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魔塔と魔法
しおりを挟む「俺も、詳しいことを知っているわけではありませんが……」
ルナシェは知らず知らずのうちに、瑠璃色のネックレスを握りしめていた。
「――――そのネックレスに込められた魔法は、もともと初代の魔塔主が、妹を守るために込めたと言われています」
ルナシェの瞳とまるっきり同じ色をした宝石。
「妹……?」
けれど、この宝石と同じ瞳の色をしてた人は、ルナシェだけではない。
ルナシェの兄、アベルも同じ瞳の色をしている。
「……お兄様は、前回の人生で」
ルナシェが断頭台に消えた日、兄のアベルは戦後処理という名目で急ぎ屋敷を離れていた。
どんなときでもルナシェのことを守ってくれていた兄、アベル。
ベリアスもすでにいなかったあの日、ルナシェのことを守ってくれる人は一人もいなかった。
「……もしかして、お兄様はギアードに」
兄の不在と魔塔は、何か関係があるのだろうか。
瑠璃色の宝石を見つめていると関係ないと考える方が、不自然にすら思えてくる。
「――――ベリアス様。私」
「ああ、アベル殿に会いに行かなければなるまい」
瑠璃色の宝石を握りしめたまま、ルナシェは頷いた。
「……そのまま幸せに暮らすという選択肢もありますよ」
「――――どういうこと?」
「魔塔には関わらない方がいい」
強く握りすぎた手が、白く血の気を失う。
けれど、確実にルナシェは人生を繰り返している。
ベリアスにもう一度会いたいという願いとともに……。
けれど、一体どうしてそんなことが可能になったのか。
ベリアスも、記憶を取り戻したにもかかわらず、その疑問は解けないままだ。
「……他には何か知っているの? グレイン」
「……姫様。アベル殿は、すでに屋敷にはいません。ギアードに赴かれました」
「どうして? お兄様は、どうしてそんな場所に」
「アベル殿も、何かを思い出したのかもしれませんね」
「え?」
アベルは昔から、魔塔由来の道具に強い関心を示していた。
そして、ルナシェの宝石に込められた力が空になったことにも気がついていた。
そして、アベルの瞳もまたルナシェと同じ瑠璃色をしている。
「……魔塔の物語でも、瑠璃色の瞳をした白薔薇のような少女は、不幸にも命を奪われます」
「――――グレイン」
「そして、瑠璃色の宝石の行方は誰にも分からなくなったはずだった」
ルナシェは、しばらく床を見つめていた。
以前の人生、ルナシェを取り巻く状況は、刻一刻と悪くなっていた。
すでに、ルナシェが裏切ったと、王国全土でまことしやかに噂されていた。
『俺が帰るまで、屋敷から出てはいけない』
あの日、アベルは慌ただしく出かけていった。
表向きは、戦後処理。不自然なほど厳重に守られたルナシェ。
けれど、護衛の裏切りにより、ルナシェは連れ出されてしまった。
「お兄様は、何か知っていらっしゃるの?」
握りしめた宝石は、何も答えてはくれない。
ベリアスが、そっとルナシェの肩を引き寄せる。
きっと、すべてを見てきた瑠璃色の宝石だけが、ただ静かに物語の展開を見守っているようだった。
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