現世で死んだ俺は新たな世界へと生まれ変わる途中で邪神に拐われました。ありがとう! 感謝します邪神様っ!

夜夢

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第1章 再誕

08 狩り続行

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 俺の足元には今ピクシーが転がっている。

「騙された。まだレベルの低い話術で、しかも魔物が仲間になるなんてあるわけないじゃないか。こいつら……俺から搾り尽くすつもりだったんだ……!」

 おかしいと思ったのはもう止めろと言っても終わらなかったからだ。こいつらマジ危険。ランクBなだけはある。

「出しすぎたわ……。危うく死ぬ所だった。いやまぁ死なないけどな俺」

 ちなみにピクシーからは【魅了】、【ソナー探知】、【飛行】のスキルを奪う事が出来た。

「ランクが高いのにはそれなりの理由があったんだな。強いからランクが高いってだけじゃないみたいだ。やれやれ、狩りも楽じゃねぇな~……ん? あ、あれは……」

 俺はすぐさま気の陰に身を隠した。 

「【聖浄化】!」
「「「「オォォォォォォ……」」」」

 白いローブに身を包んだ女が同じく白い鎧を着た男達に囲まれながら半透明の魔物を消し去っていた。

「……聖浄化。まさかあれが聖女か? ふむ、周りは護衛の兵といったところか」

 聖女がふぅっと息を吐き杖を下ろす。すると周りの男達から歓声が上がった。  

「さすが聖女様!」
「あの数のハイゴーストを一瞬で消し去るなど!」
「素晴らしい信仰心です! 聖女様!」

 聖女はウンザリしたような表情を男達に向けた。

「……うっさいわね。そんな事どうでも良いから早く次のポイントに案内しなさいよ。あんたらがゴーストが出て魔物を狩れないって言うからわざわざこの私が出張ってんのよ? 魔物が狩れなきゃ肉が食えないから仕方なく動いてんの。ほんっと使えないわね」

 俺は微かに笑っていた。  

「あれが聖女だ? めちゃクソ性格わりぃな。あ~あ、男らも表情ひきつってらぁ……」

 男達は怒りを抑えつつも、聖女を次のポイントまで案内し、ゴースト系の魔物を退治してもらっていた。そうして戦う事半日。

「ねぇ、もう良いでしょ? 今日はもう聖浄化使えないし」
「ははっ、これだけポイントを潰して頂ければ後は我々が……」
「全く。ならあんた達はこのまま魔物狩ってきなさい。ああ、そこのあんた。私を街道まで連れていきなさい」
「はっ!」

 絶好の好機だ。どうやら聖女は護衛を一人だけ連れて街道に向かうらしい。殺るなら今しかない。

 俺は先回りしスキル【飛行】で大木の枝に立つ。

「全く、あんたらは信仰心が足りないのよ! ゴーストくらいちゃちゃっと倒しなさいよね!」
「も、申し訳ありません……」
「あ~も~っ! 私は聖女なのよ! なんでこんな薄気味悪い森なんかに来なきゃならないのっ!」
「も、申し訳ありません……」
「それしか言えないのっ! あ~もうっ! ほんっと使えないわね!」

 俺は若干男が可哀想に思えてきた。

「ま、可哀想だがこれも運命。聖女と一緒に死んでくれ。魔技【蜘蛛の糸】」
「「っ!? うわぁっ!?」」

 俺は大木の上から蜘蛛の糸を使い二人を糸でぐるぐる巻きにし、大木の枝から吊し上げた。二人は地面から一メートルほどの場所でもがいている。ちなみに、騒がれても嫌なので口も塞いでいる。

 俺は【飛行】を使い大木の上から地面へと降り立った。

「んぅぅぅぅっ! んっ! ん~~っ!」
「はいはい、ちっと黙れよ性格わりぃクソ女」
「んんっ!? んぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 聖女は顔を真っ赤にしもがいていた。俺は先に男の方へと向かう。

「んぅぅぅぅっ!」
「お前もツイてないな。あんなクソ女の巻き添えで死ぬなんてよ」
「うっ!? んぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」

 俺の剣は男の右足を貫いた。

「あぁ、そう騒ぐなよ。……興奮しちまうだろう?」
「んぅぅぅぅっ! んっうぅぅぅぅぅっ!」
「はいはい、可哀想だからさっさと痛みから解放してやるよ。じゃあな、不幸な騎士」
「んぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ……!」

 男の声はそこで途切れた。首は地面に転がり、身体は蜘蛛の糸で吊るされたままゆらゆらと揺れている。

《レベルアップ。ジェイドのレベルは25に上がりました》
《スキル【邪眼】の効果により、相手からスキル【剣術】を奪いました》

 やはり人間を狩るとレベルの上がりが早い。しかも今の男は中々レベルが高かったようだ。いやぁ、ありがたい。

「これでレベル25か。さて、クソ女のレベルは……。くくっ、24か。さぁて、どうやって殺すか……」
「んうぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」

 俺の剣先が聖女の頬に触れる。軽く引いてやると、聖女の頬から鮮血が垂れた。

「んぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」
「あぁ……! その怯えた目! 最高じゃないか!」
「んっ! んぅぅぅぅぅぅっ!」

