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ARDFってなんぞや
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『「うち」「ここ」入っていか「へん」「ない」!?』
言うと思った。…しかし、他に入りたい部活もない。おぼろげながら覚えているのはオリエンテーションで話していた「軽音楽部」と「陸上部」ぐらいなものだ。私はとにかく運動が嫌いで、楽器に関しては中学時代「人を殺せる」とまで言われた始末だ。
「うぅ…分かりましたけど…結局ここって何やる部活なんですかね?」
「あ、話してなかったな。ここはARDF同好会ゆうて、”ARDF”ちゅースポーツやっとんね……おい、今『スポーツ苦手』って顔しよったな?」
「う、そうなんですよ…走りも泳ぎもどうも苦手で」
「全然OKや。スポーツゆうてもそこまでガチでやるやつやない。ゆる~くゴリゴリッ、バーンってやるだけや」
「なんなんですかその擬音語」
「感じるんや」
「えぇ…」
「まあ走ることには走るよ~。でもみんな競技中はだいたい歩いてて、スタートとゴールだけ走るって感じかなぁ」
3人から長々とした説明が始まった。どうやらARDFとは、いわば「無線を使った宝探し」のようなものらしい。
競技者は専用の受信機を持ち、電波と地図だけを頼りに2時間以内に山や公園に隠された5個の送信機を探す。
もちろん携帯やGPSは使用不可だし、ほかの競技者を追いかけたり会話をすると失格となる。多くの場合、競技者は「SIカード」と呼ばれる小さな端末を使い、それを送信機の近くに設置された機械に通すと発見した証明がされる、といった仕組みらしい。
「…と、こんな感じかな。今日はそこまで時間はないし、お試しはできないからまた月曜日に来てよ。…まあこの先輩達が嫌じゃなければ」
ドヤ顔の2人を見ながら言う。それでいいのか先輩方。
「なるほど…ずいぶん奥が深そうな競技ですね。だったら、明日も来てみます」
「ありがとう。…あ、名前聞いてなかったね。私は高2の藤代七海。よろしくね」
「七海さんですね…よろしくお願いします。私は龍崎市華って言います」
「龍崎ちゃんか。よろしゅうな。ウチはここの部長で高3の荒川芽吹や。」
「はーい!同じく高3、葛城優香です!よろしくね~!」
自己紹介もほどほどに済んだところで、下校時刻を告げる放送が聞こえてきた。下校バスは10分後に出てしまうらしく、私は急いでバス停に向かった。
学校から家までは1時間半の道のりだ。立女(優香によるとそう略すらしい)は辺鄙な場所にあり、最寄り駅まではバスで15分かかる。おまけに最寄り駅から出る電車は30分に1本しかなく、あと少しのところで逃した絶望感は半端なものではない。そして命からがら乗り込んだ電車で30分、そこそこ大きな街で別の電車に乗り換えてようやくホームタウンに帰ってこれるのだ。
意外にも、両親は「ARDF同好会」にとても肯定的だった。初めは頭の上に「?」マークを光らせていたが、ARDFの説明をすると快く「やりたいのなら入りなさい」と言ってくれた。どうやら私は、いよいよARDFからは逃れられそうにないようだ。
週が明け、月曜日になった。いよいよ授業が本格化し、何冊もの教科書が配られる。私のバッグとロッカーは、さっそく満杯になった。
土日に少々ARDFについて調べた。どうやら驚いたことに、日本全国の高校から集まる「全国高校ARDF大会」ですら参加者が約150人という、かなりのマイナー競技らしい。だがその割に、数年間隔で世界大会が開かれるなどかなりしっかりしたスポーツのようだ。
…まずい。ARDFのことで頭を満たしすぎたせいか、全く授業が頭に入ってこない。「高校数学からが難しい」などと言われているが、実際のところ最初の方は基礎中の基礎のようで、知っている事ばかりだ。それも相まってか、脳が「ARDF>数学」の判断を勝手に下していやがるのだろう。私は優香の言葉を思い出した。
