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第1章 始まりの章

02 主人公の力

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    5級となり、侵入不可エリアに入れる様になった彼は、連日中型から大型モンスター相手に鍛練を繰り返していた。

「ふぅ…。大分慣れてきたかな。そろそろ素材も溜まってきたし、一度換金に行かないと。」

    彼は日々稼いだお金で、まず始めに、魔法の収納袋を買っていた。ある時、路地裏に開かれていた露店で購入した物だが、使い勝手が良く、とても重宝していた。

「便利だよな、これ。重量制限超えるまで幾らでも入るんだもんなぁ。怪しい露店商だったけど、掘り出し物だったのかも。」

    彼は久しぶりに地上へと戻り、ギルドへと向かった。

「お久しぶりです。素材の換金をお願いしたいのですが。」

「ガゼル様!随分久しぶりですね。素材の換金ですか?量はどれ位になりますか?」

「えっと…10トンなんだけど…。」

「え、しょ、少々お待ち下さい!」

    受付は奥へと消え、解体班に10トンの解体は可能か確認した。暫くして、受付が戻ってきた。

「お待たせしました。引き取りは可能ですが、量が量なので、支払いは解体後となりますが、よろしいでしょうか?」

「えぇ。僕は構いませんよ。直ぐにお金が必要な訳でも無いですし。」

「畏まりました。それでは、ギルドの解体倉庫へとご案内致しますので、そちらで素材をお出し下さい。」

「わかりました。」

    彼は受付に連れられ、解体班が居る倉庫を訪れた。

「おう、大口の依頼が入ったそうだな。こいつが依頼者か?」

「はいっ!異例のスピード出世を果たしたガゼル・ライオット様です。」

「ガゼルです。順に出していきますので、もし引き取れない素材があったら言って下さい。」

    そう言って、ガゼルは倉庫内にモンスターの死体を並べていく。

    サーベルタイガー、オークキング、ダンジョンウルフ、キマイラ、ファイアドレイク、ビッグワーム…大小様々な死体が次々と並べられていく。

「すげぇ!キマイラがいるぜ!」

「バカ、サーベルタイガーの牙が無傷だ!これは高いぜ!」

    まだまだ出る。グレートサハギン、モルボル、エルダーリッチ、トレント、ダークナイト、ゴールデンゴーレム。

「おぉぉぉっ!金の塊ゴールデンゴーレム!」

「トレントから木材が採れるな!」

「取り敢えずこんな感じですが、大丈夫ですか?」

「任せろ!徹夜で解体してやるよ。こんな大物は久しぶりだ!腕が鳴るぜっ!やるぞ、お前等!」

「「おうっ!!」」

    受付はガゼルに言った。

「よくこんなに集めましたね。ダンジョン、何処まで進んだのですか?」

「えっと、地下60階だったかな。 」

「そんなにっ!?こ、これはギルドマスターに報告しないと…。」

「えっと、何か不味かったですか?」

「いえいえ。支払い額は明日のお昼位には決まっていると思いますので、大体その位に来て頂ければと。」

「わかりました。お手数かけまして申し訳ありません。」

「いえ、これが私達の仕事ですので。」

    受付の人はガゼルに一礼し、ギルド2階へと登っていった。ガゼルは素材を渡し、空になった袋を持ち、宿屋へと向かった。

「あぁ~…久しぶりのベッドだ…。自覚無かったけど結構疲れてたんだなぁ…。このまま寝ちゃい…………」

    彼は柔らかい布団に包まれ、眠りに就いた。昼に宿屋に入り、翌朝までぐっすりと眠ってしまった彼は、翌朝、腹が減って目が覚めた。彼は宿屋に併設してある食堂へと向かい、目一杯腹に詰め込んだ。

「さて、約束は昼だったよな。久しぶり町でも見て回ろうかな。」

    彼は時間まで町を見て回った。狭い裏路地を抜けた先に一軒の店があった。

ー【奴隷館】ー

・借金を払えなくなった者が奴隷として売られている。
・戦争で捕まえた捕虜も奴隷として売られている。
・拐われてきたと思われる者は扱わない。
・購入時、奴隷の証である【隷属の首輪】を装着しなければならない。

