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成長と期待と少しの嫉妬
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月日は流れ10月中旬の水曜日。
私は理玖くんの助言通り、同期である唯斗と後輩の横山くん、そして直井ちゃんと正式にチームを組むことになった。
これから4人で様々な案件をこなしていくことになるため、一緒に過ごす時間も必然と長くなる。
今日も私たちは4人集まって現在抱えている案件の話し合いをしていた。
「さて⋯どうするかね。この案件」
「通販ファッションサイトのアプリ作成ですもんね。僕はあまり通販とかしないのでいい案が思い浮かばないです⋯」
「確かに。横山は絶対服とか買う時は店に買いに行きそう」
「え、すごい思い込みです。だけど合ってます。服とかお店に行って実物見て買いたいタイプです」
唯斗の隣で頭を抱えて悩む横山くんを見つめながら私と直井ちゃんは目を合わせて微笑み合う。
唯斗と横山くんの相性はとても良くて、本当の師弟関係のようだ。
「でも逆に蓮くんのその店頭に見に行きたいという感想はアプリ制作に必要な意見ですよね!」
「確かに直井ちゃんの言う通り、横山くんのその意見は大切だね。いい意見をありがとう」
「も、百瀬さんに褒められた⋯⋯」
顔を俯かせながらポツリと呟いた横山くんの顔は赤く染まっていた。
褒められることにあまり慣れていないのかお礼を言ったり少し褒めるだけで横山くんはいつも恥ずかしそうに顔を赤くさせる。
そんな所がとても可愛くて、甘やかしてあげたくなる母性本能がくすぐられる気がした。
彼は先輩に可愛がられるそんな才能を持っている。
「私としては失敗したくないって気持ちはすごく分かります!買ったのに結局着れなかったが一番避けたいです」
「確かにクライアントの希望の中にもそういうの書いてあったな」
「例えばさ、購入履歴を元に的確なサイズをアドバイスする機能とかつけるのどうかな?前買ってたサイズはこれだから、この服ならこのサイズオススメですよ、みたいな」
完全に安心できるわけではないかもしれないが、着たことのある服との比較があれば少しくらい安心できるかもしれない。
買って着れなかったを1番避けたいと思うのはユーザーの声でも大きいためいい案だと思う。
「えーそれめちゃいいじゃん!さすが陽葵」
「ううん、みんなの意見のおかげだからありがとう」
テーブルを囲んでパソコンに向き合いながら作業するこの時間がすごく有意義だ。
チームを組むことを了承してくれた理玖くんには感謝しかない。
しばらく4人で企画書を練っていると私たちの元に理玖くんがやって来た。
チーフである彼が現れたため横山くんや直井ちゃんは少し緊張しているようだ。
「どうしました?」
「企画中にごめんよ。ちょっと話があって、いいかな?」
「はい」
「横山くんも来てもらえる?」
「は、はい⋯」
理玖くんに呼ばれた私と横山くんは彼について空いていた会議室へと案内された。
そこには腕を組みながら座っている笠井さんもいる。
このメンバーが呼ばれた理由が分からず、促されるまま私たちは空いていた椅子に腰をかけた。
向かい合うように理玖くんや笠井さんが座っている。
「あの、一体なんの用でしょうか⋯⋯」
「怒られるかと思ってんのか?」
「いや、怒られるようなことをした覚えはないので」
「怒るために呼び出したわけじゃねぇよ。安心しろ」
そう言って小さく微笑んだ笠井さんの姿を見て隣で少し肩の力が抜けたのか、そっと息を吐く気配を感じた。
横山くんにとっては上司が2人もいるためそりゃ私よりも緊張するだろう。
「実はねまぁ相談があるんだけど」
「はい」
「12月の頭にエンジニアやプログラマーたちが集まる講演会があるの知ってる?」
