転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百四十四話 期待?

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(神の力があるかもしれない、か…………否定は出来ないな)

詳しい事は解らない。
今更神にその辺りの内容を確認する手段もない。

ただ、ザハークの考えを否定する材料もなかった。

「…………ありがとう、ザハーク。少し軽くなったよ」

「そうか、それは良かった」

その後、再び造った短剣は……納得のいく質の物が出来上がった。

(うん……悪くない。っと、そろそろ夕食の時間か)

杖や弓造りに勤しんでいたミレアナと合流し、冒険者ギルドへと向かう。

「っ…………」

「……ソウスケさん、今のは」

「ミレアナも聞こえたか」

道中、微かにではあるが、一つの雄叫びが二人の耳に届いた。

「ふむ? 声は聞こえなかったが、確かに力が……爆発するのを感じたな」

「誰かが戦い始めたのでしょうか」

「この時間にか?」

「冒険者側から攻めることはなくとも、ドラゴン側から攻めることはあるでしょう。彼らにとって襲うとなれば、時間は関係無い筈」

「……それもそうか」

ミレアナの言う通り、モンスターの中にも暗闇の中で狙うのが得意不得意、夜型かそうでないかの差はあるが……獲物を狩るのに、時間はあまり関係無い。

その気になれば、その時に動く。

「…………もしくは、ドラゴンとドラゴンが戦った、か」

「それは……あり得るのでしょうか?」

「モンスターの中でもプライドが高そうなモンスターだ。同族とはいえ、同じ腹? から生まれた個体以外は、同属性であっても気に入らないって感じれば、本気で潰し合いそうじゃないか」

「……確かに、あり得そうですね」

ドラゴニックバレーに……グレンゼブル帝国に来てから、一気に遭遇したドラゴンの種類が増えた。

プライド……それは人間だけが持つ者ではない。
高そうなプライドを持ってるのがドラゴンというだけで、ドラゴン以外のモンスターも大なり小なり有している。

ただ、数十体以上も出会い、対面……対峙してきたからこそ、ソウスケの考えに一理どころか二理三理はあると感じたミレアナ。

そんなあれこれ話している間に、冒険者ギルドに到着。

(…………? 見られるのはいつもの事だけど……なんと言うか、期待? が籠った視線がちらほらあるような……なんでだ?)

大勢の人物から視線を向けられることに関しては、強制的に慣れた。
だからこそ、今回向けられた視線の中に、これまであまり向けられてきたことがない視線が多い事に直ぐ気付いた。

「……変な視線だな」

「そうですね」

二人は向けられる視線の種類に違和感を感じながらも訓練場に入る。

すると、夕食の時間を忘れて模擬戦を行っている七人を発見。

「元気だな、皆」

「ソウスケさん……あっ、もしかしてもう夕食の時間ですか?」

「そうだよ。調整なんだから、もっとゆったりしてると思ってたんだが」

「いやぁ~~、そのぉ……途中から盛り上がってしまったと言いますか」

「すいません」

あまり良くない流れだったのは解っているため、ノックスとネイトの二人は揃って頭を下げた。

「……まぁ、明日は明日でこれまで通り頑張ってくれればそれで良いよ」

なんとなく気持ちが解らなくはないため、ソウスケは特に怒りはしなかった。

変わりに、ロビーにいた冒険者たちが自分たちに向けてきた視線について尋ねた。

「多分と言いますか、確実にソウスケさんたちが水龍を討伐することに期待してるんだと思います」

「……断言出来るほどか?」

「はい。訓練している間に話しかけてきた冒険者が、ソウスケさんたちは水龍に挑む気はあるのかって尋ねてきたので」

一人や二人……ではなく、ギルド職員も含めれば約十人ほどがノックスたちに同じような内容を尋ねた。

「マジか……ちなみに、なんて返したんだ」

「俺は遭遇すれば、その場で対処するはずと答えました」

間違ってはおらず、特に変な方向に燃え上がってしまう様な内容でもない、ソウスケにとっては有難い回答。

だが、少し気になる部分があった。
それは……俺は、という部分。

「「…………」」

「……はぁ~~~~~。まっ、逃げはしないから良いんだけどさ」

誰が少々大袈裟言ってしまったのか把握しながらも、ソウスケは溜息と苦笑いを零すだけで、それ以上は言及しなかった。
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