百合男子は異世界転移で、魔法学園の愛されお姉様になっちゃいます!

七海椎奈

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全力魔法!

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 魔法。
 魔法。
 魔法はすごいぞ。
 なんたって魔法だからな。

 レティシアの記憶として魔法の知識は持っているが、見るのは初めて。
 楽しみである。

 体育館のみたいなところに連れ立って入ると、別のクラスの子たちも集まっていた。
 合同授業か。
 ちょっとびっくりしてみたいに会釈してくれるのカワイイ!

「純白のスカーフの」
「白の方」

 ぽそぽそと声が聞こえる。

 おおう。
 やっぱり白スカーフは目立つか。
 まぁ、全校で一人だもんなぁ。

 一年生の集団に、黄色スカーフの3年が一人混じっただけでも目立ちまくるだろうに、さらに白だもん。
 卒業生だもん。

 目立つわ!!

 けーどー、リゼットちゃんとの思い出が詰まったスカーフ、変えたくない!
 それにレティシアには白が似合うのだ。
 うん、このままでいこう。

 この体育館っぽい建物は……いやこれ体育館じゃないか?
 体育館だな。

 魔法防壁のある場所で~とか説明されたからもっと特別な場所があるのかと思ったけど、体育館です。
 舞台とかあって、俺が知ってる体育館とまったく同じつくりの体育館です!!

 ……学校の作りも俺が知ってる学校と似てるって思ってたけど、これは似すぎだろ。
 こりゃ、異世界転生か転移した人が他にもいるな。
 まぁ、会うことはないかもだけど。

 そんなまんま体育館の中に、どでかい全身鎧とか、ゴムみたいなのでできた人形とかがぽつぽつと置いてある。

「あれに魔法をぶつけるのね」
「たぶんそうかと」
「たぶん?」
「私も初めてなんです」

 グローリアちゃんもちょっと緊張してるっぽい。

「あら、そうなの?」
「お義姉さまもされたことがないんですか?」
「これは私の時にはなかった設備ね」

 レティシアが通ってた時には、体育館は建築中だったんだよな。
 ただの体育館に見えるけど、魔法防壁とか言ってたしきっと作るのに手間もかかるんだろう。

「はい、皆さん。いつものようにグループに分かれてください」

 リゼットちゃんもとい、今はモーリア先生がきびきびと指示を出す。

「あら、レティシアさんも来たのね」
「一人で自習は寂しいですから見学に」
「いいと思うわ。じゃあ、グループのないみんなと一緒にいてね」
「はい」

 グループのないあぶれ組は、1年の3クラス合わせても十人ちょいだ。

 うちのクラスでは五人。
 俺とエリヴィラちゃんと、ドラゴンちゃんことメフティルト・シューティークロートちゃん。
 ロズリーヌ・ドゥラノアちゃんはなんとサキュバスらしい。
 ほえー、見た目フツーの女の子なんだけどな。
 あともう一人……あれ? マリオンちゃんがいたはずなんだけど?

「それでは、炎のグループ、一番から!」

 モーリア先生の声が響く。

 おっと、そうだ。
 魔法魔法、魔法ですよ!!

「一番です。よろしくお願いいたします」

 最初の子が鎧に向かって立つ。
 距離は3メートルぐらいかな?

 小さく深呼吸をしながら唇を動かし、無言のまま何かを呟く。

「えいっ!」

 大きく腕を振ると、手のひらからぱっと炎がひらめいた。
 すぐ消えた。

「ありがとうござました」

 え?
 終わり?

 こんなこと言っちゃいけないし、思ってもいけないとはわかっているんだけど……

 なんかしょぼくない!?

 いやだって、確かに炎出たよ? ぱあって。
 でも一瞬だったし、ぶっちゃけ鎧に届いてなかったよね?

「あれで、全力……」
「炎の方は仕方ないです」

 エリヴィラちゃんが小さく笑う。
 おっと、言っちゃいけないと思ってたのに口に出てたかっ!
 しかし、興味深いこと言ってたな。

「あら、どうして?」
「炎はありふれて一番便利な魔法ですが、一番危険な魔法でもありますから、炎の魔法を持つ子供は、まず力を制御することから覚えさせられます」

 ああ、火事とか怖いもんな。

「だから多分、全力を出せと言われても、つい制御してしまうんでしょう」
「だろーね」

 メフティルトちゃんが、チャラチャラとアクセサリーを指でもてあそぶ。

「ずーっと魔法は使うな制御しろ。ってやり続けて、今日からは強い魔法を使うのが偉いとか言われても困るっしょ」
「本当にそう」

 エリヴィラちゃんも険しい顔で頷く。

 ふーん、魔法が使えるもの大変なもんだな。

「お義姉さまっ」

 グローリアちゃんが列から走ってきた。

「もうすぐあたしたちの番ですから、見ていてくださいね!」
「ええ。もちろん」

 お、そういえばグローリアちゃんは物置一つ吹き飛ばしたことがあるって言ってたっけ。
 ちょっと期待できるかも!
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