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第3章

訪れる時と禁書 1

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「うっわぁ……。これ相手にするの? しかも、リリーナ姉さん守りながら?」
「余裕でしょう? いったいその杖で、何匹の魔獣を倒しましたか?」
「悪いけど、接近戦は苦手なんだ」
「俺が、守りますよ」

 そんな二人の言葉を聞きながら、私も山頂からが地上を眺める。
 ルンベルグ領に流れ込む、魔獣の大群。ここからら黒い点みたいに見えるけれど。

「マティ様?」

 ピヨーンッと形を変えたマティ様が、大群の中に飛び込んでいく。小さい体のスライムなんて、あっという間に大群の足元でぺちゃんこになりそうだ。

「さて、派手にいこうか!」

 ルシードの魔力が、高密度に練られ、上空にかざされた手が、流星を降らせる。

「先手必勝!」
「はぁ……。後先考えませんよね。そんなの、最後までもたないですよ!」

 それより、マティ様!
 流星みたいな魔法が降り注ぐ場所には、可愛いマティ様が!

 慌てて、現場に行きそうになるけれど、あれ?
 なんだろう、あの巨大スライム?

 魔法が消えた、焼けた大地には、紫のグラデーションをした巨大なスライムがいた。
 魔石を集めては吸収しているらしい。
 みるみる、周囲が綺麗に片付けられていく。

「ディオス様」
「さすが、マティ様ですね。それにルシードも。俺の出番は、ないかもしれません」

 その時、上空から影が刺す。

「けれど。リリーナを狙っているのも、間違いないようです」

 魔法の力は、万能なのだろうか。
 いや、ディオス様が、特別なのだろう。

 翼もないのに、空高く跳躍して、次の瞬間、先ほどの大群の中には見当たらなかった火竜が、落ちてくる。

 巨大な体躯が、地面に落ちた地響きに対し、音もなく降り立つディオス様。

「…………さて、先に進みましょうか」

 聖女ローラ・ルティラシアは、最前線で戦う騎士たちとともにあるという。
 今回の魔獣は、すでに王都の目前まで迫る。

 物語の中であれば、起こるはずのなかった出来事だ。そう、もしも、悪役令嬢であり魔王の妃の色合いをした少女の命が、捧げられていたならば。

 胸が苦しくなる。
 たくさんの人が、巻き込まれて犠牲になる。
 物語を改変したせいで。

「……リリーナの責任ではないですよ。とにかく、ルンベルグ辺境伯領の禁書庫へ行きましょう」

 ……そこには、なぜ魔王の妃と同じ色合いをした少女を捧げることで、魔獣がガルシア国から外に出なくなるのかが、書き綴られているらしい。

 その本を見つけたのは、長男のガランド兄様だ。けれど、ガランド兄様、シェアザード兄様の二人が、どんなに手を尽くしても、最終章を開くことは、できなかった。
 あの二人ができないということは、ほぼ不可能ということだ。あとは、ルシードとディオス様に期待しよう。

「…………ディオス様」
「リリーナを犠牲にしなければ、成り立たない世界なら、滅んでしまってもいいんですよ、俺は」
「そっ、それは」
「嫌だと、リリーナが言うから。まだ俺は、ここに踏みとどまっていられるんでしょうね」

 そんなことを言うディオス様が、本当に世界を大切に思っていないわけではないこと、知っている。
 ただ、少し、いや、かなり愛が重いだけで
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