現世で死んだ俺は新たな世界へと生まれ変わる途中で邪神に拐われました。ありがとう! 感謝します邪神様っ!

夜夢

文字の大きさ
107 / 227
第5章 グラディオン大陸編

18 根本的な原因

しおりを挟む
 孤児院で暮らし始めて再び一ヶ月、職員全てが妊婦になっていたため、ナビリア商会から複数奴隷を購入し、新たな職員にした。三食昼寝付きの待遇は奴隷達にも評判が良く、もちろん給料もしっかり払っている。

「わ、私達奴隷なのにこんな貰えるんですか!?」
「す、すげぇ……。普通の仕事より倍以上貰えるなんて……」
「労働には対価を支払うものだ。お前達はそれだけの働きをした。これからも期待しているぞ?」
「「「「は、はいっ! ジェイド様っ!」」」」

 いつからだろう。何となく疑問に思っていた。

「こぉらぁぁぁぁぁっ! なんっで俺が働かされてんだパァァァァァァァム!!」
「あ、気付いた」
「ふざけんなよ!? 俺は国王だぞ! こう見えて忙しいんだよっ!」
「は? あたしは妊婦だけど? しかもあなたが無理矢理種付けしたね。何? やっぱり捨てるの?」
「ぐっ……!」

 ここ最近はいつもこうだ。パームは何かにつけ妊婦を強調し、俺を働かせる。しかも孤児院の運営費は全て俺のポケットマネーから支払われている。奴隷の購入費用は自業自得だから仕方ないとして、全員の食費やら給料、遊行費まで払うのはおかしいのではなかろうか。

「院長先生~、えっちぃ事しよ~?」
「任せとけ!」

 何とも単純な俺だった。

 俺は孤児達を愛でながら考える。

「何で孤児とかできるんだろうな。育てられないなら作らなきゃ良いのによ」

 それを見ながらパームが言った。

「わからない? それしかやる事がないからよ。それに、戦があれば父親は息子に家督を譲るの。けど女の子はなにも得られない。皆が望むのは長男で、それ以外は必要とされないのよ」
「ああ、だから女の子が多いのか」

 捨てられる子供の大半が女の子だった。俺に言わせたらなんて勿体ない事をと言った所だが、貧しく生きるもの達にはこれが当たり前となっているらしい。

「こんな可愛いのにな~」
「あぁんっ! 院長先生の愛を感じるっ!」

 それはさておきだ。

「なぁパーム。いつから俺は院長になったんだろうな」
「このアジトを作った時からじゃない?」
「いやいや、パーム孤児院じゃんここ」
「ジェイド孤児院ってなんか流行らなそうじゃん。だから私の名前にしただけだし」
「人の名前を何だと思ってやがる」

 孤児達にも奴隷達にも俺がここのトップだと思われていた。

「ま、今さら言っても仕方ないか。つーか最近新しい孤児やたら増えてね?」
「そうね。最初の三倍以上いるわ」
「ノートメアってそんな治安悪い国だっけ? 俺んとこのシーメルと取引してるくらいだから栄えてるかと思ってたわ」

 パームが言った。

「栄えてるのは一部の人達だけよ。商人とか土地持ってる人とかね。野菜は足が早いから買ってもらえないし、材木もたんまりあるでしょ? 一般家庭はそれほど裕福じゃないのが現実よ」
「ほ~ん」

 俺はこの現実がどうにかならないか考える。

「この国の特産品は?」
「特産品? ん~……なんだろ。思い浮かばないわね」
「は? なんか有名なモンとかねーの?」
「全く」

 シーメルの奴らはノートメアから何を買い付けているのか気になった。

「ちょっと出てくるわ」

 俺は気になった事は解決しないとスッキリしない性格だった。俺は孤児に愛をたっぷり注入し、シーメルへと向かった。

「おう、代表呼べ」
「あ、ジェイドはん! 代表なら事務所にいまっせ」
「わかった」

 俺はシーメルの代表達が集まる事務所の場所を聞き向かう。

「お~、ジェイドはんやないか。どないしたん?」
「久しぶりだな。ちょっとノートメアの件でな。今時間良いか?」
「えぇけど? 何が聞きたいん?」

 俺は代表にノートメアとどんな取引をしているか尋ねた。

「買ってない?」
「せや、うちらは売ってるだけであそこからはな~んも買っとらんで」
「んじゃ商人とか土地持ってる奴らは何で稼いでんだ?」
「ああ、商人にはうちらの商品を捌いてもらっとる。土地持っとる奴には酒を作らせとるんや」

 以外と悪どい商売してんなこいつら。

「それじゃあノートメアは痩せ細る一方じゃないか」
「しゃあないやん。あそこから買えるモンは全部イージス大陸で手に入るからのう……。買ってやりたくても買う物がないんよ」
「なるほど……。これは思っていたより大問題だな」
「ん? ジェイドはん、今ノートメアにおるん?」
「ああ。孤児院で何故か院長になってる」
「……似合わんのう」

 代表の顔が倍に腫れ上がった。

「まぁとにかくだ。あっちで何か作るから出来たら買え。良いな?」
「ば、ばがりばじだ……ぐふぅ……」

 こうして俺は現状を把握し、孤児院へと戻った。

「おかえり、何かわかった?」
「……ああ。思っていたよりノートメアは酷い状況だって事がわかった。まさか売り物がなにもなかってとはな……」
「で、どうすんの?」

 俺は頭を悩ませる。

「別に豊かになるだけならそこらにダンジョン作って潜らせれば良いだけだがよ、国同士の取引で一方的に吸い上げられる今の状況が気に食わん。ってかイージス大陸にはダンジョンやら魔の森があるからなんでもあるんだわ。あっちになくてこっちにない物なんて一つもねぇ」
「……なら何か作れば良いじゃない」
「簡単に言うなよ。全ての職人に謝れお前。簡単に誰にでも作れて売れるモンなんてそれこそ子供しかねーじゃん」
「あんた最低ね」
「うっせうっせ! ま、とにかくだ。何かねぇかちょっと考えてみるわ」

 俺は自室に孤児を連れ込み、身体を交えながら何かないかと考えるのだった。

しおりを挟む
感想 792

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...