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第214話 ないものねだり
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「ブバァアアアっ!!!!」
「フッ!!!」
木製の棍棒を振り下ろすオーク。
その攻撃を軽やかに躱し、鋭い一閃を放つイブキ。
刀による斬撃は抵抗なくオークの首を切断した。
「ありがとう、イブキ。でも、僕も戦うよ」
「いや、ガルフはミノタウロスと遭遇するまで体力を温存しておいた方が良い。勿論、状況によっては参戦してほしいけど、ミノタウロス戦でタンクを務めるなら、体力が重要になるはず」
「で、でも、任せっぱなしは」
「良いじゃん良いじゃん、お言葉に甘えとけってガルフ」
四人の中で、一撃の殺傷能力が一番高いのは、間違いなくイブキ。
人型であれば、首を切断すればそれで終わり。
人型でなくとも、頭部とそれ以外を切断すれば問題無い。
それはイブキ以外の四人も同じだが、一番正確に……一刀両断出来る実力を持つのはイブキだった。
「とりあえず、昼飯が手に入ったことを喜ぼうぜ」
イシュドの実家に滞在している間に何度もモンスターと戦っており、その際に解体に関する体験も行っていた四人は素早くオークの肉を解体した。
「にしても、さっき解体したオーク……ちょっと飢えてたか?」
「……発情的な雰囲気は見えなかったが」
「そっちじゃねぇ。オークだからそれもあるだろうけど、単純にあんま飯が食えてねぇんじゃないかって話だ」
三人は先程解体したオークがまだ生きていた時の様子を振り返り……なんとなく、そういった表情、雰囲気だったなと思い出した。
「オークが目の前にイブキみたいな人がいたら、まずは食欲より性欲だろうね」
「だろだろ。けど、あのオークは斬り掛かったのがイブキだったのに、普通に殺そうとしただろ」
「あれは……イブキさんにとっては、珍しかったのかな?」
「…………そうですね。一瞬たりとも、性的な視線を向けられてるとは感じませんでした」
これまでの経験から、イブキはオークと遭遇した瞬間は大なり小なり差はあれど、まずは性的な視線を向けられていた。
だが、今回遭遇したオークはそういった視線を向ける事は一切なく、目の前の人間たちを殺して食べることしか考えていなかった。
「ここ最近、全く何も食べてなかったのかな」
「さぁな。食ってはいたけど、満足に食えてなかったって可能性もあるかもしれねぇ。まっ、問題はなんでそうなったかだな」
「……ここ最近現れたミノタウロスが原因、と考えるのはちょっと安直かな」
普通なら、王子であるアドレアスの意見を否定する者はいない。
しかし、ここには戦闘、依頼に関して立場を持ち込む者はおらず、全員正直な考えを口にした。
「直近の原因って考えれば、それしかなさそうだな」
「そうですね。毒や何かしらの病気? が蔓延していれば、もっとこう……普通ではない空気が漂っているかと」
「ミノタウロスが森を支配してるのかもしれませんね」
「うっげ。ガルフ、それってミノタウロスが割と頭が回る個体ってことか?」
「そこまでは解らないよ。もしかしたら、通常の個体以上に食べるから、他のモンスターが食べられる食料が少ないのかもしれないし」
「そっちである事を祈るぜ~~」
しかし、よく食べる個体は、それはそれでどうなのか。
そんな事を考え始めるフィリップだったが、面倒なことしか思い浮かばないため、一旦考えることを止めた。
「他のモンスターも飢えを感じているとなれば、攻撃は直線的になるでしょう。それなら、対処しやすくて有難いですね」
人間という食料を発見しても、まずは殺さなければならない。
Dランクのオークや、Cランクモンスターであれば、ただ倒そうと……殺そうとするだけでは、ざっと数十体ほどいなければ可能性が生まれない。
どう殺すかを考えなければ可能性すら生まれないため、思考や動きが単調になれば、イブキにとって非常に楽な戦いとなる。
「仮にモンスターや果実をよく食べる個体であれば、後々レブラの食糧問題などに繋がりそうだね」
