【R18/TL】ハイスペックな元彼は私を捉えて離さない

春野カノン

文字の大きさ
65 / 136

予期せぬタイミングでの紹介(4)

しおりを挟む
お母さんはそれ以上言ってくることはなかった。
だけどその横顔はとても穏やかで受け入れてくれたんだとひと目見て分かる。


「陽葵ちゃん。これ持ってってくれる?そしたらもう運ぶだけだから座ってていいよ」

「うん分かった」


カルパッチョを持ってダイニングテーブルに向かうと既にいい感じにお酒を飲んで柔らかい雰囲気のお父さんたちが迎えてくれた。
理玖くんはこの短時間で2人の心を掴んだようでかなり打ち解けている。


「陽葵。理玖すげーいいやつじゃねーか」

「お兄ちゃん酔ってるの?」

「俺は飲んでねーよ」

「はいはい料理できたわよ~!机空けてちょうだい!」


食卓のテーブルにはこれでもかというほどの料理が並ぶ。
隣に座る理玖くんもわくわくしているようで美味しそう、とボソッと呟いていた。


全員が席について自分の身体の前で両手を合わせる。
その光景をぽかんと見つめる理玖くんにすかさず説明をした。


「私たちの家族はねご飯食べる前はみんな揃って必ずいただきますをするようにしてるの。だから理玖くんも一緒にいい?」

「素敵だね。ぜひ一緒にやらせて」


全員で手を合わせてお父さんの号令に合わせていただきますをした。
そしてその後、取り皿に各々分けてお母さんが作ってくれたお昼ご飯を食べ始める。


「はい陽葵ちゃんの好きな唐揚げ~お姉さんが取ってあげる」

「陽葵。カルパッチョも好きだろ?皿こっちに出して、取ってやるから」

「ここにもあるぞ。陽葵食べるか?」


音さんもお兄ちゃんもお父さんもみんなこぞって私の取り皿を料理で埋めつくそうとしてくる。
そんな光景を見ながら理玖くんは幸せそうに微笑んでいた。


「なんか⋯陽葵ちゃんはすごく愛されて育ったんですね。だからこんなにも素敵な人になったんだ」

「⋯⋯そうだな。俺も母さんも太陽も音ちゃんもみんな陽葵が可愛くて仕方ない」

「俺らと同じように愛情を注いでくれるような人が陽葵の近くにいてくれて良かったよ」


きっと私の家族は全員私に対してすこぶる甘いしとっても過保護だ。
甘やかされて育てられたに違いない。


だからこそ私のことを私以上に大切に想ってくれる家族からしたら、彼氏という存在も自分たちと同じくらい私を大切にしてくれないと許せないと思ってくれてるんだろう。


その点、理玖くんはかなり私に甘い。
たっぷり甘やかされているしどことなくその感じはお兄ちゃんにも似ている。


「陽葵を泣かせないでくれ。俺の願いはそれだけだ。頼んだよ理玖くん」

「はい。約束します。陽葵ちゃんを1番に考えます」

「陽葵を泣かせたら理玖でも俺たちが黙っちゃいないからな」


お兄ちゃんが言うと冗談に聞こえない。
それくらい大事にされているのが伝わってくる。


「はい。ちゃんと陽葵ちゃんとの未来を考えてます。誰よりも大切にするので安心してください」


予期せぬタイミングでの挨拶となったにも関わらず、理玖くんは終始余裕そうだった。
緊張すら感じていないようにいつもと変わらない笑みを浮かべる。


その後はとても穏やかに時間が過ぎていった。
お母さんが作ってくれた料理は全員でペロッと完食し、お兄ちゃんとお父さんが買ってきてくれたケーキや飲み物を飲んで休憩する。


あっという間に時間は過ぎていき、夕方となった。
そろそろ家に帰ろうと思い身支度を始めるとお母さんが作り置きしてくれた惣菜を持たせてくれる。


「お母さんありがとう」

「理玖くんと一緒に食べなさい。またいつでも作ってあげるから、ちゃんと顔見せてよ?」

「うん。また来るね」

「陽葵、身体には気をつけろよ」

「お父さんもね。無理しちゃやだよ」


玄関まで見送ってくれるお父さんとお母さん。
その横で音さんは大袈裟に口をつぐんで悲しそうな表情を浮かべていた。


「陽葵ちゃんまたすぐ会いに行くからね。今度は私の弟も一緒に会いに行くね」

「うん。2人に会えるの楽しみにしてるね」

「太陽、ちゃんと安全に送ってってよ。ケガとかさせたら絶対だめだからね」

「分かってるわ。安全に送り届けるに決まっとるだろ」


家を出る前に理玖くんが深々と頭を下げる。
最後まで礼儀正しい理玖くんを見ていると彼を家族に紹介してよかったと心から思えた。


(こういう所、ほんとかっこいいんだよなぁ)


「何から何までありがとうございました。ご飯もすごく美味しかったです」

「いーえ。理玖くんならいつでも大歓迎よ!」

「陽葵ちゃんとセットでねまた来て!」

「はい。またお邪魔させてください。それでは」


家を出た私たちはお兄ちゃんが駅まで送ってくれるとのことで車に乗り込んだ。
車内では穏やかな時間が過ぎていく。


お兄ちゃんも理玖くんを気に入ってくれたみたいだし、お父さんもなんだかんだ楽しそうだった。
それもこれも理玖くんが頑張ってくれたおかげだ。


「また陽葵の家行くから。身体には気をつけろよ」

「うん。お兄ちゃんもね」

「理玖。陽葵のこと頼んだぞ」

「はい。ありがとうございました」


あっという間に駅に着いた私たちはお兄ちゃんの車が見えなくなるまで手を振って見送った。
下ろした手はそのまま理玖くんの長い指に絡め取られる。


ふと視線を理玖くんに向けると愛おしいと叫ばれているかのような優しい眼差しが向けられており、思わず心臓がキュンと高鳴った。


「すげー楽しかった。陽葵ちゃんの家族、素敵な人たちばかりだね」

「そうかな?なんか恥ずかしいな⋯みんな過保護すぎて困っちゃう」

「ううん、そんなことないよ。陽葵ちゃんがどれだけ愛されて大切にされてきたか、少しの時間を過ごしただけでも伝わってきた」


理玖くんは人目もはばからず、絡めた指をそのまま自分に引き寄せ自分の胸に私を閉じこめる。
厚い胸板に身体を預け、ぎゅっと抱きしめられると温かくて心まで溶けていくようだ。


「俺も陽葵ちゃんの家族みたいにたくさんの愛情を陽葵ちゃんに注ぎたい」

「今も十分だよ?」

「今以上にもっと大切にする」


まるで未来を約束してくれたような言葉にも聞こえて私の口角は自然と上がった。
普段なら絶対恥ずかしくてすぐ離れるはずなのに、今日だけはこのままでいたいと思う。


私は理玖くんの大きな背中にそっと腕を回した。
理玖くんが私にくれる愛情と同じくらいの愛情を彼に注ぎたい、そんな思いを込めて───。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...