スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

文字の大きさ
576 / 1,361

五百七十五話 返答は決まっているが……

しおりを挟む
「アラッドよ、名案を思い付いたぞ」

「名案ですか」

木竜が名案と言うのだから、さぞかし良い案なのだろうと少し期待するアラッド。

「短期間の間、そこの従魔と同様、私もお前の従魔になれば良い」

「……………………」

アラッドの思考は完全に停止した。

木竜の言葉が聞こえなかったわけではない。
寧ろちゃんと聞こえており、じっくり考えれば……いや、じっくり考えずともそこが妥協点であることは解る。

ただ……その未来を想像してしまい、思わずフリーズ。

「……おい、アラッド」

「はっ!!?? す、すいません。少しお、驚き過ぎたと言いますか……その、本当にびっくりして」

「構わん。それで、私の名案はどうだ」

「そ、そうですね……」

木竜が本格的に参戦するにはどうするべきかと考えれば、まさに名案だった。

アラッドは基本的に誰も知らないような村から現れた超スーパールーキーなどではなく、身元がしっかりしており、侯爵家の令息に加えて騎士の爵位を持っている。

立場という点に関しては申し分ない。
加えて、冒険者界隈では未来のAランク冒険者候補に挙げられており、ただ立場があるだけのボンクラではない。
その他の要素も加えて……アラッドは木竜を従魔にするだけの要素が色々と揃っている。

「……あの、それは本当に自分でなければ駄目ですか?」

「自分の実力に自信がない、という事か?」

「い、いえ。そういう事を言葉にしてしまうのは、嫌味になると解っているので……ですが、その……」

既にアラッドはクロ……デルドウルフというAランクのモンスターを従魔にして活動している。

これまでの行動から、もっと穏便に目立たないように行動したいんですよぉ~~~~……なんて言おうものなら、友人たちからであっても白い、もしくは冷たい目を向けられる。

それはアラッド本人も理解しており、そもそもそういった生き方は無理だと自覚している。
いきなり方向転換しようとも考えていない。

しかし……Aランクのドラゴンを一時的にとはいえ、従魔にする。
それがどれだけの事なのかも理解出来る。

従魔と共に戦う冒険者の中に、ワイバーンやBランクの属性ドラゴンを従魔にしている冒険者は……多くはないが、一定数存在する。

そしてアルバース王国や、他の国にもワイバーンに乗って戦う竜騎士は存在する。

だが……Aランクの高位ドラゴンを従える者は、まずいない。
歴史を遡ったとしても、両手両足の指の数を越えることはない。

「……木竜殿は、一時的にとはいえ人間の下で行動することに、不満などはないのですか」

「不満があれば、このような提案はしない。まず、お前は私と同じ次元のドラゴンと親交がある」

「そ、そうですね」

疑問解消の質問の中で、既にオーアルドラゴンと交流があることは伝え済み。

「加えて、その歳にしては圧倒的な強さを持っている。そっちの巨狼と組めば、十分私の首に刃が届くだろう」

「ど、どうも」

「強ければ誰にでも従うという訳ではない。アラッド……お前だからこそ、その価値があると判断した」

「っ……光栄です」

人の言葉を話せるからか、それとも高い知性があるからか……そう評価されることに嬉しさすら感じる。

(…………寧ろ、今回の件に関わった人間以外に従った場合の方が、色々と問題になるかもしれない、か)

また十数秒ほど瞑目して悩んだ。

しかし、悩んだところで……どちらにしろ結果は変わらない。
ただ……それでも、この場でアラッドが勝手に決める訳にはいかなかった。

「……木竜殿。おそらく答えは決まっているとは思いますが、一度この件に関しては持ち帰ってもよろしいでしょうか」

「ふむ……………力の強さだけで序列が決まらない事を考えれば、当然か。分かった、上の返事というのを待とう」

「ありがとうございます」

本題はこれで終了……だが、この後結局アラッドはオーアルドラゴンの時と同じく料理を造ることになり、結局ジバルに戻ってくるのは夕暮れになってからだった。


「なるほど…………とりあえず、大丈夫かい」

戻って来たアラッドから木竜との会話内容を聞いたハリスは、まずアラッドの心労具合を心配した。

ハリスはアラッドが目立たないように、なんて生き方を強く求めていない事は分かっている。
単純に目立つ、意外の目立ち方をすることも受け入れていると……直感で解かっている。

だが、今回の件がそのまま……木竜の提案通りに進めば、眉間を抑えたくなる目立ち方をするのも解る。

「……もう、仕方ないと思ってます。というか、ここまで関わっていて今更無理だと言うのは……逃げになります」

変なプライドの話でも、男らしい……ほんの少し子供心が混ざっているプライドでもない。
責任という単純な話である。

「問題が問題なだけに……貴族出身の自分が、この件から逃げることは出来ません」

「無理をしてないかい、という言葉は愚問だね」

「心配して頂き、ありがとうございます」

貴族だから…………代われるなら、その責任を代わりに背負いたい。

(っ……そう思うなら、この先起こり得るであろう戦争で、一人でも多くの仲間を救うのみ)

ハリスもハリスで、アラッドと同じく覚悟を決めた。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

処理中です...