「確か、毎年1年に1回やってるあれですよね。大手企業や海外の有名企業まで来て意見交流したりする⋯⋯」
「そうそう。それに参加してもらいたいんだよね」
突然の理玖くんの言葉にキョトンとしてしまう。
本来この講演会はいつももっと上の立場の人たちが参加している。
それを私や横山くんにお願いするなんて絶対裏があるに違いない。
そう思い怪しげなものを見るような視線を理玖くんに向けると、少しだけ困ったように笑った。
「参加するのは百瀬さんや横山くんだけじゃない。笠井さんもだよ」
「この3人でってことですか?」
「そういうことだ」
この3人での参加は余計に理解が追いつかない。
それは横山くんも同じなようで、頭にいっぱいハテナが浮かんでいるようだ。
「あの、なぜ僕まで?百瀬さんが参加されるのはなんとなく分かりますけど、僕が参加する理由が⋯⋯」
「それは横山くん自身もなんとなく気づいているんじゃないかな?」
「っ!」
「横山くんの予想通りだよ」
今度は私だけが置いてけぼりになっているようだ。
この場にいる私だけが話についていけてない。
理玖くんも笠井さんもこの話の真意を知っていそうなのに何も言わないのが、これ以上踏み込むべきではないと頭の中で警告が鳴る。
私は黙って3人を見守った。
「1泊2日の泊まりになるからそのつもりでいてね。詳細はまた追って連絡する」
「はい。かしこまりました」
「今回このメンバーを選んだ理由は期待してるからだよ。百瀬さんもチームリーダーとしてしっかり取り組み成果を出してくれたし、横山くんも若いながらそれに貢献してくれている。だから理由はそれだけじゃない」
「これからもっと成長できる人材だと判断して2人を選んだ。そういうことだからもっと嬉しそうにしていいんだぞ」
これはきっと2人なりの背中の押し方なのだろう。
尊敬している上司の期待に応えたいしもっと成長したい気持ちはきっと私も横山くんも同じだ。
素直にその言葉を受け取り、成長の糧としようと思う。
隣に座る横山くんの曇った表情が未だに残ることが少し気になった。
私は理玖くんの助言通り、同期である唯斗と後輩の横山くん、そして直井ちゃんと正式にチームを組むことになった。
これから4人で様々な案件をこなしていくことになるため、一緒に過ごす時間も必然と長くなる。
今日も私たちは4人集まって現在抱えている案件の話し合いをしていた。
「さて⋯どうするかね。この案件」
「通販ファッションサイトのアプリ作成ですもんね。僕はあまり通販とかしないのでいい案が思い浮かばないです⋯」
「確かに。横山は絶対服とか買う時は店に買いに行きそう」
「え、すごい思い込みです。だけど合ってます。服とかお店に行って実物見て買いたいタイプです」
唯斗の隣で頭を抱えて悩む横山くんを見つめながら私と直井ちゃんは目を合わせて微笑み合う。
唯斗と横山くんの相性はとても良くて、本当の師弟関係のようだ。
「でも逆に蓮くんのその店頭に見に行きたいという感想はアプリ制作に必要な意見ですよね!」
「確かに直井ちゃんの言う通り、横山くんのその意見は大切だね。いい意見をありがとう」
「も、百瀬さんに褒められた⋯⋯」
顔を俯かせながらポツリと呟いた横山くんの顔は赤く染まっていた。
褒められることにあまり慣れていないのかお礼を言ったり少し褒めるだけで横山くんはいつも恥ずかしそうに顔を赤くさせる。
そんな所がとても可愛くて、甘やかしてあげたくなる母性本能がくすぐられる気がした。
彼は先輩に可愛がられるそんな才能を持っている。
「私としては失敗したくないって気持ちはすごく分かります!買ったのに結局着れなかったが一番避けたいです」
「確かにクライアントの希望の中にもそういうの書いてあったな」
「例えばさ、購入履歴を元に的確なサイズをアドバイスする機能とかつけるのどうかな?前買ってたサイズはこれだから、この服ならこのサイズオススメですよ、みたいな」
