1,032 / 1,361
千三十話 似ている
しおりを挟む
いきなり訓練場に現れた若者が発する戦意に……同じく若者である新米騎士、騎士候補の者たちは後退りした。
(な、なんだあの男は)
(我々と同じ、騎士……ではない)
(スティーム様の、隣にいるということは……スティーム様の、ご友人?)
(待てよ。今、あの男……アラッドと、名乗ったか?)
カチコミかと思い、後退りをしながらも木剣や木槍を強く握りしめるも、一部の者たちはアラッドと名乗った人物がいったいどういう者なのかを思い出した。
スティームからラヴェスに定期的に手紙を送られてきており、途中からその手紙にはアラッドという名前が記されるようになった。
そうなれば、当然ラヴェスがそのアラッドについて他の者と話し、その話を聞いた者がまた別の者に話し……といった具合に、徐々に徐々に広まっていく。
高等部の一年生が、学生最強の三年生をトーナメントの決勝戦で倒した。
冒険者になって直ぐに複数のBランクモンスターやAランクモンスターを討伐した等々……調べてみると、そういった信じられない情報は耳に入る。
多くの新米騎士、騎士候補の者たちがその話を疑っていた。
だが……実際にそのアラッドが現れ、零した戦意を受け……彼等は引いてしまった。
それは、間違いない事実だった。
「初めまして、アラッド君。既に説明は受けているかもしれないが、私がセルジュだ。よろしく」
「えぇ、よろしくお願いします」
年齢は一応三十代後半ではあるものの、優顔フェイスはまだ二十代でも十分通じる。
ただ、アラッドが気になったのはそこではない。
(……拳に握り的に、おそらく体技もそれなりに使えるだろうな)
アラッドに「お前なんぞがスティーム様と……」といった怨念をぶつけるが如く、握手する際に拳を強く握りしめることなどなかった。
それでも、握った拳の感触から、アラッドは自分に近しい戦闘スタイルを持っているのではと感じ取った。
「先程まで昼食を食べていたと聞きいたけど、本当に今すぐで良いのかな」
「えぇ。そちらも条件は同じだと思うので」
「ふふ、そうか……では、早速戦ろうか」
新米騎士たちは端に移動し、頑丈な木剣を持ったアラッドとセルジュが中心に並ぶ。
今回の戦いは、一応建前はラヴェスが息子であるスティームをアラッドに任せられるか否かを確認するだけ。
そのため、基本的に決着を付ける必要はない。
「では、お手並み拝見といかせてもらおうかな」
そう告げると、セルジュは殆ど足音を立てずに接近。
「フッ!!」
「っ!! シッ!!!!」
アラッドは鋭い突きに反応して回避。
袈裟斬りで反撃するが、セルジュも慌てることなく冷静に回避し、そのまま剣戟は続行。
王都で騎士たちと手合わせする際は約三十秒ほど相手の攻撃を耐え続けたが、今回は特に訓練といった側面もないため、わざわざ相手の攻撃を耐え続ける必要はない。
ただただ……握手をした瞬間に強いと感じた強者との剣戟を楽しむ。
「ね、ねぇ……セルジュさん、まだ……本気じゃないよな」
「ば、バカ。セルジュさんが本気なら、速攻で終わってるだろ」
「だよ、ね…………でも、あのアラッドって人……笑ってるような」
「あぁ……確かに笑っているな」
「あまりにも限界で、無意識に笑ってるとかじゃなくてか?」
「そういった状況で笑みが零れることもあるだろうが、あの笑みは…………そうは見えない」
壁端でアラッドとセルジュの戦いを観戦している新米騎士や候補生たちは、二人の戦いに釘付けになっていた。
「そは見えないって事は、あのアラッドって冒険者は……セルジュさんとの戦いを、楽しんでるから笑ってるってことかよ」
「…………そうなのだろうな」
新米騎士たちの中でも、一番実力が高いクールな男が、中々アラッドのことが認められないやんちゃ男の言葉を肯定。
多くの者が驚く中、まだ数名……諸々と納得出来ない者がいた。
「つってもよ、やっぱセルジュさんは本気を出してない訳だしよ」
「それはそうだろうな。ただ、スティーム様の友人であるアラッドという冒険者も本気を出していない筈だ」
「……そりゃあ、笑ってるからか」
「噂では、あの男の切り札は狂化らしい。まぁ、そもそもただの試合……いや、手合せか? それだけで切り札を使うのはおかしいかもしれないが、一応本気を出していないと言えるだろう」
「「「「「…………」」」」」
クールな新米騎士の言葉に対し、まだそれでもという反論の言葉を返せる者はいなかった。
「俺たちが偶に耳にしていた噂通りの人物なのだろうな」
「…………あぁ~~~~~~~、クソ!!!!! ……お前の言う通りなのかもな」
クール新米騎士の考えに対し、やんちゃ新米騎士は諦めたかのように、それ以上反論することを止め、その通りなのだろうと受け止めた。
彼等にとって、自分とあまり歳の変わらないアラッドが、自分たちが敬意を持つ師であるセルジュと互角に渡り合っているという事実は、中々に気に入らない。
しかし、彼らの騎士としての目的は、ロッテルアンや周辺の村などをモンスターや盗賊から守る事。
悔しさはあれど、彼らは何故自分たちが騎士を志したのかを忘れてはいなかった。
(な、なんだあの男は)
(我々と同じ、騎士……ではない)
(スティーム様の、隣にいるということは……スティーム様の、ご友人?)
