転移したらダンジョンの下層だった

千百十三話 流星群？

「ぬぅううああああッ！！！！」

「っ！？」

岩竜の尾撃を受け止めると、ザハークはそのまま岩竜を投げ飛ばす、もしくは尾を引き千切る……のではなくそのまま勢い良く持ち上げ、振り回し……地面に叩きつけた。

「「っ！！！！？？？？」」

岩竜が地面に叩きつけられると、その衝撃が離れた場所で観戦しているソウスケとミレアナの元にまで届いてきた。

「せぇえええやッ！！！！」

「っ！！？？」

「ぜぇええらッ！！！！！！」

「っ！！！？？？」

たった一度だけ叩きつけただけでは、終わらせられない。

ソウスケがうっかり仕留めてしまった火竜とは違い、後頭部を地面に叩きつけられても、その衝撃が容易に頭部まで辿り着かない……というザハークの判断は、決して間違っていなかった。

だからこそ、何度も何度も……本当に何度もあっちにこっちそっちへ向こうへと……何回も、何十回も叩きつけた。

「……ちょっと、やり過ぎ……だよな？」

「岩竜が頑丈な鱗、肉体を持っているのは解っていますが……ソウスケさんの言う通り、さすがにやり過ぎですね」

当然、地面から衝撃が広がれば、強制的に離れた場所に生息しているモンスターたちにも存在を伝えることになる。

加えて、頑丈な体を持っているとはいえ……ザハークのパワーで何十回も叩きつけられれば、さすがに脳まで衝撃が伝わってしまう。
そして……堅い堅い鱗もボロボロと崩れ落ちてくる。

「むっ、終わっていたか」

「………………」

三十回ほど岩竜を叩きつけたところで、ザハークはようやく既に岩竜が死んでいたことに気付いた。

「お疲れ様、ザハーク。にしても……まぁ～～～、派手にやったな」

「ソウスケさんの言う通りですよ、ザハーク。あなた……さすがにやり過ぎですよ」

Bランクドラゴンという相手に、手を抜かずに戦うというのは、当然の事である。
ミレアナとしても、一回だけ地面に思いっきり叩きつけただけで、討伐したと判断するのは危ないと思っていた。

だが、三十回以上叩きつけた結果……ザハークの周囲はクレーターだらけとなっていた。

「はっはっは！！　そうだな、確かに少しやり過ぎたかもしれない。だが、岩竜の頑丈さを考えれば、これぐらいはやらなければと思ってな」

「間違ってはいませんけど、あなたの腕力があれば、十回も叩きつければ十分ですよ」

ブツブツとザハークに文句を伝えながらも、ミレアナは当たり前の様に岩竜の傷口から血を抜き始めた。

（…………一応用意しておいた、あれを使うか）

普段、滅多な事では使わない巨大容器を取り出すソウスケ。

普段であれば、ポーションなどを入れるのに使う容器に入れているが、岩竜サイズのモンスターが有する血液量となると……まず一旦大きな容器に入れた方が良い。

（これ使うの……溶岩竜を倒した時以来か？　あのドラゴンもデカかったよな～～～）

普段討伐しているモンスターよりも体が大きく、普段よりも血抜きを行うのに時間が掛かってしまったが、その後二人がかりで丁寧に……そして素早く岩竜の死体を解体する。

（ザハークがバカスカ叩きつけたから結構砕けちゃってるけど……うん、やっぱり本当に頑丈みたいだな）

ソウスケは岩竜の体を覆っていた鱗変わりの岩石を触りながら、改めて岩竜の防御力に感心し……これを使って防具を造れば、という思いが湧き上がる。



「ふぅ～～～～、終わった終わった。ん？　ザハーク……そんな渋そうな顔してどうしたんだ？」

「二人が解体している間、一匹もモンスターが襲いかかってこなかったなと思ってな」

良い事ではあるが、血の匂いがダラダラと零れてる状況で、一匹も来ないのは少しおかしいと感じた。

「あなたが訳の分からない倒し方をしたからでしょう。仮に倒し方を見ていなくとも、この光景を見ればそれだけで恐れを抱く筈ですよ」

周囲はクレーターだらけ。

岩竜の体が頑丈だったこともあり、クレーターに更にクレーターが埋まるということもあり……人によっては、巨人系のモンスターどうしが戦ったと誤解してもおかしくなかった。