義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍

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義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

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「シン!シン!!遅いわよ!全く愚図ね!」

「居候のくせに!もういい、置いていくぞ!」



「どうぞ~。」

兄と妹が豪華な馬車で学校に出かける。
うちは金持ちなのだ。



僕はシン=ヴェール。

前ヴェール伯爵の長男です。

長男っていっても一人っ子でしたけどね。


僕が5歳の時にお父様とお母様は馬車の事故で天国に旅立たれました。

おじい様もその少し前くらいにご病気で保養地から出られなくなり、この領地を誰が守っていくかということになったときに、お父様の弟であったワイナリー叔父様にそのオハチが回ってきたのです。

叔父様はその時、子爵家の養子に入っていたのですが、子爵家は奥様の妹さん夫婦に譲られ、このヴェール伯爵家を継ぎました。


叔父様には、僕と同い年のケインという男の子と、一つ下のローザという女の子がいました。
ケインは叔父様譲りの茶色の髪を短く刈りこんだ背の高い子で、将来は騎士になるそうです。
ケインならなれるんじゃないでしょうか。

ローザも性格はきついですけど、黙っていれば美人だし猫かぶりもうまいので、いい人と結婚するでしょう。
お母様のロザリア様に見た目も性格もそっくりで、銀糸のような髪と青い瞳が美しい少女です。

だから、跡取りも心配いりません。


僕は要らない子です。


暫くすると、お義父様は仕事へ、お義母様はお茶会に出かけていきます。

僕は誰もいなくなると、魔法でクリーンの魔法をかけ、食器に命を吹き込んで、自分たちで所定の場所へ戻ってもらいます。


おうちのお掃除も後片付けも完璧!


宿題も済ませているのでばっちりです。


こうして、メイドのエプロンを外して、僕は学校に行く準備をするのです。

なんで前伯爵の子だからってメイドのまねをしてるかって?
それは、僕が虐げられているからです。
僕は居候だから、メイドをしなければならないんですって。
そして、僕が家の中のことを全部やるから、メイドも執事もいらないんですって。





叔父様たちは、正直、僕のこと邪魔で仕方ないですんよね?





僕、知ってるんです。
両親を殺したのは叔父様たちだって。

それに、本当のこの家の跡取りは僕で、叔父様は僕が成人するまでの代行だって。

おじいさまの病気も、叔父様がしこんだ毒ですよね。


証拠も掴んでますから、いつだって追い出せるんですけどね。

でも、今の状況を気にしてませんし、むしろ好都合なので、放っておいているというか。





なんでかですって?



だって、僕は、すっごいすっごいすっごい美人で天才に生まれちゃったんですよ?

僕のお母さんは隣国 バティスタの筆頭公爵令嬢だったそうです。
ストロベリーブロンドに菫色の瞳。
大きな目に睫毛も長くて。

スッとした鼻筋に小ぶりでもぷっくりとした桜色の唇。


そして、僕のお父さんは国王の懐刀と言われた天才で、国政で困ったことがあると、必ず解決策を見出すので、みんなから慕われ、頼りにされているひとでした。


その要素を、僕は全て受け継いでいるのです。


下手したら王太子の婚約者にされてしまいます。
間違いありません。

ものすごく迷惑です!
だって、すっごく傲慢で、馬鹿で、大っ嫌い!
あんなのと結婚したら、お先真っ暗です!
第一、王妃になんてなった日には、めんどくさくて仕方がない!

なりたがる人の気がしれません。




僕は僕の才能をあの人たちに消費されるのは気に入りません。

領民も、何も理解していないのに何か問題があるとすぐお父さんを頼って、失敗すればすぐお父さんだけのせいにするから正直嫌いでした。

まして、今では、僕が黙っているのをいいことに、兄や妹を褒め、彼らと一緒になって僕を虐げているのですから。



だから、叔父家族と初めての顔合わせの時には変装をしていました。
ストロベリーブロンドを魔法で変色させ、気味の悪いどどめ色に。
眼には眼鏡をかけ、顔にはそばかすを描いて。

お茶会デビューもまだだったので、よかったと思いました。






人は言います。

『シンは味噌っかす。ブスで頭も悪くてなんのとりえもないお荷物。お情けで伯爵家で育ててもらっている居候。』


いいんですよ、それで。





【転移】


「おはようございます。」

「うわ!お前いつのまにかいつもいるよな。」

一瞬で教室に転移しました。

家事が終わってからでも転移があるので、始業には間に合うのです。




「なあ、シン。そういえば、考えてくれた?」

ニカっと笑う、ふわふわしたオレンジ色の髪。
日に焼けた肌で笑顔が魅力的な、たった一人の親友。

隣の席の彼に対して、同じように笑って見せた。


「うん、僕―――――。」


彼にしか僕の答えは届かない。










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