現世で死んだ俺は新たな世界へと生まれ変わる途中で邪神に拐われました。ありがとう! 感謝します邪神様っ!

夜夢

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第6章 ナルニーア大陸編

02 まずは母親を救いに行こうか

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 何事もなく港に着いた俺はライカと共に母親が働いている食堂へと向かった。母親に久しぶりに会うというライカは少し緊張気味に見えた。

「……大丈夫かなお母さん。ちゃんとご飯食べてたかな……」
「そんな酷い環境だったのか?」

 ライカは過去を口にし始める。

「酷いじゃすまないくらいには酷かったかな……。食事はお客さんの食べ残しだし、月五千ゴールドの内部屋代が半分だった。その二千五百ゴールドも貯金に回してたけど……。どう考えても自由になるには足りなかったの」
「……悪どいなぁ」

 やがてライカは一軒の店の前で足を止めた。まだ早朝で店は営業してないが、通りを掃除する少し窶れた女の人がいた。

「お……お母さんっ!!」
「え? あ……ラ、ライカ!」

 ライカは掃除をしていた女に駆け寄り抱きついた。

「あぁぁぁ、お母さんっ! こんなに窶れて……! 食事は!?」
「……私は……まだ大丈夫よ。きっとライカが来てくれるって頑張ってたから……」
「お母さんっ!」

 母親の頭からは白い兎の耳が延びていた。それを見た俺はつい欲情してしまった。だって少しくたびれちゃいるが滅茶苦茶美女なんだぞ。

「……強いオスの匂い……。ライカ、彼は?」
「あ、彼はジェイドさん。船で会ったの。イージス大陸で王様やってるんだって! 私船でいっぱい可愛がられたの!」
「か、可愛がられた? 亜人と人間のハーフのあなたを?」
「うんっ。あ……また垂れてきた……」

 母親もまたその匂いにスイッチが入りかけていた。だが今は仕事中、必死に堪えている様子だ。

「そ、そう……。良い人に出会ったのね……」
「うんっ! でね、お母さん」

 ライカは母親に二百万ゴールドを稼いできた事を告げた。だが母親の表情は晴れない。

「ライカ……、それじゃ足りないの……」
「……え? だ、だって一人百万ゴールドじゃ……」
「最近値上がりしたのよ。なんでもノートメアって国から面白い娯楽が入ったそうで……」

 俺はまたやってしまったのか。

「い、いくらになったの?」
「一人百五十万ゴールド。働き手が少なくなって誰もが奴隷を手放したくなくなったらしくて……」
「そ、そんな……! じゃあ二人で三百万も!? これじゃ一人しか自由になれないっ!」

 母親はライカの肩を抱きながら告げた。

「ライカ、私の事はもう良いのよ……。ライカの稼いできたお金はライカのために使って……。私はここで一生を……」
「そんなのダメだよっ! やっとお母さんと一緒にブライト王国に行けると思ったのにっ!」
「ブライト王国……。懐かしいわね……。あぁ……死ぬ前にもう一度あの国に帰りたかったわ……」

 なんてこったい。俺は間接的にこの母親を苦しめていたって事か。こんな事なら安易に玩具なんて売るんじゃなかった。

 俺は猛省し、二人に話し掛けた。

「ライカ、俺が払うから」
「「え?」」
「俺はブライト王国に入りたいんだ。その為にはどうしても亜人の協力が必要になる。三百万でどうにかなるなら安いもんだ。ちょっと待っててくれ」
「え? え?」

 俺は急ぎお嬢のダンジョンに転移し、三時間ほど最下層で稼ぎまくった。

 そして時刻は店の営業直前。俺は母親を働かせようと連れていく場面で戻ってきた。

「お母さんを離してよっ!」
「あ? ならお前が代わりに働くか? お前の持ってきた金じゃ一人しか自由にはなれねぇんだよ。母親かお前、どっちかは俺の店で働いてもらわんとなぁ?」

 男は店主なのだろう。今度はライカの腕を掴んで店に引きずり込もうとしている。

「は、離してよっ!」
「うるせぇっ! 自由になりたいなら金を払えっ! お前ら亜人はこの国じゃそういう扱いだろうが!」
「ライカを離して下さいっ! 私がちゃんと働きますからっ!」

 そこで俺が間に入った。

「待ちな」
「「あ! 帰ってきた!」」
「あぁん? いぎあぁぁぁぁぁっ!?」

 俺はライカの腕を掴んでいた店主の指を折った。

「そいつは俺の女だ。気安く触らないでもらおうか」
「あ? んぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!?」

 そして次に母親を掴んでいた指も折る。

「な、何すんだごらぁぁぁぁぁぁっ!?」
「そいつは俺が買う。奴隷だか何だか知らないが扱いが酷すぎるんじゃないか? こんな美女を窶れるまでこき使いやがって……。おらよ、慰謝料込みで五百万だ。こいつで二人をもらってくぜ」
「「あっ……」」

 俺は店主の顔に五百万ゴールドが詰まった袋を投げつけ、二人を両腕に抱えた。

「い、良い男の匂いっ……! ダメよ私っ……。彼は娘の良い人なのにぃっ……!」
「ジェイドさん? あのお金は……」
「ダンジョンで稼いできた。五千億くらいあるから気にするな。行こう。まずは母親に食事と休息を与えないと……」
「ま、待ちやがれっ!」

 店主が店を離れようとする俺達の前に回り込む。

「俺は指を折られたんだぞっ!! たった五百万で足りるかっ!!」
「そうか。なら金を使えなくしてやろうか? 指で済んでまだマシだったと思えるくらい全身の骨をバラバラにしてやんぞゴラ。俺に逆らうな。その脂ぎった面吹き飛ばしてやろうか? あぁっ!?」
「ひ、ひぃぃぃぃぃっ!? こ、殺されるっ!?」

 俺は店主に巨大火炎弾を見せつける。

「優しくしてやってる内に納得しとけよ、なぁ? バカじゃねぇならわかんだろ? それとも……こんがり焼かれたいか?」
「ひ、ひぃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 店主は金の詰まった袋を握り店の中へと消えた。それを見て俺は二人に言った。
    
「じゃ行こうか。ライカ達はもう自由だ。取り敢えず美味い飯屋に行こう」
「わ、私は八年かけて二百万がやっとだったのに……」
「……す、素敵過ぎるっ! ああ、私ジェイドさんに買われてしまったのねぇっ! や、やります?」
「もちろんやるとも。だが……元気になったらな? さぁ、飯食ってブライト王国に行こうか」
「「は、はいっ!」」

 こうして俺はライカとその母親を買取り、ブライト王国入国の手段を入手するのであった。


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