現世で死んだ俺は新たな世界へと生まれ変わる途中で邪神に拐われました。ありがとう! 感謝します邪神様っ!

夜夢

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第5章 グラディオン大陸編

23 やる奴はやられる覚悟をもて

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 王城地下牢。そこでシュトラーゼ王国国王の命は風前の灯となっていた。国王を痛め付けているのはシュトラーゼ王国にて伯爵の地位にある男。この男が守旧派を率いている頭だ。

「そろそろ頷いてくれませんかねぇ? それとも……まだ私を楽しませたいのかな? いやぁ、さすが国王様だ。国民のために我が身を犠牲にするその姿勢……感服ですよ」

 男はペンチのような器具で国王の歯をつまみ、残る最後の一本を引き抜いた。

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁっ! ごふっ……!」

 王の口内は紅に染まっている。歯がないせいか最早何を言っているのかもわからない。

 これまでに王は散々痛め付けられてきた。最初に目隠しをされ、椅子に縛り付けられた。そして手足を固定され、まず爪の間に針を通される。全部の爪に針が通ると、今度はそれを軸にし、全ての指から爪が剥がされた。だがそれでも王は折れず、決して屈しなかった。

 俺は今死にかけている王の後ろに立っていた。拷問伯爵がこれまでどんな拷問を王にしてきたか、俺は王の記憶を読んでいた。

(……ぬるっ。これで拷問伯爵とはなぁ……。俺んとこじゃ日常茶飯事だったぜ。まだまだ抉る所が残ってんじゃん)

 それが率直な感想だ。

 未だに首を縦に振らない王に伯爵が言った。 

「まぁ、どうせ認めた所で助かりはしないのですがね。今頃王妃や王女も滅茶苦茶になっているでしょうしねぇ~」
「ひ……ひはふぁぁぁぁぁっ!!」
「ひははははっ、何を言っているかわかりませんねぇ~」

 俺はこの温さに飽きてきた。

「もう良いだろ。【位置交換】」
「え?」
「ほ……」
「完全回復魔法【エクストラヒール】」
「むぉっ!?」

 俺はまず王と伯爵の居場所を交換してやった。そして姿を現し王の傷を癒した。

「な、ななななんですかこれはっ!? 見えませんし動けませんよっ!?」
「お前、ちっとうるせぇから黙っとけ」

 そう言い、俺は伯爵の口にトーキックを御見舞いしてやった。

「ぐぼらっ!? は、はははは歯がぁぁぁぁ……っ!」

 伯爵の歯が全て折れ床に転がった。

「お、お主……誰じゃ?」
「初めまして、国王。俺はイージス大陸で邪神国デルモートを率いている国王ジェイドだ。あんたの妻と娘はすでに救出済みだ。今は改革派のアジトにいてもらっているよ」
「な、なんと! ぶ、無事なのか!」
「まぁ……な。大分汚されて壊れていたが治療してやったからな。ああ、ちなみに上で暴れていた奴らはもう城にはいないぞ。守旧派で残っているのはこいつと城にいなかった奴らだけだ。まぁ、そいつらも潰しに行くがな」

 妻子の無事を知り王は安堵した。 

「そ、そうか……。すまぬ、助かった……!」
「なに、構わんよ」

 ここで俺は目の前にいる王を試す事にした。

「さて、あんた随分やられてたみたいだが……。今ならこいつに仕返しし放題だぜ? ちょっとやってみるかい?」

 王は首を横に振った。 

「……いや。私はいい。拷問されはしたが其奴も元は家臣だった男。やられてやり返していたらキリがないからの。妻子が無事で私も命が助かったのだ。私からは何もしない」
「そうか。ま、良いだろう」

 とりあえずは合格だな。ここで感情に任せて憂さ晴らしするような王なら不合格だ。そんな奴は俺の作る世界に必要ない。

「じゃあ今から改革派のアジトに送る。そこで妻達と再会し、ゆっくり休むと良い」
「お、送る?」
「ああ。【転送】」
「うぉ……」 

 俺は王をアジトに転送してやった。

「歯らぁぁぁぁぁっ! わらひの歯らぁぁぁぁぁっ!」
「うるっせぇっつってんだろうが。歯くらいでガタガタ言ってんじゃねぇよ。お前にはこれから地獄が待ってんだからよぉ……ひひっ、うははははははははっ!」
「ひぃっ!?」

 ちなみに目隠しはしていない。視覚を塞ぐ事は確かに有効だが、俺くらいのレベルになるとむしろ視覚で恐怖を与える方が有効となる。なんせ俺はイカれてるからな。ああ、楽しみだ。

 一方、その頃王は。

「……ぉぉあ? ど、どこだここは?」
「「「「こ、国王様っ!?」」」」 
「あぁぁぁぁ、あなたぁぁぁぁぁっ!」
「お、お父さま!? い、今どこから!?」

 改革派の面々の前へと転送された王は即座に理解した。

「な、なるほど。送るとはこう言う意味だったか」
「国王様、まさかジェイド様に?」
「うむ。後一歩で死ぬ所だった。だが完全回復魔法とやらで治療されてな……」
「おぉぉぉっ! さ、さすがジェイド様!」

 そこで王女が何かに気付いた。

「ち、ちょっと待って! あいついったいいくつスキルが使えるの!? 知ってるだけでも【転移】、【転送】、【透明化】に【聖魔法】……」

 それに王妃が続く。

「【浄化】に【記憶操作】も使ってたわね」

 さらに婦人達も続く。

「【飛行】、【気配遮断】。おそらく【剣術】も使えますね」

 その場にいた皆は黙ってしまった。

「……少なくとも十以上は使えそうだな。この世界で人間が使えるスキルは一人一つ。確か邪神国には神が顕現したと聞く……。彼の力はその神から与えられたものではなかろうか……」

 国王はなかなかに鋭かった。

「神から……。で、ではジェイド様は神の使徒様!?」
「うむ……。あの地には聖神教もあったはず。それを潰して邪神国を立ち上げたのだ。只者ではあるまい」
「あのスケベそうな男が~? 信じらんないな~……」

 そう呟く王女を王は叱責した。

「バカ者。それすら相手を油断させる手段かもしれぬのだ。彼を敵に回したが最後、全ての命は泡のように消えるだろう。今回彼には世話になってしまった。何を要求されるか怖いが……従わなければならんだろうな……」

 そこで王は態勢を崩した。

「こ、国王様!」
「む……。少し血を失い過ぎたようだ……。すまぬが肉を。回復し彼の帰りを待つとしよう」
「はっ!」

 そして俺は……。

「とりあえず悲鳴が聞きたいから傷は治してやんよ。【エクストラヒール】」
「は、歯が……」
「さあ、これからお前に本当の拷問ってやつを味あわせてやるよ。ま、ゆっくり楽しんでくれ。ひはっ、ひははははははははっ」
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

 俺は何から始めようか嗤いながら伯爵を見下ろすのであった。
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