119 / 197
お預け後の夜 1
しおりを挟む
年始のパーティーも終盤を迎え、順番に帰宅する人たちが増えてきた。
伊織くんの妻として彼の隣で何度もお辞儀をして挨拶を繰り返す時間もいよいよ終わりのようだ。
「疲れただろ?」
「まぁ少しね」
私は帰宅する前にビュッフェの食事を最後に食べきるためにお皿に料理を盛る。
食意地が張っているかと思われるが、本当に美味しいから仕方ない。
そんな姿を伊織くんはクスッと笑いながら見守ってくれる。
こんなところまで伊織くんは私に甘い。
「俺もいっぱい食べようかな」
「爆食夫婦だね」
そんなことを言い合いながらお互いに取り皿にこれでもかと言うほどの料理を乗せて顔を見合って食べる。
肩の荷がおりたことによってさっきよりも食事がさらに美味しい気がした。
ビュッフェを最後まで楽しみつつ、参加してくれた人たちが全員帰るまで私たちは残る。
一通り見送った私たちはいよいよ帰り支度を始めた。
お義父さんたちはおじい様たちと少し話があるようでもう少し残るとのことだ。
私はというと、麗華さんに起こった詳細を伝える連絡を入れるため伊織くんと別れた。
宴会会場を出て邪魔にならないエントランスまで来てから麗華さん宛に電話を入れる。
数コール後にすぐ麗華さんは出てくれた。
「麗華さん?今お時間いいですか?」
『もちろんです。どうでしたか?』
「一旦は大丈夫そうです。快くではなかったですけど、納得はしてもらえました」
『よかった⋯⋯⋯』
電話の向こう側で心底安心したように息を吐いたのが分かった。
きっと今は大切な彼と一緒にいるだろうが、気が気ではなかったのだろう。
麗華さんもまたとても勇気のある選択をしたのだから、私たちの動向が気になるのも無理はない。
本当の意味でやっと大切な彼と過ごす時間を楽しめるのはこれからになるかもしれない。
「伊織くんが考えてくれた案で一旦納得してもらえました。きっとこれから麗華さんにも協力してもらいたいこともあると思います。その時はぜひ、お力をお借りしたいです」
『もちろんですよ。全力でお応えします』
「ありがとうございます。今は彼と一緒ですか?」
『はい。ちょうど誕生日のケーキを食べようって話してたところです』
「邪魔してしまってごめんなさい。私、切りますね」
『心春さん、待ってください』
電話を切ろうとすると向こうから焦ったようにそれを止める麗華さんの声が聞こえてきた。
大切な時間の邪魔になりたくはなかったが、まだ何か伝えるべき内容があっただろうか。
『私、心春さんに出会えてよかった。東雲さんと結婚しろって話がなきゃ、心春さんに会えなかったと思うと、この話も無駄ではなかったと思えます』
「麗華さん⋯⋯」
『心春さんと出会ってからいろんなことが上手くいっています。背中を押してくれたあなたがいたからです』
「嬉しいです。麗華さんのそんな存在になれて」
『これからケーキと一緒にあのカップでコーヒーを飲もうと思っています』
一緒に出かけた時に大切な人を想って選んだカップを使える時間が作れたようですごく嬉しい。
あのカップを選んでいた麗華さんは本当に幸せそうで見ていて自然と笑顔になれた。
『今度、改めて彼から必ずお礼を言わせてください』
「わざわざありがとうございます」
『お礼を言っても足りないくらいのことをしてくれました』
「そんなことないですよ。最終的に行動したのは麗華さんなんですから」
こうやって麗華さんと次の話ができることはとても嬉しいことだ。
株式会社kisaragiの令嬢で私とはあまり交わるべきじゃない立場かもしれないが、単純に麗華さんという人柄に惹かれたのは事実だった。
伊織くんの妻として彼の隣で何度もお辞儀をして挨拶を繰り返す時間もいよいよ終わりのようだ。
「疲れただろ?」
「まぁ少しね」
私は帰宅する前にビュッフェの食事を最後に食べきるためにお皿に料理を盛る。
食意地が張っているかと思われるが、本当に美味しいから仕方ない。
そんな姿を伊織くんはクスッと笑いながら見守ってくれる。
こんなところまで伊織くんは私に甘い。
「俺もいっぱい食べようかな」
「爆食夫婦だね」
そんなことを言い合いながらお互いに取り皿にこれでもかと言うほどの料理を乗せて顔を見合って食べる。
肩の荷がおりたことによってさっきよりも食事がさらに美味しい気がした。
ビュッフェを最後まで楽しみつつ、参加してくれた人たちが全員帰るまで私たちは残る。
一通り見送った私たちはいよいよ帰り支度を始めた。
お義父さんたちはおじい様たちと少し話があるようでもう少し残るとのことだ。
私はというと、麗華さんに起こった詳細を伝える連絡を入れるため伊織くんと別れた。
宴会会場を出て邪魔にならないエントランスまで来てから麗華さん宛に電話を入れる。
数コール後にすぐ麗華さんは出てくれた。
「麗華さん?今お時間いいですか?」
『もちろんです。どうでしたか?』
「一旦は大丈夫そうです。快くではなかったですけど、納得はしてもらえました」
『よかった⋯⋯⋯』
電話の向こう側で心底安心したように息を吐いたのが分かった。
きっと今は大切な彼と一緒にいるだろうが、気が気ではなかったのだろう。
麗華さんもまたとても勇気のある選択をしたのだから、私たちの動向が気になるのも無理はない。
本当の意味でやっと大切な彼と過ごす時間を楽しめるのはこれからになるかもしれない。
「伊織くんが考えてくれた案で一旦納得してもらえました。きっとこれから麗華さんにも協力してもらいたいこともあると思います。その時はぜひ、お力をお借りしたいです」
『もちろんですよ。全力でお応えします』
「ありがとうございます。今は彼と一緒ですか?」
『はい。ちょうど誕生日のケーキを食べようって話してたところです』
「邪魔してしまってごめんなさい。私、切りますね」
『心春さん、待ってください』
電話を切ろうとすると向こうから焦ったようにそれを止める麗華さんの声が聞こえてきた。
大切な時間の邪魔になりたくはなかったが、まだ何か伝えるべき内容があっただろうか。
『私、心春さんに出会えてよかった。東雲さんと結婚しろって話がなきゃ、心春さんに会えなかったと思うと、この話も無駄ではなかったと思えます』
「麗華さん⋯⋯」
『心春さんと出会ってからいろんなことが上手くいっています。背中を押してくれたあなたがいたからです』
「嬉しいです。麗華さんのそんな存在になれて」
『これからケーキと一緒にあのカップでコーヒーを飲もうと思っています』
一緒に出かけた時に大切な人を想って選んだカップを使える時間が作れたようですごく嬉しい。
あのカップを選んでいた麗華さんは本当に幸せそうで見ていて自然と笑顔になれた。
『今度、改めて彼から必ずお礼を言わせてください』
「わざわざありがとうございます」
『お礼を言っても足りないくらいのことをしてくれました』
「そんなことないですよ。最終的に行動したのは麗華さんなんですから」
こうやって麗華さんと次の話ができることはとても嬉しいことだ。
株式会社kisaragiの令嬢で私とはあまり交わるべきじゃない立場かもしれないが、単純に麗華さんという人柄に惹かれたのは事実だった。
7
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる