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少年期[361]謝罪と礼

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夕食を終え、ゼルート達が部屋へ戻ってから約二時間半後に宿の従業員からゼルート達に客が来たと連絡を受ける。

夕食を終えて少しリラックス出来ていたゼルートにはその客が誰か分らなかったが、その名前を聞いた瞬間にその客が何故自分達の所に来たのかも理解出来た。

「えっと・・・・・・お久しぶりですグレイスさん、コーネリアさん」

ゼルート達の目の前にいるのはダンとミルシェの両親であるグレイスとコーネリアだった。
二人の表情は真剣そのものであり、それがより一層これからどんな話をするのか確信が得られる。

「ああ、ゼルートに会うのはゴブリンとオークの群れの討伐依頼だな。それで、今日急に会いに来た訳なんだが・・・・・・まずは先に言わせてほしい」

言葉を途切れさせ、二人は座っていた椅子から立ち上がり勢いよく体を九十度に折ってゼルート達に謝罪と礼を述べた。

「今回俺達の馬鹿息子が迷惑を掛けて本当に済まない!!!」

「それと・・・・・・あの子を助けてくれて本当に有難うございます!!!」

内容はダンがオルトロスを相手に勝手に飛び出し、生徒達を危険に晒す様な真似をした事に対しての謝罪。
そして勝手に突っ込んだのにも関わらず一蹴されて折れた肋骨の骨を治すために態々自身達のポーションを使った事に対しての例だった。

「・・・・・・謝罪と礼は受け取ります。だから頭を上げてください」

何時ものゼルートならば冒険者のランクが上で両親のかつての仲間である二人に謝罪をすれば慌てて頭を上げてくれと頼むところだが・・・・・・今回は素直に謝罪と礼を受け取った。

頭を上げ、再び椅子に座った二人は静かに話し出す。

「あの馬鹿には俺達から耳にタコができるほど説教をした。鉄拳は勿論喰らわせた」

二人からの鉄拳制裁。
グレイスからの鉄拳は勿論その鉄拳をだろうが、コーネリアの場合はその拳では無く杖による一撃なのではと思ったゼルートは背中をブルッと震えた。

「あいつも今回の愚行には流石に自分の行動が全て悪かったと反省してるようだが、その反省だけでは足りないのは明白だからな」

ダンが依頼中には無かったが、同姓だいや歳が近い者達と一時的にパーティーを組んだ時に遭遇した魔物相手に突っ込む事は珍しくない。
しかし頭と心が両方とも熱くなっての行動では無く、少なくとも頭はクールな状態であり組んだ同業者が何を出来るか把握しており何をどうしてくれて伝えてから突っ込む。

なので一緒に組んだ同業者達もダンの突撃に苦言を物申す者はいない。
同業者に倒したい魔物に対して考えがある場合はそれに従っていた。

だが今回の一件はそういった考えも無く、自身が高ランクの魔物を単独で倒す。
それ以外にもこのモンスターがもし街に襲撃してきたらマズい。そういった考えが無かった訳では無いが。
それでも俺にだってゼルートと同じように高ランクのモンスターを倒す事が出来る、それを証明したかった。
その思いが大半を占めていたのは事実。

「これからはギルド職員からの講習を受けさせ、その後にギルドからあいつが出来る範囲での無償依頼を三か月の間受けてもらうつもりだ。それから冒険者を続けるか続けないかは・・・・・・あいつの心情次第だ」

ダンがまだ冒険者として続けたいと思っているならば続ける事に口は出さない。
しかし次にダンが勝手な行動を起こし、周囲に迷惑をかけるような行動を起こした場合、二人は責任を一緒に背負うような事はしないと決めている。

「無償依頼・・・・・・それは依頼で問題を起こしてしまった冒険者に対しての救済処置みたいな物ですか?」

「そういった認識よ。今回はルウナさんとゲイルさんがその場にいたから生徒達には危害が無かった。そのお陰でダンに対する依頼主からの損害賠償金は発生しなかったの。まぁ・・・・・・そんなのは私達の冒険者としての心が許さないのだけれどね」

その一言で二人が今回の依頼主である学園に、今回の演習の責任者であるボウドに賠償金の代わりとなる物を渡した確信したゼルート達。

「それと、ルウナさんには迷惑を掛けるかもしれないけど、今回の護衛依頼からダンを外させてもらいます。申し訳ございません」

「うむ。ダンの分まで私が頑張ろう。それでいいのだろうゼルート」

「基本的にはな」

護衛の人数が一つ増える。それを補うとなると容易な事では無いのだがルウナは当然の様に自分がその穴を補うと宣言した。

だが二人の話はまだ終わっておらず、ルウナの宣言に苦笑いしながらコーネリアが続ける。

「代わりと言ってはなんですが、その穴に私が入らせて貰います」

「俺も必要ないとは思うがゼルートが護衛に参加しているチームに入らせて貰う」

二人が護衛に参加するという話を聞いたゼルート達は今までの流れからすれば可笑しな事では無いだろうが、それでも過剰護衛かもしれないと思わずにはいられなかった。
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