スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai

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千三十話 似ている

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いきなり訓練場に現れた若者が発する戦意に……同じく若者である新米騎士、騎士候補の者たちは後退りした。

(な、なんだあの男は)

(我々と同じ、騎士……ではない)

(スティーム様の、隣にいるということは……スティーム様の、ご友人?)

(待てよ。今、あの男……アラッドと、名乗ったか?)

カチコミかと思い、後退りをしながらも木剣や木槍を強く握りしめるも、一部の者たちはアラッドと名乗った人物がいったいどういう者なのかを思い出した。

スティームからラヴェスに定期的に手紙を送られてきており、途中からその手紙にはアラッドという名前が記されるようになった。
そうなれば、当然ラヴェスがそのアラッドについて他の者と話し、その話を聞いた者がまた別の者に話し……といった具合に、徐々に徐々に広まっていく。

高等部の一年生が、学生最強の三年生をトーナメントの決勝戦で倒した。
冒険者になって直ぐに複数のBランクモンスターやAランクモンスターを討伐した等々……調べてみると、そういった信じられない情報は耳に入る。

多くの新米騎士、騎士候補の者たちがその話を疑っていた。
だが……実際にそのアラッドが現れ、零した戦意を受け……彼等は引いてしまった。
それは、間違いない事実だった。

「初めまして、アラッド君。既に説明は受けているかもしれないが、私がセルジュだ。よろしく」

「えぇ、よろしくお願いします」

年齢は一応三十代後半ではあるものの、優顔フェイスはまだ二十代でも十分通じる。
ただ、アラッドが気になったのはそこではない。

(……拳に握り的に、おそらく体技もそれなりに使えるだろうな)

アラッドに「お前なんぞがスティーム様と……」といった怨念をぶつけるが如く、握手する際に拳を強く握りしめることなどなかった。

それでも、握った拳の感触から、アラッドは自分に近しい戦闘スタイルを持っているのではと感じ取った。

「先程まで昼食を食べていたと聞きいたけど、本当に今すぐで良いのかな」

「えぇ。そちらも条件は同じだと思うので」

「ふふ、そうか……では、早速戦ろうか」

新米騎士たちは端に移動し、頑丈な木剣を持ったアラッドとセルジュが中心に並ぶ。

今回の戦いは、一応建前はラヴェスが息子であるスティームをアラッドに任せられるか否かを確認するだけ。
そのため、基本的に決着を付ける必要はない。

「では、お手並み拝見といかせてもらおうかな」

そう告げると、セルジュは殆ど足音を立てずに接近。

「フッ!!」

「っ!! シッ!!!!」

アラッドは鋭い突きに反応して回避。
袈裟斬りで反撃するが、セルジュも慌てることなく冷静に回避し、そのまま剣戟は続行。

王都で騎士たちと手合わせする際は約三十秒ほど相手の攻撃を耐え続けたが、今回は特に訓練といった側面もないため、わざわざ相手の攻撃を耐え続ける必要はない。

ただただ……握手をした瞬間に強いと感じた強者との剣戟を楽しむ。




「ね、ねぇ……セルジュさん、まだ……本気じゃないよな」

「ば、バカ。セルジュさんが本気なら、速攻で終わってるだろ」

「だよ、ね…………でも、あのアラッドって人……笑ってるような」

「あぁ……確かに笑っているな」

「あまりにも限界で、無意識に笑ってるとかじゃなくてか?」

「そういった状況で笑みが零れることもあるだろうが、あの笑みは…………そうは見えない」

壁端でアラッドとセルジュの戦いを観戦している新米騎士や候補生たちは、二人の戦いに釘付けになっていた。

「そは見えないって事は、あのアラッドって冒険者は……セルジュさんとの戦いを、楽しんでるから笑ってるってことかよ」

「…………そうなのだろうな」

新米騎士たちの中でも、一番実力が高いクールな男が、中々アラッドのことが認められないやんちゃ男の言葉を肯定。

多くの者が驚く中、まだ数名……諸々と納得出来ない者がいた。

「つってもよ、やっぱセルジュさんは本気を出してない訳だしよ」

「それはそうだろうな。ただ、スティーム様の友人であるアラッドという冒険者も本気を出していない筈だ」

「……そりゃあ、笑ってるからか」

「噂では、あの男の切り札は狂化らしい。まぁ、そもそもただの試合……いや、手合せか? それだけで切り札を使うのはおかしいかもしれないが、一応本気を出していないと言えるだろう」

「「「「「…………」」」」」

クールな新米騎士の言葉に対し、まだそれでもという反論の言葉を返せる者はいなかった。

「俺たちが偶に耳にしていた噂通りの人物なのだろうな」

「…………あぁ~~~~~~~、クソ!!!!! ……お前の言う通りなのかもな」

クール新米騎士の考えに対し、やんちゃ新米騎士は諦めたかのように、それ以上反論することを止め、その通りなのだろうと受け止めた。

彼等にとって、自分とあまり歳の変わらないアラッドが、自分たちが敬意を持つ師であるセルジュと互角に渡り合っているという事実は、中々に気に入らない。

しかし、彼らの騎士としての目的は、ロッテルアンや周辺の村などをモンスターや盗賊から守る事。
悔しさはあれど、彼らは何故自分たちが騎士を志したのかを忘れてはいなかった。
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