80 / 227
第4章 シーガロン大陸編
10 商売開始
しおりを挟む
翌日、特に宣伝する事もなく俺の商売がスタートした。ここは郊外だ。人通りも少ない。だが突如として町に現れた建物を見て住人達が集まってきた。そこに教会の子供達が声を張り上げてアピールする。
「い、いらっしゃいませーっ! こちらはジェイド家電量販店でーす!」
「今日からオープンでーす! 是非ともお立ち寄りくださーい!」
「こちらでは様々な製品を御用意させてもらってまーす! よろしくお願いしまーす!」
子供のパワーは侮れない。大人なら無視されるような声掛けも子供がやると大人は立ち止まる。
「家電量販店ってなんだい?」
「はいっ! こちらでは薪の要らない暖房器具やお風呂、食材を長期保存できる冷蔵庫などを御用意してますっ!」
「……な、なんだって? ま、薪の要らない暖房器具!?」
「はいっ! 店内はその暖房器具が稼働して大変暖かくなっております! 是非直にお確かめ下さいっ!」
気になった町人が店に入る。
「あ、暖かい……!? 薪がないのに暖かいぞ!?」
「「「「いらっしゃいませー!」」」」
どうやら最初の客がきたようだ。俺はシスターに見学させながら客に話し掛ける。
「いらっしゃいませ。本日はどのような商品を?」
「あ、いや……その。薪が要らない暖房器具があると聞いて……」
「はい、ございますよ。あちらです」
俺はエアコンを指差した。
「あ、あれが?」
「はい。あれは魔導エアコンです。動力は魔力。魔力さえあれば夏は涼しく、冬は暖かく快適に過ごせるでしょう」
「ま、マジか!?」
「はい。当商店オリジナルの商品となっております」
町人はエアコンの温風にあたり幸せそうな表情を浮かべている。
「だ、だが……た、高いんだろ? 薪が要らないなんて大革命だ。一般人じゃ買えそうにない」
「そこは御案内下さい。値段が気になるあなたに朗報が。この店は冥王教を支持しておりまして、現在信者を募集しております。一般の方でしたら三万ゴールドの所、今信者になっていただけたら……」
「……ごくり」
「なんと信者特価! 千ゴールドで提供させていただきましょう!」
「な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「さらに! 他の商品も全て信者価格に! 一般家庭でも貴族より快適に暮らせる事間違いなし! 想像してみて下さい。自分の家に風呂がある環境を! 薪が要らないコンロで煙臭くならない料理を! そして暑い夏場にキンッキンに冷えたエールを喉に流し込む自分の姿をっ!」
「お……おぉぉぉぉ……おぉぉぉぉぉぉっ!?」
「この快適な暮らしが! 今冥王教に入会するだけで安価で手に入るのです! 今を逃せばもうチャンスはありませんっ! これは今だけのオープン価格! さあ、どうしますか? 買いますか? それとも……これから訪れる本格的な冬を薪無しで震えながら過ごしますか!」
まるで悪徳セールスマンだ。相手の弱味につけこみ、さらに信者まで増やそうとしている。
「か、買う! 信者にもなるっ!! ここにある商品全種類を一つずつだ!」
「ありがとうございます。それではあちらで契約を。商品は直接お宅に設置しに参ります。代金のお支払はその時で。ささ、入会のサインを」
「っしゃ!!」
冥王教の信者が増えた。
「ありがとうございます。では後ほど設置に伺わせて頂きます」
「頼むっ!」
町人はスキップしながら帰っていった。俺はシスターを見て言う。
「良いか? こうして信者を増やしていくんだ。これで町の人々はよほど金がない限り確実に信者になる」
「な、なんて悪魔的な……! 天才ですね!」
「くくくっ、これから忙しくなるぞ。俺があいつの家に魔導具を設置したら奴は必ず自慢する。そこから町の住民に噂が広がり……俺達はウハウハだ。そして……領主の関係者には絶対に売らない。悔しがる様を笑ってやろうぜ」
「は、はいっ! 頑張りますっ!」
その日の午後、俺は客の家を訪問し魔導具を設置した。そして各魔導具の使い方を説明する。
「以上が使い方となります」
「本当に魔力だけで動いた……。お、俺の家に風呂ができるだなんて! 薪を買うよりはるかに安く済んだ!」
「全ては信者のために。これが冥王教の教えです。そして冥王教の本流は邪神教。よろしくお願いしますよ?」
「あ、ああっ! もう教会を悪く扱ったりしねえよ。余裕があったら寄付もするし、ミサにも参加する! ありがとう、ありがとうっ!」
「いえいえ。あ、お風呂で使うシャンプーなどもあの店で販売しておりますので、是非またお越し下さい」
「ああっ! 必ず行くよ!」
その数日後、店は噂を聞き付けた大量の町人で長蛇の列が出来上がった。
「こちら整理券でーす! 二列に並んでお待ちくださーい!」
「次の方どうぞー!」
あっと言う間に信者が増えていく。これにはハーデスも涙を流し喜んでいた。
「う~、ジェイド……好きっ! なんでもしてあげちゃう!」
「ありがとよ。だがこんなのはまだまだ序の口だ。やがて大陸中から客が殺到してくるだろう。俺の計画はこうだ。シーガロン大陸を冥王教の手に! どうよ、ワクワクするだろう?」
「ジンジンすりゅぅ……っ。今すぐジェイドとしたいっ!」
「くくっ、ようやく信者のありがたみに気付いたようだな。どれ、疼きを解消してやろう」
