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兄の物語[69]迷惑はかけてないからオッケー?
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「二人共、もう二日酔いは大丈夫か?」
クライレットがからかうように声を掛けると、ペトラは少しばつが悪そうに答えた。
「えぇ、大丈夫よ……はぁ~~~~。酒に呑まれたのはいつぶりかしら」
「はっはっは!!!! 別に良いじゃねぇか! 冒険者なんだから、酒に呑まれるなんて別に珍しいことじゃねぇだろ」
バルガスの言う通り、冒険者が酒に呑まれることは決して珍しくはない。
それはペトラも理解はしているが、それはそれでこれはこれであった。
「良くないに決まってるでしょ」
「んでだよ? だってあれだぜ、別に俺ら誰かに迷惑を掛けたわけじゃねぇじゃん」
「それは…………確かにそうね」
誰かに迷惑を掛けてない。
大量にエールを呑んで料理を食ってしてる時は、いつもよりも声が大きくなっていたかもしれない。
しかし、酒場では静かに呑み食いしてる者の方が少ない。
つまり……先日、バルガスたちは誰にも迷惑を掛けていない。
翌日は二日酔いで潰れてしまっていたが、その日のうちに達成しなければならない何かがあったわけでもない。
「あら、珍しくバルガスがペトラに勝ったね」
「ぃよっしゃ!!」
「何喜んでるのよ……全く」
「ふふ、別に良いじゃないか、ペトラ。これから大きな仕事をするんだ。テンションは少し高いぐらいが丁度良い」
「……それもそうね」
一応期限はないが、クライレットたちはギルドから依頼されたアインツワイバーンを討伐する為に、ドーウルスから違う街に出発していた。
アインツワイバーンはドーウルス周辺の森で確認されたわけではなく、別の街の森で姿が何度か確認されていた。
ドーウルス周辺でないのであれば、最寄りの街でなんとかすれば良いんじゃないかと思うかもしれないが、標的がBランク……しかも空を飛ぶ魔物となれば、そう簡単にはいかない。
その街に領主としても、高い実力を持つ冒険者たちが多く滞在しているドーウルスの冒険者ギルドに頼むのが最適だと判断した。
「つかさ、アインツワイバーンとどう戦うか考えてなかったよな。今からでも考えておくか?」
「良いね。それで、言い出しっぺのバルガスは何か良い案があったりするの」
「特にねぇな!!!!」
自信満々に答えるバルガス。
そんな彼に向かって、三人はいつもの事なので呆れるだけで、暴言が飛ぶことはなかった。
「だよね~~。えっと、一匹狼なワイバーンで、他のワイバーンと比べて全体的に強い。ブレスや火球よりも物理攻撃が得意なんだっけ?」
「加えて、通常のワイバーンよりも加速力が数段上」
「加速力がえぐい、ねぇ……そうなると、タックルが来た時に俺が受け止めるってのはなしか」
「当然でしょ。そもそもアインツワイバーンが突っ込んでくる場合、ただのタックルじゃなくて爪撃か噛み付きのどちらかが繰り出されるはずよ」
バルガスはパーティーの中でも頑丈な方だが、Bランク魔物の攻撃を真正面から食らった場合……堪え切れるかは、賭けになってしまう。
そんな方法、アインツワイバーンがかなり披露している状態でなければ、ペトラは絶対に了承できない。
「バルガス~~、そういうのは基本的に私の役割だよ」
「はっはっは! すまんすまん、忘れてた。でもよ、元がワイバーンなんだから、基本的に飛び続けてるだろ。って考えると、アインツワイバーンの動きを少しでも抑えられる盾? がいた方が良いんじゃねぇかと思ってよ」
バカそうに見えて、全く考えていないわけじゃないのがバルガス。
一理なくもない考えではあるが、フローラとしては一先ず却下。
「そうかもしれないけど、バルガスが盾として参加するのは終盤戦かな。そういう役割は、基本的に私に任せてよ」
「……そうなるわね。それじゃあ、私のメインの仕事はアインツワイバーンが放つブレスや火球の対処。もしくは発射するタイミングを潰すことね」
使用する機会は全体的に少ないものの、口から発射できる火の攻撃は、アインツワイバーンにとって確かな武器だった。
クライレットがからかうように声を掛けると、ペトラは少しばつが悪そうに答えた。
「えぇ、大丈夫よ……はぁ~~~~。酒に呑まれたのはいつぶりかしら」
「はっはっは!!!! 別に良いじゃねぇか! 冒険者なんだから、酒に呑まれるなんて別に珍しいことじゃねぇだろ」
バルガスの言う通り、冒険者が酒に呑まれることは決して珍しくはない。
それはペトラも理解はしているが、それはそれでこれはこれであった。
「良くないに決まってるでしょ」
「んでだよ? だってあれだぜ、別に俺ら誰かに迷惑を掛けたわけじゃねぇじゃん」
「それは…………確かにそうね」
誰かに迷惑を掛けてない。
大量にエールを呑んで料理を食ってしてる時は、いつもよりも声が大きくなっていたかもしれない。
しかし、酒場では静かに呑み食いしてる者の方が少ない。
つまり……先日、バルガスたちは誰にも迷惑を掛けていない。
翌日は二日酔いで潰れてしまっていたが、その日のうちに達成しなければならない何かがあったわけでもない。
「あら、珍しくバルガスがペトラに勝ったね」
「ぃよっしゃ!!」
「何喜んでるのよ……全く」
「ふふ、別に良いじゃないか、ペトラ。これから大きな仕事をするんだ。テンションは少し高いぐらいが丁度良い」
「……それもそうね」
一応期限はないが、クライレットたちはギルドから依頼されたアインツワイバーンを討伐する為に、ドーウルスから違う街に出発していた。
アインツワイバーンはドーウルス周辺の森で確認されたわけではなく、別の街の森で姿が何度か確認されていた。
ドーウルス周辺でないのであれば、最寄りの街でなんとかすれば良いんじゃないかと思うかもしれないが、標的がBランク……しかも空を飛ぶ魔物となれば、そう簡単にはいかない。
その街に領主としても、高い実力を持つ冒険者たちが多く滞在しているドーウルスの冒険者ギルドに頼むのが最適だと判断した。
「つかさ、アインツワイバーンとどう戦うか考えてなかったよな。今からでも考えておくか?」
「良いね。それで、言い出しっぺのバルガスは何か良い案があったりするの」
「特にねぇな!!!!」
自信満々に答えるバルガス。
そんな彼に向かって、三人はいつもの事なので呆れるだけで、暴言が飛ぶことはなかった。
「だよね~~。えっと、一匹狼なワイバーンで、他のワイバーンと比べて全体的に強い。ブレスや火球よりも物理攻撃が得意なんだっけ?」
「加えて、通常のワイバーンよりも加速力が数段上」
「加速力がえぐい、ねぇ……そうなると、タックルが来た時に俺が受け止めるってのはなしか」
「当然でしょ。そもそもアインツワイバーンが突っ込んでくる場合、ただのタックルじゃなくて爪撃か噛み付きのどちらかが繰り出されるはずよ」
バルガスはパーティーの中でも頑丈な方だが、Bランク魔物の攻撃を真正面から食らった場合……堪え切れるかは、賭けになってしまう。
そんな方法、アインツワイバーンがかなり披露している状態でなければ、ペトラは絶対に了承できない。
「バルガス~~、そういうのは基本的に私の役割だよ」
「はっはっは! すまんすまん、忘れてた。でもよ、元がワイバーンなんだから、基本的に飛び続けてるだろ。って考えると、アインツワイバーンの動きを少しでも抑えられる盾? がいた方が良いんじゃねぇかと思ってよ」
バカそうに見えて、全く考えていないわけじゃないのがバルガス。
一理なくもない考えではあるが、フローラとしては一先ず却下。
「そうかもしれないけど、バルガスが盾として参加するのは終盤戦かな。そういう役割は、基本的に私に任せてよ」
「……そうなるわね。それじゃあ、私のメインの仕事はアインツワイバーンが放つブレスや火球の対処。もしくは発射するタイミングを潰すことね」
使用する機会は全体的に少ないものの、口から発射できる火の攻撃は、アインツワイバーンにとって確かな武器だった。
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