    そんな看板が注意書きとして出ていた。

「奴隷…か。何故か気になるんだよな。ま、今は金が無いし、また後で来よう。」

    彼は路地裏を後にし、再び町を散策しつつ、話を聞いていた。

ー最近勇者来なくなったよね?ー
ーなんでもダンジョンで何人か死んだらしいぜー
ー死体は無く、装備品だけが落ちてたらしいー
ーいい気味だぜ!ー
 
    どうやら勇者はこの町付近から撤退したようだ。明日にでも違う町に行くか。

    彼はそんな事を考えつつ、冒険者ギルドへと向かった。

「こんにちは、昼になったので来たのですが。」

「あ、ガゼル様!用意出来ていますよ。内訳聞きます?」

「いえ、そこは信頼していますので、合計だけでいいですよ。」

「ありがとうございます。では、総額から解体手数料を引いた額がこちらになります。」

    因みにこの世界の通貨価値は、銀貨1枚でパンが1つ買える。銅の剣は出来によるが、大体金貨3枚ほど。宿は質によるが、夜、朝の食事付きで金貨5枚ほどである。

銅貨1枚=10円
銀貨1枚=100円
金貨1枚=1000円
大金貨1枚=10000円
白金貨1枚=100000円
黒金貨1枚=1000000円

    今回の素材買い取りで得た額は…黒金貨50枚。

「こんなに貰っても良いのですか?」

「勿論ですよ。一番高かったのがゴールデンゴーレムです。こちらが黒金貨10枚になりました。あの大きさは大変珍しいモノで、少し割り増しになってます。後はエルダーリッチの装飾品だったり、色々併せて黒金貨50枚です。5級になったばかりなのに…凄いです!」

「運が良かっただけさ。それじゃ僕はこれで。」

「あ、待って下さい。今回の買い取りでガゼル様のランクがまた1つ上がりましたので、カードの更新をお願いします。」

    彼は受付にカードを提示する。暫く待つと、新しいカードを渡された。カードには4級と書かれていた。

「ありがとう、それで…そろそろ次の町に行こうかと思うんだけど。」

「えっ!この町を出るんですか!?」

「うん、まぁ…。ダンジョンもコアを破壊したら消えちゃうし、そうなったら皆困るでしょ?他にやる事がないんだよね。だから、新天地を目指そうかなって。」

    受付の人は落ち込んでしまった。

「そう…ですよね。いつまでもこの町にいても仕方無いですよね。ずっとこの町に居てくれたら…。いえ、今のは忘れて下さい。」

「生まれた村も近いですし、たまには顔だしますよ?また会う日まで更に強くなってきますので、良い依頼…とっておいて下さいね?」

「は、はいっ!いってらっしゃいませ、ガゼル様っ!」

    彼は冒険者ギルドを後にした。そして、自分が今どれ位の強さなのか気になった彼は、道具屋に立ち寄り、鑑定紙を購入し、人気のない場所で自分を鑑定した。

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名前:ガゼル・ライオット
種族:ヒューマン
冒険者ランク:4級
称号:勇者殺し
ジョブ:魔法剣士
レベル:300
体力:6800/6800
魔力:4500/4500

スキル:スキル消去

魔法:火魔法(中級)、水魔法(中級)、土魔法(中級)、風魔法(中級)、氷魔法(中級)、雷魔法(中級)、付与魔法(中級)、回復魔法(初級)、状態阻害魔法(中級)

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「力や防御なんかは装備で幾らでも変わるからな、表示は無しでいい。大事なのは体力と魔力だ。5年で漸く300か。魔法ももっと鍛えないとな…。さて、力も把握したし、奴隷館を見たら次の町に行くか。」

    彼は鑑定紙を燃やし、奴隷館へと向かうのだった。
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