 俺はどうしても聖女の命乞いが聞きたくなり、剣で口元の糸を切り払った。

「あ、あんたっ! 私は聖女なのよっ! 私にこんな事して良いと思って……」
「思ってるよ?」
「なっ!?」

 俺の剣先は聖女の腹に触れている。

「や、やめっ……」
「俺は邪神教徒だ。聖女なんてクソ食らえなんだよ」
「じ、邪神教徒っ! この異端者がぁぁぁぁっ!」
「ひははははっ、異端者か。良いねぇ。さて、お前に一つだけチャンスをやろう」
「チャンス?」
「そうだ。俺は今からお前の腹を割く」
「い、いやぁぁぁっ! そんなの死んじゃうじゃないのっ!」

 俺はニヤリと嗤う。

「ああ、死ぬな。死にたくないか?」
「し、死にたくないっ! なんでもするから助けてっ!」
「なんでもねぇ~」
「そうよっ! なんでもしてあげるわっ! お金が欲しいなら好きなだけあげるし! え、えっちな事したいならした事ないけどが、頑張るから!」
「……どっちもいらねぇよ。お前なんかにそんな価値はねぇよ」
「なっ!? ふ、ふざけるなっ! 私は聖女なのよっ! 私とやりたい奴なんてごまんといるんだからっ!」
「口を開かなきゃだろ。見た目だけの性格ブスじゃんお前。どうせ信者の前では猫被って裏では兵をイジメてんだろ。そんな奴のどこに価値があるんだ。よく考えな、クソ女」

 聖女は怒りのあまり言葉を言えなくなっていた。

「最後に自分が無価値だって気付けて良かったな」
「いやぁ……っ、死にたくないっ……!」

 聖女の足元に液体が滴っている。

「漏らしたのか。汚ねぇなぁ?」
「うぅぅぅぅぅっ!」
「じゃあ最後のチャンスだ。今からお前の腹を割く。あの騎士達の中に治癒が使える奴がいるはずだ」
「……え? な、何故それを……」

 俺は男の死体から鎧を剥ぎ取り兜を被る。

「ま、まさかあんたぁぁぁっ!」
「死にたくなけりゃそいつに治してもらいな。お前に価値があるなら助かるだろうよ。じゃあ……スタートだ」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 俺は聖女の腹を切り裂いた。腹から今にも腸が飛び出そうとしている。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 死ぬっ! 死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」
「あまり叫ぶと中身が出るぜ? まぁ頑張って生きとけや」
「くぅぅぅぅぅぅっ!」

 俺は聖女を置き去りにし、先ほどの騎士達のいる場所へと向かった。

「み、みんな大変だっ! 聖女様がっ!」
「どうした?」
「わ、わからない! いきなり木の上から糸が……!」
「フォレストスパイダーか? いや、もしかしたらジャイアントスパイダーかもしれん! 案内しろ!」
「こっちだ!」

 俺は騎士四人を引き連れ聖女の所へと戻る。

「「「「聖女様っ!?」」」」

 聖女はすでに生き絶えていた。俺は敢えてのんびり騎士達の所へと向かった。おそらく聖女は痛みに耐えきれず叫んだのだろう。切り裂かれた腹からは臓物が飛び出し、足元にあった汚物の上に落ちていた。

「し、死んでる……! 聖女様が……! な、なんと言う事だ!」
「ど、どうするよ! これじゃ俺達処刑モンだぞ!」
「死んでなかったら治せたが……。死んでるなら無理だ……」

 こいつが治癒師か。

「に、逃げよう! 聖地じゃなくても暮らせる場所なら沢山あるはずだ!」
「……そうだな。我々は森で聖女様と共に死んだ。良いな?」
「「「あ、ああっ」」」

 男達はその場で鎧を外し、自分達で鎧を汚し始めた。魔物に殺られたと偽装するつもりだろう。

「これで俺達は破門だな。もう聖神教は名乗れない」
「犯罪者は資格なしになっちまうからな……」
「仕方ないさ。かつての仲間に追われるよりはマシだ」
「……よし、逃げ……あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「「「なっ!? お前何をっ!?」」」

 俺は兜を外し姿を晒した。剣は治癒師の心臓を貫いている。

「だ、誰だお前……!」
「いやぁ~、楽しかったよ。本当なら聖女に命乞いさせたかったんだが、死んじまってちゃ無理だわな。その後のお前ら……中々笑えたぜ」
「き、貴様ぁぁぁぁぁぁっ! 貴様が殺ったのかっ!」
「ああ。俺は邪神教徒だからな。お前らもすぐに聖女の所に送ってやるよ。さあ、俺の糧となるが良い」
「「「うっ……! おぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」

《レベルアップ。ジェイドのレベルは35に上がりました。スキル【邪眼】の効果により、スキル【聖浄化】、【回復術】、【槍術】、【盾術】、【雷撃】を奪いました》

「くくくくっ、順調順調。やはり狩るなら人間だな。そうだ、森でスキルレベルを上げていこう。そしたら四騎士にも負ける事はなくなるはずだ」

 この一団を全て焼却し、俺は再び森の奥へと向かうのであった。 
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