筈だ」
「どうも」
「それと、部屋はなるべく綺麗に扱ってほしい」
「? はい、分かりました」
ランクの高い宿に警備兵がいたりするのは、決して珍しくない。
ただ、部屋を扱う際に、なるべく綺麗に扱ってほしいと告げられたのは、初めての経験だった。
「……何だったんだろうな、あの人たち」
「部屋を汚くして帰る者たちがいたのでしょう。わざとやわざとじゃない関係無くとも、宿の主が嫌っているのでしょう」
「だからギルドカードまで確認してたんだな」
二人が考えた通り、この宿の店主はある程度までは仕方ないにしても、限度を越える汚れは許せない。
そのため、これまで訪れた客の中には出禁となった客もおり、宿が保有しているブラックリストに名前が記されることになる。
「いらっしゃいませ、お客様」
中に入ると、エルフの従業員が対応し、ソウスケがひとまず十日間ほど泊ると告げると、ほんの少し営業スマイルが崩れるも、少年の隣にいる同族が強者であること解っているため、怪しい視線を向けることはなかった。
「…………なんて言うか、良い部屋だな」
「えぇ……本当に、落ち着ける良い部屋ですね」
外装だけではなく、内装も木材がメインで作られている。
良い部屋というのにも種類があるが、ソウスケは落ち着ける良い部屋だと感じた。
「はぁ~~~~~~…………っと、ヤバいヤバい。うっかり寝そうになった」
ベッドに寝っ転がったソウスケ。
勿論、そのまま眠るつもりはなかった。
まだ昼過ぎということもあり、街を散策し始めても問題無い。
ただ…………本当に無意識に目を閉じた瞬間、あっさり寝かけた。
「おそらく、宿に使用されている木材の効果ですね」
「癒される、落ち着く、うっかり寝てしまうそうになる効果か?」
「おそらく、そういった効果を持っているかと。とはいえ、さすがに天然の物でここまでは………………何かしらの加工が加わっていますね。この宿を設計した方の拘りを感じます」
ミレアナはオーガニックに拘るようなタイプではなく、寧ろ更に加工を加えて利用者たちに癒しを与えようと工夫を重ねた設計者に感心していた。
「それじゃ、早速散策に行くか」
二人はラフな格好に着替え、従魔スペースにいるザハークの元へと向かった。
「すぅーーー…………すぅーーーー………」
そこには、すやすやと爆睡しているオーガの希少種がいた。
「そうですね。これだけ住人が多く活気があるということは、それだけ住人たちがこの街の防御力を信用してるのでしょうね」
「………………なるほど。良い街だな、強い匂いが充満している」
「「…………」」
二人がレイウルの活気などに感心してる中、ザハークだけは一人、相変わらず戦闘脳のまま初めて入る街の空気を楽しんでいた。
「とりあえず、あの門兵の人が教えてくれた通り、街の中心地に行ってみよっか」
ソウスケたちはまず冒険者ギルドに向かうのではなく、宿確保のため門兵のお兄さんに教えてもらった場所を目指す。
「なるほど。あの門兵の方は本当に良いところを勧めてくれたようですね」
街の中心地に近づくにつれ、上中下のランク帯の中で、確実に上に入る宿屋が増えてきた。
「ソウスケさん、あの宿などどうでしょうか」
「ん? あの宿か………………確かに、良さそうだね」
ミレアナが指さす方向には、主に木材が使用された宿であった。
全体的に大き過ぎず、小さ過ぎず。
ザ・高級宿かと言われると首を傾げるが、それでも外装をパッと見ただけで、ソウスケは悪くないと思った。
ミレアナはしっかりザハークの事も考えており、提案した宿には従魔用のスペースもある。
「ふむ……なんか良い雰囲気、があるな」
ザハークも異論はなく、ミレアナが提案した宿へと直行。
宿には警備兵をしている者がおり、街中に入ると時と同じくギルドカードを確認された。
「っ……確認させてもらった。まだ部屋は空いている筈だ」
「どうも」
「それと、部屋はなるべく綺麗に扱ってほしい」
「? はい、分かりました」
ランクの高い宿に警備兵がいたりするのは、決して珍しくない。
ただ、部屋を扱う際に、なるべく綺麗に扱ってほしいと告げられたのは、初めての経験だった。
「……何だったんだろうな、あの人たち」
「部屋を汚くして帰る者たちがいたのでしょう。わざとやわざとじゃない関係無くとも、宿の主が嫌っているのでしょう」
「だからギルドカードまで確認してたんだな」
二人が考えた通り、この宿の店主はある程度までは仕方ないにしても、限度を越える汚れは許せない。
