【R18/TL】ハイスペックな元彼は私を捉えて離さない

春野カノン

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人生でたった1人 side理玖(3)

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「もう全部バレてるから。隠さなくていいですよ。今の会話も全部録音してるので」

「⋯⋯」

「ちょっと俺らと話しません?」


カフェの店員さんにお願いして俺たちは全員座れる席に移動させてもらった。
横山くん、陽葵ちゃん、そしてその隣に俺と圭哉が座り、その向かい側に吉岡さんと安井さんが座る。


2人ともこんなはずじゃなかったと言いたげに明らかにバツが悪そうな顔をしていた。
それに対して俺たちは全員涼しい顔で余裕に満ちている。


「本性を隠すの上手ですね」

「まんまと俺らも騙されたわ。詐欺師にでもなれるんじゃねぇか」

「バレてんなら隠す必要もないすね。いやー疲れますよ、こんな好青年を演じるのは」


隠す必要が無くなった彼の化けの皮は剥がれ、本性がついに現れた。
俺たちが見ていた真剣に仕事を取り組む姿すら偽物だったかと思うと、人間不信になりそうだ。


「つーかなに。美鈴も振られたの?」

「うるさいわね黙って」

「おーこわー。で、話ってなんですか?」

「分かるでしょ?今陽葵ちゃんに見せてたそれ、俺らにも見せてくれませんか?その横山くんが犯人だという証拠ってやつを」


そう言われた彼は明らかに動揺したように眉をピクっと震わせた。
俺たちに見られたらまずいというのがその表情から伝わってくる。


「見せていただけないのであればこちらから話しますね」


にこやかに微笑み俺たちが調べた全ての真実をここで明るみにする。
陽葵ちゃんを傷つけようとしたこと、大事な部下に罪を着せようとしたこと。


全て解決して気持ちよくみんなで会社に帰ろう。
俺は決して私情を見せないように心の内に感情を隠して口を開いた。


「横山くんのパソコンにウイルス感染させたのはあなたですよね?」

「俺ですか?そんなわけないですよ俺じゃないです」

「陽葵ちゃんから聞きました。データ消去が判明する数日前、会議室で会議していた時に一瞬だけあなたが1人の時間があったと。その時に感染させたんじゃないですか?」

「証拠はないですよね?」

「俺たちが手ぶらで来たと思ってます?」


やはりこの強気な態度は絶対に証拠が見つかるわけが無いと思っているんだろう。
それだけの自信があるからこそ、未だに余裕そうな態度を取れるんだと思った。


隣に座る圭哉に視線を向けると無言で頷き、持ってきていたパソコンを操作し始める。
そしてプログラミング画面を彼に見せると圭哉が口を開いた。


「これはうちの部下が調べてくれた横山のパソコンに感染したウイルスのデータとあんたの別企画のプログラミング内容を比較したものだ。プログラマーなら分かると思うが、言語にはその人物の特徴が出る。ここ、分かるだろ?指示を出す言語に普通これは使用しない。だけど2つともプログラミング言語にこの言葉が組み込まれている。これは製作者の特徴と言ってもいいものだ」


画面に表示されているその文字はプログラマーの中では珍しい使い方らしく、構築した人物の特徴と呼べるものらしい。
それがどちらのプログラミング画面にも表示されていた。


「それにそのメールとやらも見せてもらっていいか?」

「なぜです?」

「送り元を調べさせて欲しい。何も問題なければいいはずだよな?」


ここで変に渋る訳にはいかないと判断したのか、彼は目を泳がせながら自分のパソコンを圭哉に渡す。
そして俺の横でパソコンを操作していると小声でビンゴ、という声が聞こえてきた。


視線をそちらに移すといじわるそうに口角を上げた表情が目に入る。
こういう顔の時の圭哉はいじわるだ。


「やっぱりな。必死に送信したログなど全部消そうとしてたみたいだけど、必ずデータってのは残るんだよ。優秀だよなパソコンって」

「っ!」

「俺らが調べてもここまではたどり着けないとでも思ったか?悪ぃな、期待以上の出来で」


彼に向けてパソコンを返すとそこにはメールを送信したことを証明する画面が映し出されていた。
ここまで調べられるとは思っていなかったんだろう。


何も言い返せず唇を噛み締める吉岡さんと無表情でただのその光景を見つめる安井さんが視界に入った。
これだけ証拠が残っているのだから言い逃れはできないだろう。


「部下が調べてくれた中に、あなたが元プログラマーだったと聞きました。それであればこの言語を使用できるのも納得です」

「⋯俺はただ頼まれただけだよ。美鈴に」

「でしょうね。彼女と身体の関係があったあなたは少なからず彼女に惹かれていたのでは?それが異性としてなのか、セフレとしてなのかは分からないですけど。だけどいいように使われただけですよ」

「⋯⋯⋯」

「大元は横山くんを辞めさせたかった横山さんの指示でしょうか。それを頼まれた彼女が自分の目的を同時に遂行するために自分に惚れているあなたを利用した。かわいそうです、彼女は横山さんとも不倫関係にあったみたいですよ」


その事実を突きつけると吉岡さんは黙って眉間に皺を寄せ、口を噤んだ。
このことを知っていたのか、はたまた今知ったのかは分からない。


一連の事件の真実は解明され、2人に証拠をしっかり提示することができた。
もちろん副島くんがevolveの社員から集めてくれた不倫の様子を撮った写真も彼女の前に突きつけたため言い逃れはできないだろう。


「横山さんに連絡してもらっていいです?全てバレてますよって」

「絶対バレないって言ったからやったのに話が違うじゃねーかよ美鈴」

「こっちだって想定外よ」

「⋯⋯⋯あの、1ついいですか?」


不穏な空気が漂うこの場に似つかわしくない綺麗な声が耳にこだました。
それは今までずっと黙って話を聞いていた陽葵ちゃんで、彼女は真っ直ぐ目の前に座る2人を見据えている。
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