「そりゃまたクソ面倒な問題だな。俺らに出来ることはなんもねぇけど」
フィリップの言葉に反論する者は誰もいなかった。
四人はミノタウロスの探索、そして討伐に関して手抜きをするつもりは欠片もない。
だが、探索初日である今日発見し、そのまま討伐を始められるかは分からない。
出来ることがあるとすれば……初日で発見し、討伐することが難しいことは重々承知しているが、それでも一日でも早く討伐しようという気持ちを抱き、行動するしかない。
「こんな時、獣人族の奴らが羨ましいぜ」
「彼等の大多数は鼻が利くからね。しかし、ミノタウロスに遭遇したことがなければ、匂いで探し出すのは難しくないかい?」
「それなら逆算? すりゃ良いじゃねぇか。嗅いだことがない匂いの主が、ミノタウロスかもしれねぇだろ」
「なるほど。そういうやり方もあるか」
獣系のモンスターにもそれぞれ別の匂いを持つ。
しかし、大前提として獣系モンスターは獣臭という特徴的な匂いを持っている。
鼻が利く獣人族は基本的に前日に大雨などが降って匂いが消えていなければ、その匂いを感じ取ることが出来る。
「そう考えっと、嗅覚が向上するマジックアイテムでも買ってれば良かったか?」
身体能力を向上させる系マジックアイテムの中でも、嗅覚上昇のマジックアイテムはそこまで高くはない。
ただ、フィリップたちの中に斥候職の者はいない。
そういった真似が出来なくもない者でいえばフィリップだが、あくまで素質の話。
特に将来冒険者になる予定がないため、そこら辺の技術は特に会得していなかった。
「そこまで気にしなくもいいのではないですか? 強い存在は、ある程度気配で解ります。そして、そういった存在は私たちに怯えて逃げることはないかと」
「……まぁ、ユニコーンとかじゃねぇんだし、数日も探索すれば見つけられるか」
勿論、真面目にミノタウロスを探し、ぶっ殺すつもりではあるものの、肩の力を入れ過ぎのも良くない。
その後も四人はモンスターと遭遇しては討伐、そして探索を繰り返し……結局運良く初日に終わらせることは出来なかった。
「フッ!!!」
木製の棍棒を振り下ろすオーク。
その攻撃を軽やかに躱し、鋭い一閃を放つイブキ。
刀による斬撃は抵抗なくオークの首を切断した。
「ありがとう、イブキ。でも、僕も戦うよ」
「いや、ガルフはミノタウロスと遭遇するまで体力を温存しておいた方が良い。勿論、状況によっては参戦してほしいけど、ミノタウロス戦でタンクを務めるなら、体力が重要になるはず」
「で、でも、任せっぱなしは」
「良いじゃん良いじゃん、お言葉に甘えとけってガルフ」
四人の中で、一撃の殺傷能力が一番高いのは、間違いなくイブキ。
人型であれば、首を切断すればそれで終わり。
人型でなくとも、頭部とそれ以外を切断すれば問題無い。
それはイブキ以外の四人も同じだが、一番正確に……一刀両断出来る実力を持つのはイブキだった。
「とりあえず、昼飯が手に入ったことを喜ぼうぜ」
イシュドの実家に滞在している間に何度もモンスターと戦っており、その際に解体に関する体験も行っていた四人は素早くオークの肉を解体した。
「にしても、さっき解体したオーク……ちょっと飢えてたか?」
「……発情的な雰囲気は見えなかったが」
「そっちじゃねぇ。オークだからそれもあるだろうけど、単純にあんま飯が食えてねぇんじゃないかって話だ」
三人は先程解体したオークがまだ生きていた時の様子を振り返り……なんとなく、そういった表情、雰囲気だったなと思い出した。
「オークが目の前にイブキみたいな人がいたら、まずは食欲より性欲だろうね」
「だろだろ。けど、あのオークは斬り掛かったのがイブキだったのに、普通に殺そうとしただろ」
「あれは……イブキさんにとっては、珍しかったのかな?」
「…………そうですね。一瞬たりとも、性的な視線を向けられてるとは感じませんでした」
これまでの経験から、イブキはオークと遭遇した瞬間は大なり小なり差はあれど、まずは性的な視線を向けられていた。