こうして、俺のシーガロン大陸侵略がスタートしたのであった。
「い、いらっしゃいませーっ! こちらはジェイド家電量販店でーす!」
「今日からオープンでーす! 是非ともお立ち寄りくださーい!」
「こちらでは様々な製品を御用意させてもらってまーす! よろしくお願いしまーす!」
子供のパワーは侮れない。大人なら無視されるような声掛けも子供がやると大人は立ち止まる。
「家電量販店ってなんだい?」
「はいっ! こちらでは薪の要らない暖房器具やお風呂、食材を長期保存できる冷蔵庫などを御用意してますっ!」
「……な、なんだって? ま、薪の要らない暖房器具!?」
「はいっ! 店内はその暖房器具が稼働して大変暖かくなっております! 是非直にお確かめ下さいっ!」
気になった町人が店に入る。
「あ、暖かい……!? 薪がないのに暖かいぞ!?」
「「「「いらっしゃいませー!」」」」
どうやら最初の客がきたようだ。俺はシスターに見学させながら客に話し掛ける。
「いらっしゃいませ。本日はどのような商品を?」
「あ、いや……その。薪が要らない暖房器具があると聞いて……」
「はい、ございますよ。あちらです」
俺はエアコンを指差した。
「あ、あれが?」
「はい。あれは魔導エアコンです。動力は魔力。魔力さえあれば夏は涼しく、冬は暖かく快適に過ごせるでしょう」
「ま、マジか!?」
「はい。当商店オリジナルの商品となっております」
町人はエアコンの温風にあたり幸せそうな表情を浮かべている。
「だ、だが……た、高いんだろ? 薪が要らないなんて大革命だ。一般人じゃ買えそうにない」
「そこは御案内下さい。値段が気になるあなたに朗報が。この店は冥王教を支持しておりまして、現在信者を募集しております。一般の方でしたら三万ゴールドの所、今信者になっていただけたら……」
「……ごくり」
「なんと信者特価! 千ゴールドで提供させていただきましょう!」
「な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「さらに! 他の商品も全て信者価格に! 一般家庭でも貴族より快適に暮らせる事間違いなし! 想像してみて下さい。自分の家に風呂がある環境を! 薪が要らないコンロで煙臭くならない料理を! そして暑い夏場にキンッキンに冷えたエールを喉に流し込む自分の姿をっ!」
「お……おぉぉぉぉ……おぉぉぉぉぉぉっ!?」
「この快適な暮らしが! 今冥王教に入会するだけで安価で手に入るのです! 今を逃せばもうチャンスはありませんっ! これは今だけのオープン価格! さあ、どうしますか? 買いますか? それとも……これから訪れる本格的な冬を薪無しで震えながら過ごしますか!」
まるで悪徳セールスマンだ。相手の弱味につけこみ、さらに信者まで増やそうとしている。
「か、買う! 信者にもなるっ!! ここにある商品全種類を一つずつだ!」
「ありがとうございます。それではあちらで契約を。商品は直接お宅に設置しに参ります。代金のお支払はその時で。ささ、入会のサインを」
「っしゃ!!」
冥王教の信者が増えた。
「ありがとうございます。では後ほど設置に伺わせて頂きます」
「頼むっ!」
町人はスキップしながら帰っていった。俺はシスターを見て言う。
「良いか? こうして信者を増やしていくんだ。これで町の人々はよほど金がない限り確実に信者になる」
「な、なんて悪魔的な……! 天才ですね!」
「くくくっ、これから忙しくなるぞ。俺があいつの家に魔導具を設置したら奴は必ず自慢する。そこから町の住民に噂が広がり……俺達はウハウハだ。そして……領主の関係者には絶対に売らない。悔しがる様を笑ってやろうぜ」
「は、はいっ! 頑張りますっ!」
その日の午後、俺は客の家を訪問し魔導具を設置した。そして各魔導具の使い方を説明する。
「以上が使い方となります」
「本当に魔力だけで動いた……。お、俺の家に風呂ができるだなんて! 薪を買うよりはるかに安く済んだ!」
「全ては信者のために。これが冥王教の教えです。そして冥王教の本流は邪神教。よろしくお願いしますよ?」
「あ、ああっ! もう教会を悪く扱ったりしねえよ。余裕があったら寄付もするし、ミサにも参加する! ありがとう、ありがとうっ!」
「いえいえ。あ、お風呂で使うシャンプーなどもあの店で販売しておりますので、是非またお越し下さい」
「ああっ! 必ず行くよ!」
その数日後、店は噂を聞き付けた大量の町人で長蛇の列が出来上がった。
「こちら整理券でーす! 二列に並んでお待ちくださーい!」
「次の方どうぞー!」
あっと言う間に信者が増えていく。これにはハーデスも涙を流し喜んでいた。
「う~、ジェイド……好きっ! なんでもしてあげちゃう!」
「ありがとよ。だがこんなのはまだまだ序の口だ。やがて大陸中から客が殺到してくるだろう。俺の計画はこうだ。シーガロン大陸を冥王教の手に! どうよ、ワクワクするだろう?」
「ジンジンすりゅぅ……っ。今すぐジェイドとしたいっ!」
「くくっ、ようやく信者のありがたみに気付いたようだな。どれ、疼きを解消してやろう」
こうして、俺のシーガロン大陸侵略がスタートしたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる