転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千百四十九話 似てる、かも

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「ほい、出来たよ~」

これまでは基本的に夕方になる頃にはレイウルに戻っていた。

だが、本日は戻ることなくそのままドラゴニックバレーで一夜を過ごすことにした。

「あ、ありがとうございます」

この経験は、早目に体験しておいた方が良い……それは、ノックスたちも解っている。
ただ……どうしても緊張感が昼間の探索時よりも増す。

「とりあえず食べなさい。何かあっても、必ず私たちが守ります」

「う、うっす」

ソウスケとミレアナが造る料理は……相変わらず美味い。
美味いが、それでも緊張感から故か、偶に味が良く解らなくなる。

「「「「「「「…………」」」」」」」

「……ふふ、まぁ仕方ないか」

「っ、すまない……今更、ソウスケさんたちの実力を疑っている訳ではないのだが」

「解ってるよ。だから謝る必要はないよ」

表情からも、ハリアルたちの緊張感があまり解けていないことは解る。
ソウスケはそこを攻めるつもりはサラサラなかった。

「それじゃあ、昼間に話してた内容の続きでも話すかい?」

ドラゴン肉のステーキだけではなく、サラダもつまみながらソウスケは彼らの緊張感が和らぎそうな話題を提案。

「そう、ですね。しかし、まだ続きがあるのですか?」

ノックスたちが水竜を討伐した後、その間に三人で話していた内容を七人に伝え、それからもドラゴニックバレーは一つの生命体なのではないか? という話題で探索中は盛り上がり続けた。

「続きってほど大したものじゃないけどね。ドラゴニックバレーっていう場所は、少しダンジョンに似てるんじゃないかと思って」

「ダンジョンに、ですか」

当然、彼らもダンジョンという場所は知っている。

ただ、まだ実際に探索したことはなかった。

「うん。まぁ、基本的に生息してる生物がドラゴンであることを考えれば、攻略の難易度はドラゴニックバレーが格段に上なんだけどね」

「…………でも、あれっすよね。ダンジョンには宝箱があるんすよね」

ジャバも実際に探索した経験はないが、ダンジョンに関する多少の知識は持っていた。

なので、まずは宝箱の有無が異なる差なのではないかと思った。

「あるよ。差はあるけど、色々な物が入ってるよ。宝箱に関しては、ドラゴンというモンスターの素材が、探索者にとっては大きな宝だと思う」

「それは……そうなのかも、しれないっすね」

ソウスケが言いたい事は解らなくはない。
しかし、普通の探索者たちは、安全にBランクドラゴンを討伐することは難しい。

「それと、まぁ……これはあんまり良い捉え方じゃないけど、討伐したドラゴンの巣に向かえば、そのドラゴンが得たお宝が溜まってるだろ」

ドラゴンは、優れた武器や宝石を収集する特徴がある。

だが、ドラゴニックバレーで得られる物となると……探索者たちを殺し、得た物。
ダンジョンの構造にはまだ確信がないものの、ドラゴニックバレーという地であれば、明確にその他からは死んだ者たちから得た物であると断言出来る。

「……ドラゴニックバレーの下には、膨大な龍脈があるとされています。つまり、ダンジョンの下には大なり小なり差はあれど、龍脈が通っていると」

「その龍脈という存在? に関して俺はあまり詳しくないけど、ドラゴニックバレーみたいな場所、ダンジョン……他にも、多くのモンスターが生息する森や密林、遺跡や……火山地帯とか? そういう場所の地中深くには、その龍脈があるのかもしれないね」

「なる、ほど」

ソウスケの考えが功を奏したのか、ネイトたちの体から必要以上の緊張感が消えつつあり、ソウスケが新たに提示したドラゴニックバレーに関する話に食いつく。

食欲も戻り、食べるペースが上がり……少し多めに作っていた筈の夕食は、腹ペコな若者たちによってあっさりと食べ尽くされるのだった。
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