【R18/TL】ハイスペックな元彼は私を捉えて離さない

春野カノン

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想定していた最悪(5)

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分かりました、と言った吉岡さんは持ってきていたパソコンをテーブルに広げる。
私はその間に飲み物を聞きに来てくれた店員の方にアイスのカフェオレを注文した。


「これ、なんですが⋯⋯」


パソコンに映し出されたのは難しい言葉が羅列された画面で、それはホームページやアプリなどを作る上での言語が並べられたものだ。
これが一体なんなのか私はまだ半信半疑だった。


「今朝、俺のパソコンに匿名で送られてきたんです」

「匿名で?」

「はい。これっておそらく、横山さんのパソコンのログだと思うんですけど、ここ見てください。履歴にはこのアプリケーションをダウンロードした際にウイルス感染したようなんです」

「⋯⋯なるほど」


不思議な点は山ほどある。
まずどうして横山くんのパソコンのログを見ることができたのか、更にはなぜそれが吉岡さんに送られてきたのか。


それに彼はシステムエンジニアだというのに、プログラミング画面に詳しすぎるのも気になる。
だけどそこに表示されているのは確かに横山くんから報告を受けた数日前のもので、スケジュール的におかしい所はない。


「これって決定的ではないでしょうか⋯⋯」

「⋯⋯⋯」

「横山さんがダウンロードしたアプリケーションによってウイルス感染しデータが破損したという結論を導くには十分かと」


全てが上手くいったと言わんばかりのその表情に思わず笑みが張り付く。
ここまでボロボロと横山くんが犯人だという証拠が落ちてくるなんてそんなの普通に考えればおかしい。


だがこんな強気な手に出るほど、完璧にアリバイを固めているのかと思うとかなり手強い。
だけど私だって何も考えずにここに1人で来たわけじゃなかった。


「吉岡さん。腹を割って話しませんか?もう隠さなくていいです。あなたの素顔を見せてください」

「⋯⋯」

「私は横山くんのミスではないと思ってます。ずっと一緒に仕事してきましたし、もし本当に彼の不注意でそうなったとしたら嘘をつかず素直に話してくれるはずです」

「⋯⋯⋯なんだ、バレてんだ?丁度疲れてたんだよな、このいい子ちゃんのフリも」


髪をかきあげた吉岡さんの雰囲気がガラッと変わった。
穏やかそうな雰囲気はどこへ行ったのか、強気で自信に満ち溢れたそんな空気感をまとっている。


「吉岡さんの仕業ですか?」

「百瀬さんはどう思う?」

「⋯⋯限りなく黒に近いと思いますが証拠がありません」

「そう、証拠はない。てなわけで交換条件なんだけど、この横山さんがやったっていう証拠を消して欲しかったら俺に1回抱かせてくれない?」

「何言ってるんです?」

「これを持ってるのは俺だけ。俺が消せば真実は闇の中だ」

「それが真実とは限りません」

「いいのか?後輩がどうなっても。あんたがちょっとヤラせてくれれば大切な後輩は助かるんだぞ」


シンプルなクズ発言に反吐が出る。
そもそもこんな大掛かりなことを吉岡さん1人でできるはずがない。


必ず協力者がいるはずだ。
その人たちの証拠すらないというのに、簡単に引く訳にはいかない。


(時間を稼がないと⋯⋯)


「私がうなづいたら、横山くんがやったと決めつけることになります。それは嫌です」

「強情な女も嫌いじゃないけど従順な方が俺は好きかな」

「吉岡さんの好みなんてどうでもいいです」

「⋯⋯四ノ宮理玖なら来ないぞ」

「⋯⋯⋯」

「あいつも今頃美鈴とよろしくヤってるだろうからな」


頭をガンッと殴られたような衝撃が走った。
まさか彼からこのタイミングで理玖くんの名前が出るとは思っていなかったため、思わず動揺してしまう。


「だから俺らもあんな男ほっといて、楽しもうぜ。


ニヤッと笑う吉岡さんを私は無表情で見つめた。
その後、彼の瞳を真っ直ぐ射抜いてゆっくりと口角を上げて微笑む。
まるで悪女のように、脳裏に焼き付くようなとびきりの笑顔を。


「理玖くんが安井さんを?笑わせないでください」

「男なんてみんな欲望に忠実だぞ?」


普通の人ならそうかもしれない。
だけど四ノ宮理玖と言う男は世間の普通ではない。


彼の愛は重たいほど真っ直ぐで私への気持ちは私が1番分かっている。
嫉妬しいで、私のことが1番好きで、他の誰よりも優先してくれるその溺愛ぶりを私は知っている。


私のことが好きで好きで堪らないと言わんばかりの彼が私を裏切るわけがない。
自信過剰と言われるかもしれないが、それくらい私は自信を持って言い切れる。


「───理玖くんは私しか愛せませんよ」


その言葉は大学の頃の私では絶対言えなかった。
だけどたくさんの愛を言葉をくれたから、自信を持って私も言葉にすることができる。


まるで自分に言い聞かせるように、それでいて確かな事実を突きつけ、私は不機嫌に歪む彼の目を真っ直ぐ見つめた。  
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