そのため、これまで訪れた客の中には出禁となった客もおり、宿が保有しているブラックリストに名前が記されることになる。
「いらっしゃいませ、お客様」
中に入ると、エルフの従業員が対応し、ソウスケがひとまず十日間ほど泊ると告げると、ほんの少し営業スマイルが崩れるも、少年の隣にいる同族が強者であること解っているため、怪しい視線を向けることはなかった。
「…………なんて言うか、良い部屋だな」
「えぇ……本当に、落ち着ける良い部屋ですね」
外装だけではなく、内装も木材がメインで作られている。
良い部屋というのにも種類があるが、ソウスケは落ち着ける良い部屋だと感じた。
「はぁ~~~~~~…………っと、ヤバいヤバい。うっかり寝そうになった」
ベッドに寝っ転がったソウスケ。
勿論、そのまま眠るつもりはなかった。
まだ昼過ぎということもあり、街を散策し始めても問題無い。
ただ…………本当に無意識に目を閉じた瞬間、あっさり寝かけた。
「おそらく、宿に使用されている木材の効果ですね」
「癒される、落ち着く、うっかり寝てしまうそうになる効果か?」
「おそらく、そういった効果を持っているかと。とはいえ、さすがに天然の物でここまでは………………何かしらの加工が加わっていますね。この宿を設計した方の拘りを感じます」
ミレアナはオーガニックに拘るようなタイプではなく、寧ろ更に加工を加えて利用者たちに癒しを与えようと工夫を重ねた設計者に感心していた。
「それじゃ、早速散策に行くか」
二人はラフな格好に着替え、従魔スペースにいるザハークの元へと向かった。
「すぅーーー…………すぅーーーー………」
そこには、すやすやと爆睡しているオーガの希少種がいた。
376
あなたにおすすめの小説
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった!
「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」
主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!
【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ
一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。
百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。
平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。
そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。
『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました
KABU.
ファンタジー
「お前の《記録》なんて役に立たない。もうついてくるな」
勇者パーティの“お荷物”扱いに耐えてきたライトは、
ついにダンジョン最深部で置き去りにされる。
追放すらできない規約のせいで、
“事故死”に見せかけて排除しようとしたのだ。
だがその死地で、ライトのスキル《記録》が進化した。
《超記録》――
敵のスキルや魔法、動きまですべてを記録し、即座に使えるようになる最強格の能力。
生き延びたライトはレグナの街で冒険者として再出発。
努力で《成長》スキルを獲得し、
記録したスキルや魔法は使うほど強化されていく。
やがて《超記録》は最終進化《アカシックレコード》へ。
対象を見ただけでステータスや行動パターンが分かり、
記録した力を即座に上位化し、さらに合成して新たな力まで生み出す究極スキル。
一方、勇者パーティはライトを失った途端に依頼成功率が大幅に低下。
さらに魔王軍四天王の暗躍によって状況は悪化し、ついには洗脳されてライトに牙をむく。
街を襲うドラゴン、仲間それぞれの過去、四天王との連戦。
優しく努力家のライトは、出会った仲間と共に確実に強くなっていく。
捨てられた記録係が、世界最強へと進化する。
爽快無双×成長ドラマの大長編ファンタジー開幕。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる