あなたがいい~妖精王子は意地悪な婚約者を捨てて強くなり、幼馴染の護衛騎士を選びます~

竜鳴躍

文字の大きさ
35 / 42

彼が消える日(後)

しおりを挟む
すみません、予約投稿ミスしましたので一度下げました。

----------------------------------------------------------------------

「俺は今、何を!?」


「何があった!!?」

「え?え?」


「お母さん。あの銀色のお兄ちゃんが助けてくれたんだよ!」

「………え?」


正気を取り戻す人たち。

神葉樹の葉の香りが悪魔避けになったことで、もしかして……とあたりをつけたルシェルが開発した『浄化液』は効果てきめんだった。


「アクセルの奴で実証実験した甲斐があった。効果てきめんだな。各国に普及させよう。」

「お兄様、やりましたね!」


後は、安全に彼らを帰宅させねば…。



――――――――――そう、思って少し油断していた。



「ああぁあ!しまった!なんで俺はこんなことを!」


悲痛な男の叫び声。


男は、セットしたミサイルの発射ボタンを押してしまい、震えてへたりこんでいる。



「俺の結界だけど、ないよりは!」
「シュナイダー!」


ぱっと国民に結界を張り、シュナイダーは一瞬で駆ける。

そして、ミサイルが発射される前に―――――――――。








「シュナイダー!ルシェル!!」

大人しくなったモルヒネを蔦で何重にもグルグル巻きにして、ハピネスの転移で駆けつけると。

そこには傷ついた人たち。

半壊した建物。


「第二王子が……。」

「私たちを守って…。」

「オオバコのことを悪く言えない…。俺たちは、俺たちは…。」


嫌な予感がする。



国境沿いの検問がある手前の広場。だった、はず。

そこに、見覚えのある人がボロボロの服で座り込んでいる。


「ルシェル殿下!」

遠くから叫ぶと、涙にぬれた貌がこちらを向いた。



「……ごふっ。」


ルシェル殿下のそばには、真っ赤な――――――――



「やぁあああ!シュナイダー!!!!」
必死に回復をかける。

ハピネスお兄様も。

でも、でもっ。追いつかない。

大事な人に死が迫る。


「………すみ……せん。あいして…す。あみゅ…し、あわせに」
「やだ!死なないで!僕の命をあげるっ、だからっ」

その言葉はモルヒネに遮られた。



「僕が癒す。」



「………え」



憑き物がとれたモルヒネの顔は、よく見ればアミュレットに少し似ている。
ルシェルとシュナイダーが似ているように、双子だから、彼もアヴァロンと似ていた。


みるみる傷がふさがり、ちぎれかけた肉は再生して繋がり、シュナイダーの顔色がよくなっていく。


モルヒネの体から光が漏れる。
その光は、暖かい光。
やがて光は珠となり、傷ついた国民たちをも癒していく。
爆薬で穢れた空気が浄化されていく。


だけど、モルヒネの体が徐々に薄くなっていく。



「モルヒネ!?」


「………いいんだ、今まで僕がやったことの償いにもならないけど。」




そうか。『悪魔』になったモルヒネには、ここまでの癒しの力は本来、『ない』。



「もう、悪魔はいない。幸せに。お兄様の子孫が幸せに世を繋いでいけば、うれしい。人間は愚かだけど、反省もできるし、うまく治めていってよ。」





そうして、「彼」、モルヒネは世界から消えた。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

氷の支配者と偽りのベータ。過労で倒れたら冷徹上司(銀狼)に拾われ、極上の溺愛生活が始まりました。

水凪しおん
BL
オメガであることを隠し、メガバンクで身を粉にして働く、水瀬湊。 ※この作品には、性的描写の表現が含まれています。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。 過労と理不尽な扱いで、心身ともに限界を迎えた夜、彼を救ったのは、冷徹で知られる超エリートα、橘蓮だった。 「君はもう、頑張らなくていい」 ――それは、運命の番との出会い。 圧倒的な庇護と、独占欲に戸惑いながらも、湊の凍てついた心は、次第に溶かされていく。 理不尽な会社への華麗なる逆転劇と、極上に甘いオメガバース・オフィスラブ!

愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます

まんまる
BL
メルン伯爵家の次男ナーシュは、10歳の時Ωだと分かる。 するとすぐに18歳のタザキル公爵家の嫡男アランから求婚があり、あっという間に婚約が整う。 初めて会った時からお互い惹かれ合っていると思っていた。 しかしアランにはナーシュが知らない愛する人がいて、それを知ったナーシュはアランに離婚を申し出る。 でもナーシュがアランの愛人だと思っていたのは⋯。 執着系α×天然Ω 年の差夫夫のすれ違い(?)からのハッピーエンドのお話です。 Rシーンは※付けます

炊き出しをしていただけなのに、大公閣下に溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 希望したのは、医療班だった。  それなのに、配属されたのはなぜか“炊事班”。  「役立たずの掃き溜め」と呼ばれるその場所で、僕は黙々と鍋をかき混ぜる。  誰にも褒められなくても、誰かが「おいしい」と笑ってくれるなら、それだけでいいと思っていた。  ……けれど、婚約者に裏切られていた。  軍から逃げ出した先で、炊き出しをすることに。  そんな僕を追いかけてきたのは、王国軍の最高司令官――  “雲の上の存在”カイゼル・ルクスフォルト大公閣下だった。 「君の料理が、兵の士気を支えていた」 「君を愛している」  まさか、ただの炊事兵だった僕に、こんな言葉を向けてくるなんて……!?  さらに、裏切ったはずの元婚約者まで現れて――!?

年下幼馴染アルファの執着〜なかったことにはさせない〜

ひなた翠
BL
一年ぶりの再会。 成長した年下αは、もう"子ども"じゃなかった――。 「海ちゃんから距離を置きたかったのに――」 23歳のΩ・遥は、幼馴染のα・海斗への片思いを諦めるため、一人暮らしを始めた。 モテる海斗が自分なんかを選ぶはずがない。 そう思って逃げ出したのに、ある日突然、18歳になった海斗が「大学のオープンキャンパスに行くから泊めて」と転がり込んできて――。 「俺はずっと好きだったし、離れる気ないけど」 「十八歳になるまで我慢してた」 「なんのためにここから通える大学を探してると思ってるの?」 年下αの、計画的で一途な執着に、逃げ場をなくしていく遥。 夏休み限定の同居は、甘い溺愛の日々――。 年下αの執着は、想像以上に深くて、甘くて、重い。 これは、"なかったこと"にはできない恋だった――。

処理中です...