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上司と部下(2)
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顔を覗き込もうとすると焦げ茶の髪の隙間から覗く瞳が大きく揺れ、ぶわっと頬が一気に赤くなった。
緊張しているのか瞬きを繰り返し口をパクパクとさせている。
「あの、僕でよければ⋯!や、やらせてください!」
「可愛いだろ~横山。緊張しいですぐ赤くなっちゃう所があれだけど、いいやつなんだよ」
唯斗は仕事もできるし笠井さんも彼を評価しているため、そんな彼がチームに入れたいというのであればきっと力になってくれるだろう。
同期として唯斗への信頼は厚いため、彼をチームに迎え入れることにした。
「決まりだね。横山くんよろしくね」
「よろしくお願いします!」
「で、私がもう1人チームに入れたい子なんだけど、たまたま横山くんと同期かも」
キョロキョロと周りを確認すると資料を片手に歩く彼女の姿を見つけた。
忙しそうに資料を運ぶ姿をいつも見ているが、彼女はめんどくさい仕事やいわゆる雑用、と言われてしまうような仕事も進んでやってくれる。
一生懸命に仕事に取り組む姿は周りからの評価も高く、チャンスがあれば何か大きな仕事を任せたいと笠井さんも言っていた。
新卒で入社してきた彼女の指導係を任されていて、私自身もチャンスを作ってあげたいと思っていたところだ。
「あ、いた。直井ちゃん!ちょっといい?」
「はい!なんでしょう陽葵先輩!仕事ですか?」
「うん。ちょっと直井ちゃんにお願いしたいことがあってね」
目をキラキラとさせ私の言葉を待つ 直井夏海ちゃんは本当に純粋で可愛がりたくなる後輩だ。
指導係をしている後輩と一緒の案件に携われることも純粋に嬉しい。
「レシピアプリの開発チームに入ってくれないかな?私と唯斗と横山くんと4人でチームを組みたいの」
「えぇ⋯⋯私が陽葵先輩と一緒のチームに⋯?」
「どうかな?」
「いいんですか!すっごく嬉しいです!陽葵先輩は私の憧れなので一緒に案件を任せていただけてすごく嬉しいです!頑張ります」
素直にこんなことを言われると恥ずかしいけどやっぱり嬉しい。
だからこそ直井ちゃんにはたくさん成長して欲しいし、その機会を指導係として与えたかった。
「じゃあ今日から私たちはチーム!この案件を成功させるためにみんなで頑張ろう。みんな力を貸してね」
「よろしくな~直井ちゃんも横山も」
「はい!よろしくお願いします副島先輩!」
「お願いします!百瀬さん、副島さん」
チームとして私たちが始動した瞬間だった。
一旦、直井ちゃんと横山くんはチームに合流するために今抱えている仕事を片付けるため別れる。
唯斗には預かっていた資料を2部渡し、それを横山くんにも渡してもらうように頼んでから私たちもそれぞれ作業に戻った。
資料に目を通しながらパソコンで作業していると、とんとんと肩を叩かれ振り向くと先輩が怪しげな笑みを浮かべている。
「ど、どうしました?その笑みはなんですか」
「ふふふバレた~?今日さ四ノ宮さんの歓迎会する予定じゃん?」
「あれ、今日でしたっけ?」
「ちょっと~忘れてたの?今日だよ!」
そういえば先輩たちが理玖くんの歓迎会を企画してくれているんだった。
歓迎会というより理玖くんへお近づきになりたい会、の方が合っているのではとも思うがそれは心の中に閉まっておこう。
「もう1回、笠井さんに声掛けておいてね!百瀬ちゃんからの方が来てくれるだろうし」
「私が言っても同じだと思いますけど」
「笠井さん、百瀬ちゃんのこと可愛がってるから!可愛い後輩からの頼みはきっと断れないから!頼んだよ!」
「あ⋯はい、分かりました。伝えておきますね」
なぜか周りから私と笠井さんが謎の絆で結ばれていると思われている。
確かに指導係をしてもらったのは事実だが、私が言えば笠井さんがなんでも許してくれると思われがちだが全くそうではない。
あの人はとてつもなく口が悪いし、仕事は完璧だが他のことはめんどくさがり屋だ。
私が言ったところで何か変わるかは分からないが、一応先輩に約束した手前、もう1度声をかけておくべきだろう。
パソコンと資料を一旦片付けてデスクに向かって仕事をする笠井さんの元へと向かった。
真剣な表情でパソコンとにらめっこする笠井さんはやっぱりかっこよくて憧れの先輩だ。
私に気づいた笠井さんが顔を上げ、どうした?と呟く。
少しだけ言いずらそうにモジモジしていると何かを察した笠井さんはため息をついて呆れた顔で私を見つめる。
「どうせ今日の歓迎会に来るようにもう1回声掛けとけ、とでも言われたんだろ」
「うっ⋯ご名答。よくお分かりで⋯⋯」
