執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai

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第84話 隠れ家?

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「こ、これが……」

「是非、お試しください」

堅苦しい話を終えた後、ルチアも含めて訓練を行い……夕食を食べ終えてから数時間後、現在アルフォンス……ではなく、初老執事のゴルドがアブルシオ辺境伯家の厨房に訪れていた。

彼の目の前にあるのは、豚骨スープのラーメン。
ラーメンという新しい料理に関しては、ゴルドも認知しており、既に食べた経験があった。

だが、目の前にある豚骨ラーメンから漂う匂いは……これまで嗅いできたどの香よりも、食欲という欲求を刺激すしてきた。

「う、うむ。頂こうか」

バトムスとしては、知られたら……もしかしたら不味いことになるかもしれない、そう思っていたが、何だかんだでアルフォンスに豚骨ラーメンを食べさせたかった。

「っ!! ……っ…………っ!!!!!」

そのため、まずは現在共に行動している執事のゴルドに確認してもらおうと、試食をしてもらった。
そう……試食である。

だが、一口食べ終えた後……もう、ゴルドの食事の手は止まらなかった。
出来立てほやほやであるため、一気に食べるには熱い。
しかしゴルドはその熱さを一切気にすることなく喉に流し込んでいき……あっという間に食べ終わってしまった。

「…………とても、美味だった。こう…………よろしくない言い方なのは解かっていますが、悪魔的な……美味しさでした」

まだこの世界には何時にご飯を食べた方が良い、あまり間食はしない方がいいなど、これといった健康に関する知識はない。

ただ、ゴルドはあまり夕食以降にがっつりと料理を食べることは良して押しておらず、食べるとしても……ワインのつまみ程度の物。
にもかかわらず、あっという間に一杯の豚骨ラーメンを食べ終えてしまった。

「褒めてもらえて良かったです。ねっ、クローゼルさん」

「あぁ、そうだな」

「……この豚骨スープというのは、バトムス君が考えたのですかな」

「えっと……まぁ、その……内緒でお願いします」

「えぇ、勿論。して、今現在このスープが広まっていないのは、やはりこの匂いが要因でしょうか」

ゴルドの問いに、バトムスは苦笑いを浮かべながら頷いた。

ゴルドとしては……ナイス判断だと褒めたい。
なんなら、豚骨スープを作り上げてしまった時点で、直ぐに公表しようとしなかったことも称賛したい。

「…………バトムス君。まず、私に試食という形でお伝えいただきありがとうございます」

「ど、どうも」

アルフォンスはバトムスのことを非常に快く思っており……友人どころか、親友だとすら思っていた。

そんな親友が考えた料理を食べてほしいと言われれば、とりあえず食べてみようという気になってしまう。
ゴルドとしては、アルフォンスにそういった友人ができたことは、非常に嬉しい。

ただ……この悪魔的な美味さ、誘惑さを持つ料理に関しては、また別問題であった。

(…………この匂いを考えれば、無し……一択。しかし……しかしっ…………)

ゴルドはバトムスに伝えた通り、本当に目の前の料理が美味いと感じたのは事実。
そんな絶品の料理を……自分だけが堪能しても良いのかという悩みがゴルドに頭に浮かんでいた。

「…………バトムス君は、この豚骨スープを……世に知られても構わないとは、思っているのですか」

「そうですね。匂いはこの通りヤバいですけど、美味しいんで……ほんの少し、自分たちだけで独占するのもなっていう」

「そうですか……」

「その、もし王都とかで販売するなら、えっと……歓楽街でしたっけ? あぁいった場所の隅っこで数店舗だけ構えるとか、どうでしょうか」

「なるほど。貴族や豪商たちの御用達ラーメン店と」

染みついた匂いに関しては、マジックアイテムを使用すれば実際のところどうにか出来なくはない。
そして豪商や貴族……王族であれば、そういったマジックアイテムを用意するのは難しくない。

店も外見だけボロく店、中は整え……漏れ出す匂いは、店を作る際に中の構造に錬金術師たちが手を加えれば、豚骨どころか他のスープの匂いも零れないようにすることが出来る。

「………………バトムス君、クローゼルさん。これは前払いです」

前払い。
そう言いながら、ゴルドは懐から二枚の白金貨を取り出した。

「レシピ代として受け取ってください」

「え、えっと…………ひ、ひとまず国王陛下? に試食してもらって、許可を出すか否かを決める、ということですか?」

「えぇ、その通りです」

国王陛下が美味いと判断しても、商品に加えるのはまずいと判断すれば……王城内だけで、こっそりと食べ続けられるかもしれない。

その為、ゴルドは前払いとして白金貨二枚を払った。
月々、料理の権利だけでどれほど懐に入っているのか……バトムスは偶に確認しており、クローゼルも話を聞いたことがあるため、特に白金貨二枚という現物に驚くことはなく受け取った。

そして約五分後……バトムスとクローゼルの前で、似た様な光景がリプレイされることとなった。
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