だが、今回遭遇したオークはそういった視線を向ける事は一切なく、目の前の人間たちを殺して食べることしか考えていなかった。
「ここ最近、全く何も食べてなかったのかな」
「さぁな。食ってはいたけど、満足に食えてなかったって可能性もあるかもしれねぇ。まっ、問題はなんでそうなったかだな」
「……ここ最近現れたミノタウロスが原因、と考えるのはちょっと安直かな」
普通なら、王子であるアドレアスの意見を否定する者はいない。
しかし、ここには戦闘、依頼に関して立場を持ち込む者はおらず、全員正直な考えを口にした。
「直近の原因って考えれば、それしかなさそうだな」
「そうですね。毒や何かしらの病気? が蔓延していれば、もっとこう……普通ではない空気が漂っているかと」
「ミノタウロスが森を支配してるのかもしれませんね」
「うっげ。ガルフ、それってミノタウロスが割と頭が回る個体ってことか?」
「そこまでは解らないよ。もしかしたら、通常の個体以上に食べるから、他のモンスターが食べられる食料が少ないのかもしれないし」
「そっちである事を祈るぜ~~」
しかし、よく食べる個体は、それはそれでどうなのか。
そんな事を考え始めるフィリップだったが、面倒なことしか思い浮かばないため、一旦考えることを止めた。
「他のモンスターも飢えを感じているとなれば、攻撃は直線的になるでしょう。それなら、対処しやすくて有難いですね」
人間という食料を発見しても、まずは殺さなければならない。
Dランクのオークや、Cランクモンスターであれば、ただ倒そうと……殺そうとするだけでは、ざっと数十体ほどいなければ可能性が生まれない。
どう殺すかを考えなければ可能性すら生まれないため、思考や動きが単調になれば、イブキにとって非常に楽な戦いとなる。
「仮にモンスターや果実をよく食べる個体であれば、後々レブラの食糧問題などに繋がりそうだね」
「そりゃまたクソ面倒な問題だな。俺らに出来ることはなんもねぇけど」
フィリップの言葉に反論する者は誰もいなかった。
四人はミノタウロスの探索、そして討伐に関して手抜きをするつもりは欠片もない。
だが、探索初日である今日発見し、そのまま討伐を始められるかは分からない。
出来ることがあるとすれば……初日で発見し、討伐することが難しいことは重々承知しているが、それでも一日でも早く討伐しようという気持ちを抱き、行動するしかない。
「こんな時、獣人族の奴らが羨ましいぜ」
「彼等の大多数は鼻が利くからね。しかし、ミノタウロスに遭遇したことがなければ、匂いで探し出すのは難しくないかい?」
「それなら逆算? すりゃ良いじゃねぇか。嗅いだことがない匂いの主が、ミノタウロスかもしれねぇだろ」
「なるほど。そういうやり方もあるか」
獣系のモンスターにもそれぞれ別の匂いを持つ。
しかし、大前提として獣系モンスターは獣臭という特徴的な匂いを持っている。
鼻が利く獣人族は基本的に前日に大雨などが降って匂いが消えていなければ、その匂いを感じ取ることが出来る。
「そう考えっと、嗅覚が向上するマジックアイテムでも買ってれば良かったか?」
身体能力を向上させる系マジックアイテムの中でも、嗅覚上昇のマジックアイテムはそこまで高くはない。
ただ、フィリップたちの中に斥候職の者はいない。
そういった真似が出来なくもない者でいえばフィリップだが、あくまで素質の話。
特に将来冒険者になる予定がないため、そこら辺の技術は特に会得していなかった。
「そこまで気にしなくもいいのではないですか? 強い存在は、ある程度気配で解ります。そして、そういった存在は私たちに怯えて逃げることはないかと」
「……まぁ、ユニコーンとかじゃねぇんだし、数日も探索すれば見つけられるか」
勿論、真面目にミノタウロスを探し、ぶっ殺すつもりではあるものの、肩の力を入れ過ぎのも良くない。
その後も四人はモンスターと遭遇しては討伐、そして探索を繰り返し……結局運良く初日に終わらせることは出来なかった。
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