「俺が百瀬を可愛がってるってなぜか思われてるからなぁ。百瀬から言われたら断らないとでも思ってるんだろ」
「エスパーですか笠井さん。全部当たってるんですけど」
「あいつらが考えてることくらい手に取るように分かるわ」
緊張しているのか瞬きを繰り返し口をパクパクとさせている。
「あの、僕でよければ⋯!や、やらせてください!」
「可愛いだろ~横山。緊張しいですぐ赤くなっちゃう所があれだけど、いいやつなんだよ」
唯斗は仕事もできるし笠井さんも彼を評価しているため、そんな彼がチームに入れたいというのであればきっと力になってくれるだろう。
同期として唯斗への信頼は厚いため、彼をチームに迎え入れることにした。
「決まりだね。横山くんよろしくね」
「よろしくお願いします!」
「で、私がもう1人チームに入れたい子なんだけど、たまたま横山くんと同期かも」
キョロキョロと周りを確認すると資料を片手に歩く彼女の姿を見つけた。
忙しそうに資料を運ぶ姿をいつも見ているが、彼女はめんどくさい仕事やいわゆる雑用、と言われてしまうような仕事も進んでやってくれる。
一生懸命に仕事に取り組む姿は周りからの評価も高く、チャンスがあれば何か大きな仕事を任せたいと笠井さんも言っていた。
新卒で入社してきた彼女の指導係を任されていて、私自身もチャンスを作ってあげたいと思っていたところだ。
「あ、いた。直井ちゃん!ちょっといい?」
「はい!なんでしょう陽葵先輩!仕事ですか?」
「うん。ちょっと直井ちゃんにお願いしたいことがあってね」
目をキラキラとさせ私の言葉を待つ 直井夏海ちゃんは本当に純粋で可愛がりたくなる後輩だ。
指導係をしている後輩と一緒の案件に携われることも純粋に嬉しい。
「レシピアプリの開発チームに入ってくれないかな?私と唯斗と横山くんと4人でチームを組みたいの」
「えぇ⋯⋯私が陽葵先輩と一緒のチームに⋯?」
「どうかな?」
「いいんですか!すっごく嬉しいです!陽葵先輩は私の憧れなので一緒に案件を任せていただけてすごく嬉しいです!頑張ります」
素直にこんなことを言われると恥ずかしいけどやっぱり嬉しい。
だからこそ直井ちゃんにはたくさん成長して欲しいし、その機会を指導係として与えたかった。
「じゃあ今日から私たちはチーム!この案件を成功させるためにみんなで頑張ろう。みんな力を貸してね」
「よろしくな~直井ちゃんも横山も」
「はい!よろしくお願いします副島先輩!」
「お願いします!百瀬さん、副島さん」
チームとして私たちが始動した瞬間だった。
一旦、直井ちゃんと横山くんはチームに合流するために今抱えている仕事を片付けるため別れる。
唯斗には預かっていた資料を2部渡し、それを横山くんにも渡してもらうように頼んでから私たちもそれぞれ作業に戻った。
資料に目を通しながらパソコンで作業していると、とんとんと肩を叩かれ振り向くと先輩が怪しげな笑みを浮かべている。
「ど、どうしました?その笑みはなんですか」
「ふふふバレた~?今日さ四ノ宮さんの歓迎会する予定じゃん?」
「あれ、今日でしたっけ?」
「ちょっと~忘れてたの?今日だよ!」
そういえば先輩たちが理玖くんの歓迎会を企画してくれているんだった。
歓迎会というより理玖くんへお近づきになりたい会、の方が合っているのではとも思うがそれは心の中に閉まっておこう。
「もう1回、笠井さんに声掛けておいてね!百瀬ちゃんからの方が来てくれるだろうし」
「私が言っても同じだと思いますけど」
「笠井さん、百瀬ちゃんのこと可愛がってるから!可愛い後輩からの頼みはきっと断れないから!頼んだよ!」
「あ⋯はい、分かりました。伝えておきますね」
なぜか周りから私と笠井さんが謎の絆で結ばれていると思われている。
確かに指導係をしてもらったのは事実だが、私が言えば笠井さんがなんでも許してくれると思われがちだが全くそうではない。
あの人はとてつもなく口が悪いし、仕事は完璧だが他のことはめんどくさがり屋だ。
私が言ったところで何か変わるかは分からないが、一応先輩に約束した手前、もう1度声をかけておくべきだろう。
パソコンと資料を一旦片付けてデスクに向かって仕事をする笠井さんの元へと向かった。
真剣な表情でパソコンとにらめっこする笠井さんはやっぱりかっこよくて憧れの先輩だ。
私に気づいた笠井さんが顔を上げ、どうした?と呟く。
少しだけ言いずらそうにモジモジしていると何かを察した笠井さんはため息をついて呆れた顔で私を見つめる。
「どうせ今日の歓迎会に来るようにもう1回声掛けとけ、とでも言われたんだろ」
「うっ⋯ご名答。よくお分かりで⋯⋯」
「俺が百瀬を可愛がってるってなぜか思われてるからなぁ。百瀬から言われたら断らないとでも思ってるんだろ」
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