(待てよ。今、あの男……アラッドと、名乗ったか?)
カチコミかと思い、後退りをしながらも木剣や木槍を強く握りしめるも、一部の者たちはアラッドと名乗った人物がいったいどういう者なのかを思い出した。
スティームからラヴェスに定期的に手紙を送られてきており、途中からその手紙にはアラッドという名前が記されるようになった。
そうなれば、当然ラヴェスがそのアラッドについて他の者と話し、その話を聞いた者がまた別の者に話し……といった具合に、徐々に徐々に広まっていく。
高等部の一年生が、学生最強の三年生をトーナメントの決勝戦で倒した。
冒険者になって直ぐに複数のBランクモンスターやAランクモンスターを討伐した等々……調べてみると、そういった信じられない情報は耳に入る。
多くの新米騎士、騎士候補の者たちがその話を疑っていた。
だが……実際にそのアラッドが現れ、零した戦意を受け……彼等は引いてしまった。
それは、間違いない事実だった。
「初めまして、アラッド君。既に説明は受けているかもしれないが、私がセルジュだ。よろしく」
「えぇ、よろしくお願いします」
年齢は一応三十代後半ではあるものの、優顔フェイスはまだ二十代でも十分通じる。
ただ、アラッドが気になったのはそこではない。
(……拳に握り的に、おそらく体技もそれなりに使えるだろうな)
アラッドに「お前なんぞがスティーム様と……」といった怨念をぶつけるが如く、握手する際に拳を強く握りしめることなどなかった。
それでも、握った拳の感触から、アラッドは自分に近しい戦闘スタイルを持っているのではと感じ取った。
「先程まで昼食を食べていたと聞きいたけど、本当に今すぐで良いのかな」
「えぇ。そちらも条件は同じだと思うので」
「ふふ、そうか……では、早速戦ろうか」
新米騎士たちは端に移動し、頑丈な木剣を持ったアラッドとセルジュが中心に並ぶ。
今回の戦いは、一応建前はラヴェスが息子であるスティームをアラッドに任せられるか否かを確認するだけ。
そのため、基本的に決着を付ける必要はない。
「では、お手並み拝見といかせてもらおうかな」
そう告げると、セルジュは殆ど足音を立てずに接近。
「フッ!!」
「っ!! シッ!!!!」
アラッドは鋭い突きに反応して回避。
袈裟斬りで反撃するが、セルジュも慌てることなく冷静に回避し、そのまま剣戟は続行。
王都で騎士たちと手合わせする際は約三十秒ほど相手の攻撃を耐え続けたが、今回は特に訓練といった側面もないため、わざわざ相手の攻撃を耐え続ける必要はない。
ただただ……握手をした瞬間に強いと感じた強者との剣戟を楽しむ。
「ね、ねぇ……セルジュさん、まだ……本気じゃないよな」
「ば、バカ。セルジュさんが本気なら、速攻で終わってるだろ」
「だよ、ね…………でも、あのアラッドって人……笑ってるような」
「あぁ……確かに笑っているな」
「あまりにも限界で、無意識に笑ってるとかじゃなくてか?」
「そういった状況で笑みが零れることもあるだろうが、あの笑みは…………そうは見えない」
壁端でアラッドとセルジュの戦いを観戦している新米騎士や候補生たちは、二人の戦いに釘付けになっていた。
「そは見えないって事は、あのアラッドって冒険者は……セルジュさんとの戦いを、楽しんでるから笑ってるってことかよ」
「…………そうなのだろうな」
新米騎士たちの中でも、一番実力が高いクールな男が、中々アラッドのことが認められないやんちゃ男の言葉を肯定。
多くの者が驚く中、まだ数名……諸々と納得出来ない者がいた。
「つってもよ、やっぱセルジュさんは本気を出してない訳だしよ」
「それはそうだろうな。ただ、スティーム様の友人であるアラッドという冒険者も本気を出していない筈だ」
「……そりゃあ、笑ってるからか」
「噂では、あの男の切り札は狂化らしい。まぁ、そもそもただの試合……いや、手合せか? それだけで切り札を使うのはおかしいかもしれないが、一応本気を出していないと言えるだろう」
「「「「「…………」」」」」
クールな新米騎士の言葉に対し、まだそれでもという反論の言葉を返せる者はいなかった。
「俺たちが偶に耳にしていた噂通りの人物なのだろうな」
「…………あぁ~~~~~~~、クソ!!!!! ……お前の言う通りなのかもな」
クール新米騎士の考えに対し、やんちゃ新米騎士は諦めたかのように、それ以上反論することを止め、その通りなのだろうと受け止めた。
彼等にとって、自分とあまり歳の変わらないアラッドが、自分たちが敬意を持つ師であるセルジュと互角に渡り合っているという事実は、中々に気に入らない。
しかし、彼らの騎士としての目的は、ロッテルアンや周辺の村などをモンスターや盗賊から守る事。
悔しさはあれど、彼らは何故自分たちが騎士を志したのかを忘れてはいなかった。
522
あなたにおすすめの小説
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約
Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。
腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。
地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。
彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。
「死んで、私の影になれ」
彼女は知っていた。
この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。
そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。
これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。
凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
毎日の暴行。
さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。
最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。
今までの行いを、後悔させてあげる--
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる