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第6章 ナルニーア大陸編
01 いざ新天地へ!
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新たな大陸の情報を得た俺は早速船着き場へと向かった。迫害されているという亜人達は気になったが、所詮は他人事。特に急ぐでもなく、俺はゆっくりと船旅を楽しんでいた。
俺は一等客室の窓から海を眺める。
「平和だなぁ~。な?」
「は、はいっ! あっあっ、また吹いちゃうぅっ!」
俺の上には一人旅をしているという冒険者の女がいた。彼女は【ライカ】。バロン帝国出身で内情にも詳しいからと部屋に誘った。それが昨日の話だ。俺達は船の揺れに合わせベッドで揺れに揺れていた。
「す……凄かった……。私クージラになっちゃいました」
「それな」
この海には地球の鯨に似たクージラという巨大海洋生物が存在するらしい。ま、これはどうでも良い話だ。
「じゃあそろそろ話を聞こうか。明日にはバロン帝国に着くんだろ?」
「はい。えっと……」
ライカはバロン帝国について語り始めた。
バロン帝国は聖神教に支援していた国らしい。聖神教の人間第一主義がそのまま政治に引用されているのだとか。そのため、バロン帝国では亜人を対等な人間とは認めず、奴隷として扱っているらしい。
かくいうライカも亜人とのハーフであり、尻にはもふもふした丸い尻尾が付いていた。それ以外は普通の人間となんら変わりがない。だがバロン帝国はハーフでも人間とは認めないようだ。
これに対しブライト王国は亜人の引き渡しを再三に渡り要求したが、労働力の確保に苦しんでいるバロン帝国は頑なにこれを無視。両国の緊張は今まさに最高潮に達しているらしい。
俺はライカになぜそんな国に戻るのかと尋ねると彼女はこう理由を口にした。
「自由を得るためですよ。私には戦いのスキルがありましたし、それで冒険者になったんです。私達が自由になるためには雇い主に一人百万ゴールドを払わなければならないのです。普通に奴隷として得られるお金は月に五千ゴールド。これだと一生かかっても自由にはなれない。だから私は冒険者になってお金を稼いで帰ってきたんですよ」
ライカは十二歳で冒険者となり今二十歳。この期間で母親と自分の分、つまり二百万ゴールドを稼いできたらしい。後はこれで雇い主から自由を買うだけ。その為にライカはバロン帝国に戻ってきたのだそうだ。中々に親孝行な子だ。
「なるほどねぇ……。バロン帝国についてはわかった。ブライト王国からついてはわかるか?」
「私はわかりません。何せブライト王国には行った事もありませんし……。お母さんはブライト王国出身なので話は聞きますが……。真実かどうかは……」
「聞いた話だけで良いよ。何か知ってるなら教えてくれ」
「わかりました」
ライカの母親の話によると、ブライト王国は緑豊かな自然と共存するような国らしい。そこには様々な亜人が平和に暮らしており、争いもない良い国なのだとか。
だがバロン帝国はそんなブライト王国に密入国し、亜人を拐っていく。昔は簡素な柵しかなかったため入り放題だったのだとか。今は完全に決別を選び、国境には高く分厚い壁が設けられているのだそうだ。そしてその国境にはブライト王国の精鋭一万が常に駐留し、人間の侵入を排除しているらしい。
「それじゃ俺は入れそうにないな……」
「入りたいんですか?」
「ああ。俺は亜人を差別しない主義でな。俺の国では亜人も普通に暮らしているんだよ」
「俺の……国?」
「ああ。俺はこう見えて国王やってんだよ。聖神教をぶっ潰した国、邪神国デルモート国王。それが俺なんだよ」
「え……えぇぇぇぇぇぇぇっ!? 聖神教って潰れてたんですか!?」
ちょっと待て。なんか話がおかしいな。
「……まさか知らない?」
「はい。え? 私が行った大陸ではまだ……あ、そっか。五年前だからか! 知らなかったなぁ……」
「なるほど、そういう事か」
良かった。まだ聖神教が残ってたわけじゃないのか。いや、残っていると言えば残っているのか。バロン帝国には聖神教の教えが根付いているようだし、世界にはまだまだこんな国もあるのだろう。
「意外としぶといんだなぁ奴ら。クソみてぇな教団の癖によぉ」
「ですね。教義で差別を推進するなんて最低です! それに比べ邪神教は最高ですね……。亜人とのハーフの私にこんな幸せな時間をくれるなんて……」
「差別はしないって言っただろ。陸地に着くまで続けようか」
「は、はいっ! 私は兎の亜人なのでスイッチが入ると止まらなくなるんですよぉ……。あとあと……寂しいと泣いちゃいます!」
俺は笑ってライカの頭を撫でてやった。
「そうか。なら寂しい思いをさせないようにしなきゃな。孕むか?」
「あ……」
ライカの瞳にハートが浮かび上がる。どうやら墜ちたらしい。
「はいっ! あ、ブライト王国に入る方法が一つだけありました」
「ほう? その方法は?」
「はいっ! 亜人と一緒なら人間でも入れるらしいです! あ、でも……」
ライカの表情が曇る。
「どうした?」
「その……。入国審査で人間は亜人を心から愛し、対等な関係だと示さなきゃならないらしいんです」
「ほ~う」
「その審査はとても厳しいですよ」
「そっか。ま、受けてみなきゃわからないな。要は俺がライカを愛してるって見せつければ良いんだろ。任せろよ」
「きゅうぅぅぅぅん! ジェイドさんは女殺しですっ!」
「はははははっ」
この後、俺は陸地に着くまでライカを愛でるのであった。
俺は一等客室の窓から海を眺める。
「平和だなぁ~。な?」
「は、はいっ! あっあっ、また吹いちゃうぅっ!」
俺の上には一人旅をしているという冒険者の女がいた。彼女は【ライカ】。バロン帝国出身で内情にも詳しいからと部屋に誘った。それが昨日の話だ。俺達は船の揺れに合わせベッドで揺れに揺れていた。
「す……凄かった……。私クージラになっちゃいました」
「それな」
この海には地球の鯨に似たクージラという巨大海洋生物が存在するらしい。ま、これはどうでも良い話だ。
「じゃあそろそろ話を聞こうか。明日にはバロン帝国に着くんだろ?」
「はい。えっと……」
ライカはバロン帝国について語り始めた。
バロン帝国は聖神教に支援していた国らしい。聖神教の人間第一主義がそのまま政治に引用されているのだとか。そのため、バロン帝国では亜人を対等な人間とは認めず、奴隷として扱っているらしい。
かくいうライカも亜人とのハーフであり、尻にはもふもふした丸い尻尾が付いていた。それ以外は普通の人間となんら変わりがない。だがバロン帝国はハーフでも人間とは認めないようだ。
これに対しブライト王国は亜人の引き渡しを再三に渡り要求したが、労働力の確保に苦しんでいるバロン帝国は頑なにこれを無視。両国の緊張は今まさに最高潮に達しているらしい。
俺はライカになぜそんな国に戻るのかと尋ねると彼女はこう理由を口にした。
「自由を得るためですよ。私には戦いのスキルがありましたし、それで冒険者になったんです。私達が自由になるためには雇い主に一人百万ゴールドを払わなければならないのです。普通に奴隷として得られるお金は月に五千ゴールド。これだと一生かかっても自由にはなれない。だから私は冒険者になってお金を稼いで帰ってきたんですよ」
ライカは十二歳で冒険者となり今二十歳。この期間で母親と自分の分、つまり二百万ゴールドを稼いできたらしい。後はこれで雇い主から自由を買うだけ。その為にライカはバロン帝国に戻ってきたのだそうだ。中々に親孝行な子だ。
「なるほどねぇ……。バロン帝国についてはわかった。ブライト王国からついてはわかるか?」
「私はわかりません。何せブライト王国には行った事もありませんし……。お母さんはブライト王国出身なので話は聞きますが……。真実かどうかは……」
「聞いた話だけで良いよ。何か知ってるなら教えてくれ」
「わかりました」
ライカの母親の話によると、ブライト王国は緑豊かな自然と共存するような国らしい。そこには様々な亜人が平和に暮らしており、争いもない良い国なのだとか。
だがバロン帝国はそんなブライト王国に密入国し、亜人を拐っていく。昔は簡素な柵しかなかったため入り放題だったのだとか。今は完全に決別を選び、国境には高く分厚い壁が設けられているのだそうだ。そしてその国境にはブライト王国の精鋭一万が常に駐留し、人間の侵入を排除しているらしい。
「それじゃ俺は入れそうにないな……」
「入りたいんですか?」
「ああ。俺は亜人を差別しない主義でな。俺の国では亜人も普通に暮らしているんだよ」
「俺の……国?」
「ああ。俺はこう見えて国王やってんだよ。聖神教をぶっ潰した国、邪神国デルモート国王。それが俺なんだよ」
「え……えぇぇぇぇぇぇぇっ!? 聖神教って潰れてたんですか!?」
ちょっと待て。なんか話がおかしいな。
「……まさか知らない?」
「はい。え? 私が行った大陸ではまだ……あ、そっか。五年前だからか! 知らなかったなぁ……」
「なるほど、そういう事か」
良かった。まだ聖神教が残ってたわけじゃないのか。いや、残っていると言えば残っているのか。バロン帝国には聖神教の教えが根付いているようだし、世界にはまだまだこんな国もあるのだろう。
「意外としぶといんだなぁ奴ら。クソみてぇな教団の癖によぉ」
「ですね。教義で差別を推進するなんて最低です! それに比べ邪神教は最高ですね……。亜人とのハーフの私にこんな幸せな時間をくれるなんて……」
「差別はしないって言っただろ。陸地に着くまで続けようか」
「は、はいっ! 私は兎の亜人なのでスイッチが入ると止まらなくなるんですよぉ……。あとあと……寂しいと泣いちゃいます!」
俺は笑ってライカの頭を撫でてやった。
「そうか。なら寂しい思いをさせないようにしなきゃな。孕むか?」
「あ……」
ライカの瞳にハートが浮かび上がる。どうやら墜ちたらしい。
「はいっ! あ、ブライト王国に入る方法が一つだけありました」
「ほう? その方法は?」
「はいっ! 亜人と一緒なら人間でも入れるらしいです! あ、でも……」
ライカの表情が曇る。
「どうした?」
「その……。入国審査で人間は亜人を心から愛し、対等な関係だと示さなきゃならないらしいんです」
「ほ~う」
「その審査はとても厳しいですよ」
「そっか。ま、受けてみなきゃわからないな。要は俺がライカを愛してるって見せつければ良いんだろ。任せろよ」
「きゅうぅぅぅぅん! ジェイドさんは女殺しですっ!」
「はははははっ」
この後、俺は陸地に着くまでライカを愛でるのであった。
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追記:2025/09/20
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もし気になる方は、
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