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異世界で幼なじみともう一度
お忍びデート 2
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日も暮れ始めた街は、いつもと全く違う雰囲気だ。あちらこちらに並ぶ屋台も、少し怪しげだったり不思議なものに見えてくる。
「ほら、こっちだよ。とりあえず、この服のままじゃまずいから」
そういうレオン団長に手を引かれて入った店の中は、おしゃれな服で溢れていた。それでも、高級感はいつもの店に比べればそこまですごくない。
「いらっしゃいませ。可愛らしいお嬢様」
「!?」
しかし、そこにはマダムシシリーがいた。
「マダム、シシリー?」
「はじめまして?可愛らしいお嬢様。こちらのブランドも私がプロデュースしておりますのよ」
(こちらもって言っちゃってる。すでに話が合わせてあるんだ。また、はめられた)
確信犯のレオン団長を見ると、それはいい笑顔を返された。
「マダムシシリー。今日はあまり時間がないから、三十分くらいで選んでもらえるかな?」
「かしこまりました。ちなみに今、王都ではあるお2人の影響で、若い男女がお揃いの服を着るのが流行っておりますのよ?」
「ん?」
レオン団長のいい笑顔が引き攣った。
「今季の流行は、ピーコックブルーです」
「んん?」
マダムシシリーに背中を押されて、レオン団長が試着室へと連れていかれる。
それから30分、レオン団長が着せ替えられるのを堪能しながら、紳士服を元に、リリアはお揃いの服を選んでいった。
(何これ楽しい!!)
何を着ても似合うレオン団長を見ながら、お揃いの服を選んでいく。いや、むしろレオン団長に似合う服を選んでいく。
今になってリリアは、レオン団長がリリアに服を買い与えたがる気持ちがわかってしまった。
ご満悦のリリアに、振り返ったマダムシシリーがウインクした。
(マダムシシリー、グッジョブ!またお願いします)
ごきげんのリリアも、マダムシシリーにウインクを返した。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「こんなはずじゃなかったんだけどな」
「最高に楽しかった」
「リアがそう言ってくれるならいいけど」
結局2人はお揃いの布地で仕立てられたワンピースとスーツ姿だ。淡いグレーを基調にしているシンプルなデザインだが、ところどころにピーコックブルーがあしらわれている。
「また、こんな買い物したいな。レオンだん……」
急に真顔になったレオン団長がリリアの唇を、人差し指で強めに押さえつけた。かがんだ姿勢からの視線から目が離せない。
「いけない子だなリア。誰かに聞かれたらどうするんだ。レオって呼ぶ約束だ」
(急に鬼団長モード降臨?!)
最近、なんだか甘々なレオン団長しか見ていなかったリリアは、すっかり油断してしまっていた。このお方は、鬼団長とか最恐の騎士団長とか呼ばれるお方と同一人物なのだった。
(どうしよう。これはこれで……)
「さ、早く?」
「はわわわ」
「リア?」
「……レッ…………レオ」
クッとレオン団長の忍び笑いが聞かれた。リリアは少し頬を膨らませてその顔を見上げる。
「ごめん。あまりに可愛いから。さ、夜しかやっていない店もあるんだよ?行ってみよう」
レオン団長の鬼団長モードは、一瞬の幻だったのか。リリアは、意外にも木下くんと違うそんなレオン団長の一面に心惹かれてしまうようだ。
(ちょっと残念。また、訓練以外で見たいな)
そう、訓練の時には拝みたくない。それは地獄のレースの始まりを意味するから。
レオン団長に手を引かれて、少し大人な雰囲気の店にリリアは足を踏み入れた。
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