完全に安心できるわけではないかもしれないが、着たことのある服との比較があれば少しくらい安心できるかもしれない。
買って着れなかったを1番避けたいと思うのはユーザーの声でも大きいためいい案だと思う。
「えーそれめちゃいいじゃん!さすが陽葵」
「ううん、みんなの意見のおかげだからありがとう」
テーブルを囲んでパソコンに向き合いながら作業するこの時間がすごく有意義だ。
チームを組むことを了承してくれた理玖くんには感謝しかない。
しばらく4人で企画書を練っていると私たちの元に理玖くんがやって来た。
チーフである彼が現れたため横山くんや直井ちゃんは少し緊張しているようだ。
「どうしました?」
「企画中にごめんよ。ちょっと話があって、いいかな?」
「はい」
「横山くんも来てもらえる?」
「は、はい⋯」
理玖くんに呼ばれた私と横山くんは彼について空いていた会議室へと案内された。
そこには腕を組みながら座っている笠井さんもいる。
このメンバーが呼ばれた理由が分からず、促されるまま私たちは空いていた椅子に腰をかけた。
向かい合うように理玖くんや笠井さんが座っている。
「あの、一体なんの用でしょうか⋯⋯」
「怒られるかと思ってんのか?」
「いや、怒られるようなことをした覚えはないので」
「怒るために呼び出したわけじゃねぇよ。安心しろ」
そう言って小さく微笑んだ笠井さんの姿を見て隣で少し肩の力が抜けたのか、そっと息を吐く気配を感じた。
横山くんにとっては上司が2人もいるためそりゃ私よりも緊張するだろう。
「実はねまぁ相談があるんだけど」
「はい」
「12月の頭にエンジニアやプログラマーたちが集まる講演会があるの知ってる?」
「確か、毎年1年に1回やってるあれですよね。大手企業や海外の有名企業まで来て意見交流したりする⋯⋯」
「そうそう。それに参加してもらいたいんだよね」
突然の理玖くんの言葉にキョトンとしてしまう。
本来この講演会はいつももっと上の立場の人たちが参加している。
それを私や横山くんにお願いするなんて絶対裏があるに違いない。
そう思い怪しげなものを見るような視線を理玖くんに向けると、少しだけ困ったように笑った。
「参加するのは百瀬さんや横山くんだけじゃない。笠井さんもだよ」
「この3人でってことですか?」
「そういうことだ」
この3人での参加は余計に理解が追いつかない。
それは横山くんも同じなようで、頭にいっぱいハテナが浮かんでいるようだ。
「あの、なぜ僕まで?百瀬さんが参加されるのはなんとなく分かりますけど、僕が参加する理由が⋯⋯」
「それは横山くん自身もなんとなく気づいているんじゃないかな?」
「っ!」
「横山くんの予想通りだよ」
今度は私だけが置いてけぼりになっているようだ。
この場にいる私だけが話についていけてない。
理玖くんも笠井さんもこの話の真意を知っていそうなのに何も言わないのが、これ以上踏み込むべきではないと頭の中で警告が鳴る。
私は黙って3人を見守った。
「1泊2日の泊まりになるからそのつもりでいてね。詳細はまた追って連絡する」
「はい。かしこまりました」
「今回このメンバーを選んだ理由は期待してるからだよ。百瀬さんもチームリーダーとしてしっかり取り組み成果を出してくれたし、横山くんも若いながらそれに貢献してくれている。だから理由はそれだけじゃない」
「これからもっと成長できる人材だと判断して2人を選んだ。そういうことだからもっと嬉しそうにしていいんだぞ」
これはきっと2人なりの背中の押し方なのだろう。
尊敬している上司の期待に応えたいしもっと成長したい気持ちはきっと私も横山くんも同じだ。
素直にその言葉を受け取り、成長の糧としようと思う。
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