「ARDF沼はハマったが最後、二度と抜け出せぬ魔物じゃ」
言うと思った。…しかし、他に入りたい部活もない。おぼろげながら覚えているのはオリエンテーションで話していた「軽音楽部」と「陸上部」ぐらいなものだ。私はとにかく運動が嫌いで、楽器に関しては中学時代「人を殺せる」とまで言われた始末だ。
「うぅ…分かりましたけど…結局ここって何やる部活なんですかね?」
「あ、話してなかったな。ここはARDF同好会ゆうて、”ARDF”ちゅースポーツやっとんね……おい、今『スポーツ苦手』って顔しよったな?」
「う、そうなんですよ…走りも泳ぎもどうも苦手で」
「全然OKや。スポーツゆうてもそこまでガチでやるやつやない。ゆる~くゴリゴリッ、バーンってやるだけや」
「なんなんですかその擬音語」
「感じるんや」
「えぇ…」
「まあ走ることには走るよ~。でもみんな競技中はだいたい歩いてて、スタートとゴールだけ走るって感じかなぁ」
3人から長々とした説明が始まった。どうやらARDFとは、いわば「無線を使った宝探し」のようなものらしい。
競技者は専用の受信機を持ち、電波と地図だけを頼りに2時間以内に山や公園に隠された5個の送信機を探す。
もちろん携帯やGPSは使用不可だし、ほかの競技者を追いかけたり会話をすると失格となる。多くの場合、競技者は「SIカード」と呼ばれる小さな端末を使い、それを送信機の近くに設置された機械に通すと発見した証明がされる、といった仕組みらしい。
「…と、こんな感じかな。今日はそこまで時間はないし、お試しはできないからまた月曜日に来てよ。…まあこの先輩達が嫌じゃなければ」
ドヤ顔の2人を見ながら言う。それでいいのか先輩方。
「なるほど…ずいぶん奥が深そうな競技ですね。だったら、明日も来てみます」
「ありがとう。…あ、名前聞いてなかったね。私は高2の藤代七海。よろしくね」
「七海さんですね…よろしくお願いします。私は龍崎市華って言います」
「龍崎ちゃんか。よろしゅうな。ウチはここの部長で高3の荒川芽吹や。」
「はーい!同じく高3、葛城優香です!よろしくね~!」
自己紹介もほどほどに済んだところで、下校時刻を告げる放送が聞こえてきた。下校バスは10分後に出てしまうらしく、私は急いでバス停に向かった。
学校から家までは1時間半の道のりだ。立女(優香によるとそう略すらしい)は辺鄙な場所にあり、最寄り駅まではバスで15分かかる。おまけに最寄り駅から出る電車は30分に1本しかなく、あと少しのところで逃した絶望感は半端なものではない。そして命からがら乗り込んだ電車で30分、そこそこ大きな街で別の電車に乗り換えてようやくホームタウンに帰ってこれるのだ。
意外にも、両親は「ARDF同好会」にとても肯定的だった。初めは頭の上に「?」マークを光らせていたが、ARDFの説明をすると快く「やりたいのなら入りなさい」と言ってくれた。どうやら私は、いよいよARDFからは逃れられそうにないようだ。
週が明け、月曜日になった。いよいよ授業が本格化し、何冊もの教科書が配られる。私のバッグとロッカーは、さっそく満杯になった。
土日に少々ARDFについて調べた。どうやら驚いたことに、日本全国の高校から集まる「全国高校ARDF大会」ですら参加者が約150人という、かなりのマイナー競技らしい。だがその割に、数年間隔で世界大会が開かれるなどかなりしっかりしたスポーツのようだ。
…まずい。ARDFのことで頭を満たしすぎたせいか、全く授業が頭に入ってこない。「高校数学からが難しい」などと言われているが、実際のところ最初の方は基礎中の基礎のようで、知っている事ばかりだ。それも相まってか、脳が「ARDF>数学」の判断を勝手に下していやがるのだろう。私は優香の言葉を思い出した。
「ARDF沼はハマったが最後、二度と抜け出せぬ魔物じゃ」
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