現世で死んだ俺は新たな世界へと生まれ変わる途中で邪神に拐われました。ありがとう! 感謝します邪神様っ!

夜夢

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第4章 シーガロン大陸編

10 商売開始

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 翌日、特に宣伝する事もなく俺の商売がスタートした。ここは郊外だ。人通りも少ない。だが突如として町に現れた建物を見て住人達が集まってきた。そこに教会の子供達が声を張り上げてアピールする。

「い、いらっしゃいませーっ! こちらはジェイド家電量販店でーす!」
「今日からオープンでーす! 是非ともお立ち寄りくださーい!」
「こちらでは様々な製品を御用意させてもらってまーす! よろしくお願いしまーす!」

 子供のパワーは侮れない。大人なら無視されるような声掛けも子供がやると大人は立ち止まる。

「家電量販店ってなんだい?」
「はいっ! こちらでは薪の要らない暖房器具やお風呂、食材を長期保存できる冷蔵庫などを御用意してますっ!」
「……な、なんだって? ま、薪の要らない暖房器具!?」
「はいっ! 店内はその暖房器具が稼働して大変暖かくなっております! 是非直にお確かめ下さいっ!」

 気になった町人が店に入る。

「あ、暖かい……!? 薪がないのに暖かいぞ!?」
「「「「いらっしゃいませー!」」」」

 どうやら最初の客がきたようだ。俺はシスターに見学させながら客に話し掛ける。

「いらっしゃいませ。本日はどのような商品を?」
「あ、いや……その。薪が要らない暖房器具があると聞いて……」
「はい、ございますよ。あちらです」

 俺はエアコンを指差した。

「あ、あれが?」
「はい。あれは魔導エアコンです。動力は魔力。魔力さえあれば夏は涼しく、冬は暖かく快適に過ごせるでしょう」
「ま、マジか!?」
「はい。当商店オリジナルの商品となっております」

 町人はエアコンの温風にあたり幸せそうな表情を浮かべている。

「だ、だが……た、高いんだろ? 薪が要らないなんて大革命だ。一般人じゃ買えそうにない」
「そこは御案内下さい。値段が気になるあなたに朗報が。この店は冥王教を支持しておりまして、現在信者を募集しております。一般の方でしたら三万ゴールドの所、今信者になっていただけたら……」
「……ごくり」
「なんと信者特価! 千ゴールドで提供させていただきましょう!」
「な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「さらに! 他の商品も全て信者価格に! 一般家庭でも貴族より快適に暮らせる事間違いなし! 想像してみて下さい。自分の家に風呂がある環境を! 薪が要らないコンロで煙臭くならない料理を! そして暑い夏場にキンッキンに冷えたエールを喉に流し込む自分の姿をっ!」
「お……おぉぉぉぉ……おぉぉぉぉぉぉっ!?」
「この快適な暮らしが! 今冥王教に入会するだけで安価で手に入るのです! 今を逃せばもうチャンスはありませんっ! これは今だけのオープン価格! さあ、どうしますか? 買いますか? それとも……これから訪れる本格的な冬を薪無しで震えながら過ごしますか!」

 まるで悪徳セールスマンだ。相手の弱味につけこみ、さらに信者まで増やそうとしている。

「か、買う! 信者にもなるっ!! ここにある商品全種類を一つずつだ!」
「ありがとうございます。それではあちらで契約を。商品は直接お宅に設置しに参ります。代金のお支払はその時で。ささ、入会のサインを」
「っしゃ!!」

 冥王教の信者が増えた。

「ありがとうございます。では後ほど設置に伺わせて頂きます」
「頼むっ!」

 町人はスキップしながら帰っていった。俺はシスターを見て言う。

「良いか? こうして信者を増やしていくんだ。これで町の人々はよほど金がない限り確実に信者になる」
「な、なんて悪魔的な……! 天才ですね!」
「くくくっ、これから忙しくなるぞ。俺があいつの家に魔導具を設置したら奴は必ず自慢する。そこから町の住民に噂が広がり……俺達はウハウハだ。そして……領主の関係者には絶対に売らない。悔しがる様を笑ってやろうぜ」
「は、はいっ! 頑張りますっ!」

 その日の午後、俺は客の家を訪問し魔導具を設置した。そして各魔導具の使い方を説明する。

「以上が使い方となります」
「本当に魔力だけで動いた……。お、俺の家に風呂ができるだなんて! 薪を買うよりはるかに安く済んだ!」
「全ては信者のために。これが冥王教の教えです。そして冥王教の本流は邪神教。よろしくお願いしますよ?」
「あ、ああっ! もう教会を悪く扱ったりしねえよ。余裕があったら寄付もするし、ミサにも参加する! ありがとう、ありがとうっ!」
「いえいえ。あ、お風呂で使うシャンプーなどもあの店で販売しておりますので、是非またお越し下さい」
「ああっ! 必ず行くよ!」

 その数日後、店は噂を聞き付けた大量の町人で長蛇の列が出来上がった。

「こちら整理券でーす! 二列に並んでお待ちくださーい!」
「次の方どうぞー!」

 あっと言う間に信者が増えていく。これにはハーデスも涙を流し喜んでいた。

「う~、ジェイド……好きっ! なんでもしてあげちゃう!」
「ありがとよ。だがこんなのはまだまだ序の口だ。やがて大陸中から客が殺到してくるだろう。俺の計画はこうだ。シーガロン大陸を冥王教の手に! どうよ、ワクワクするだろう?」
「ジンジンすりゅぅ……っ。今すぐジェイドとしたいっ!」
「くくっ、ようやく信者のありがたみに気付いたようだな。どれ、疼きを解消してやろう」

 こうして、俺のシーガロン大陸侵略がスタートしたのであった。
 
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