転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
1,070 / 1,259

千百十一話 ならではの選択肢?

しおりを挟む
「あぁいう姿をした土竜……いや、岩竜? もいるんだな」

「みたいですね」

ドラゴニックバレーに足を踏み入れてから数十分後、ようやくザハークは心が躍る相手と遭遇することが出来た。

「ハッハッハッ!!!!!!」

「ッ!!!!!!」

戦鬼の拳と、岩竜の爪撃が激突。
ソウスケとミレアナは十分なほど距離を取っているのだが、それでも衝突による衝撃を感じた。

「四足歩行で、それなりに四肢がなく、鈍間ではない岩竜…………なんとも、ザハークにとっては遊び応えがあるドラゴンですね」

「そうだな。さっきまでの絶望顔が嘘のようだな」

土竜、岩竜と聞くと、鈍間なドラゴンというイメージが強い。
実際のところ、同じ四足歩行でも他のドラゴンと比べれば、四肢が短く巨体でパワーはあるがスピードに難があるという印象を強く持たれている。

しかし、三人を襲撃し、現在ザハークとバチバチに戦っている岩竜は雷竜や風竜……先程ソウスケが戦っていた火竜ほどのスピードはない。

それでも、決して鈍間と言うほどの遅さではなかった。

「…………あの岩竜、一応Bランクみたいだけど、一撃の威力だけなら……多分、Aランクに片脚突っ込んでるかな」

「その可能性が高そうですね」

体が大きい。
それだけでパワーが半端ないと予想出来る。

現在戦闘中の岩竜は、決して鈍間とは言えないスピードを有しており、強大なパワーにスピードが加算されると……一撃の威力は更に高まる。

「ザハークは相変わらず真っ向から挑みますね」

「注意したくなるか?」

「……今更、としか言えませんね」

ザハークのスピードがあれば、鈍くはない岩竜の攻撃を避けてカウンターをぶち込み、優位に戦況を進めることが出来る。

だが、ザハークの頭にそういった賢い戦い方は目の前の岩竜を見た時から、脳裏に浮かびすらしなかった。

「一応、あのレベルであれば、まだ何も言いません」

人間、仲間であれば無駄だと解っていても言いたくなる時がある。

今現在ザハークは岩竜と笑いながら戦っている。
ザハークとの付き合いの長さはソウスケと同じということもあり、現在ザハークが浮かべている笑みは……本当に余裕がある上で浮かべている笑みだと解っていた。

当然、ザハークの様なタイプは余裕がない程の強敵と戦う時も笑みを浮かべるが、そうなると場合にもよるが、ミレアナは注意よりも先に援護を行ってしまう。

「ガァアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」

「ヌゥララララララララララララッ!!!!!!」

「……ソウスケさん。あの行動に、バカという言葉以外、当てはまる言葉はあるでしょうか」

岩竜は一旦接近戦を止め、距離を取ってブレスを放った。

対してザハーク……避けるなんて選択肢を取ることはなく、勿論ガードという選択肢もない。
であれば、ワイバーンの時と同じく渾身の遠距離攻撃を放つ?

今回はそういった方法で対処するのではなく、両拳にそこそこ厚く魔力を纏い……殴って殴って殴り続けた。

「は、ははは……えっと、そうだね…………ざ、ザハークならではな選択肢、ってところかな……うん」

そこそこ無茶をするソウスケも、さすがに今回の行動には若干引いた。

ザハークは岩竜が放つブレスに対し、渾身の拳をぶつけ……そのまま衝撃を頭部にぶち込もうとしたのではない。
衝撃波は出れど、何発も何発も殴り続け、切り抜けようとした。

(ザハークみたいな特別なオーガじゃなくても、もしかしたら出来る人はいるかもしれないけど……出来ると思っても、あれはさすがに実戦しようとは思わないだろうな~~)

「ふっふ……ハッハッハッ!!!!! 中々痛かったぞ、岩竜!!!!!!」

「………………」

当然、ザハークは今回の岩竜戦では全ての強化系スキルを発動してない。
身に纏っている魔力も、ただの魔力である。

ドラゴンにとっては、他の攻撃方法がどれだけ優れていたとしても、ブレスというのは自身の切り札。
敵を確実にぶっ殺せる手段なのである。

岩竜からも、薄っすらと拳で抵抗しようとするザハークの姿は見えていた。
だからこそ……ところどころから血が流れているとはいえ、本当に殴って殴って自身のブレスを乗り切った珍獣を見て、思わず固まってしまった。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

虹色のプレゼントボックス

紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。 安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。 わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。 余計わけのわからない人物に進化します。 作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。 本当に尋常じゃないほど早いです。 残念ながらハーレムは無いです。 全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。 未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。 行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。 なかなかに最悪な気分になりました。 お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。 というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。 お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ

柚木 潤
ファンタジー
 薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。  そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。  舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。  舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。  以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・ 「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。  主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。  前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。  また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。  以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。  

家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました

朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。 魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。 でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。

処理中です...