【R18/TL】ハイスペックな元彼は私を捉えて離さない

春野カノン

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【特別編】陽葵と理玖〜運命の日〜

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side陽葵


私にはかっこよくて誰にでも優しくて、それでいてとびきり甘い最高の彼氏がいる。
理玖くんに出会ったのは大学で一緒に受けていた講義が一緒だったことがきっかけだ。


意気投合し順調に関係を築いた私たちは友人期間を経て恋人となった。
2年年上の先輩である理玖くんは大学1年の頃の私からするとすごく大人っぽくて自慢の彼氏だった。


理玖くんは誰にでも優しいけど、私には特に優しくて明らかにである私には特別甘かった。
それは誰が見ても分かるくらいには溺愛してくれていて、それが私にもちゃんと伝わっている。


それでも彼はとてもモテる人で、私という彼女がいると分かっていながらも告白してくる人は絶えなかった。
理玖くんが私を好きでいてくれることは伝わっているが、それでも不安がなかったわけじゃない。


私より美人や可愛い子なんて山ほどいるし、いつその子たちに心を奪われるかなんて分からない。
だけどそんな不安を私は理玖くんには打ち明けられなかった。


年上の理玖くんにわがままを言ってめんどくさい彼女だと思われたくなかったからだ。
いつも何も気にしてないような素振りをしてただ少しづつ心にドロドロとした黒い感情や不安を蓄積させていただけだった。


その感情を押さえ込んでいた蓋が閉まりきらなくなっていることに私自身は気づかなかった。
2歳年上の理玖くんは今年の4月から社会人となり、大学ではもう会えない。


私はと言うと大学3年生となり今度は私が就職活動が始まる。
理玖くんは社会人になった後でも変わらず私と会うために時間を作って頻繁に連絡をしてくれた。


丁度お昼時間になったタイミングでスマートフォンに着信が入る。
そこには理玖くんの名前が表示されており、私は慣れた手つきで耳元にスマートフォンを当てた。


『もしもし陽葵ちゃん?今お昼かな?』

「うんそうだよ。理玖くんも?」

『そ、俺も丁度休憩だよ』


理玖くんはこうして時間がある時にはお昼頃に電話をしてきてくれる。
決して長時間の電話ではないが、少しでも私のために時間を使ってくれるのがすごく嬉しい。


『今日の夜、俺ん家来るよね?』

「うん、行こうと思ってる」

『仕事今日早く終わりそうだから、駅まで迎えに行くね。着く時間になったら教えて』

「ありがとう」

"───四ノ宮くん?"


そんな時、私のスマートフォンの向こう側から女の人の声が聞こえた。
理玖くんの名前を呼ぶその声は、何度も聞いたことのある甘ったるい誘惑するような女の声だ。


私の知らないところで理玖くんはきっと言い寄られている。
彼はかっこいいし優しいしすごくモテる人だ。


社会人になった彼の周りには私なんかよりもっと綺麗で仕事もできて素敵な女性がたくさんいるだろう。
そう思うと、私がひどく小さな人間に思えて醜い感情を宿す自分が嫌になった。


今の声の主もその甘ったるい声で理玖くんを誘惑しようと近づいてきているんだと思うと言葉にできない感情が蠢いて心臓が痛い。
押し留めようとするものの、なかなかその感情を押し込んだ蓋が閉まってくれなかった。


『ごめん陽葵ちゃん。呼ばれたから行かなくちゃ』

「うん、時間ないのに電話してくれてありがとう。お仕事、頑張ってね」

『ありがとね陽葵ちゃん』


今の私が言える最大限の言葉だった。
これ以上話していれば何か余計なことを言ってしまうかもしれない。


そう思い電話を切ろうとすると、画面越しから私の名前を呼ぶ声が聞こえて再び耳元に当てる。
まだ切られていなかったようで、理玖くんの言葉を待った。


『陽葵ちゃん。大好きだよ。夜会えるの楽しみにしてるから』

「⋯⋯⋯うん、私も」

『じゃあ、またあとでね』


そう言って今度は電話が切れた。
理玖くんのことだから私の異変には少しづつ気づいているんだろう。


だからこそ私にそんな言葉を残してくれたんだ。
だけど、今の私はそれを素直に受け止める余裕がなかった。


蠢く黒い感情に心が支配されて、嫉妬やわがままを理玖くんにぶつけたくなってしまう。
でもそれで嫌われたくない、そんな気持ちがせめぎ合い、心が壊れてしまいそうだった。


***


授業が全て終わり私は行き慣れた道を通って理玖くんの家の最寄り駅に向かっていた。
お互い1人暮らしをしているため私たちはよくお互いの家を行き来している。


到着時間を理玖くんに伝えて駅のホームを出るとスーツ姿の理玖くんが立っていた。
身長は高く、すらっとしつつもしっかりと筋肉質なその身体と整った顔立ちは人目を集めている。


「陽葵ちゃん!」


そんな彼は私の姿を確認すると心底嬉しそうに笑顔を見せてくれて大きく手を振り私の名前を呼んだ。
彼の元に駆け寄るとお疲れ様、と声をかけてくれて持っていた荷物を自然な流れで持ってくれる。


「授業どうだった?寝ずにちゃんと受けてる?」

「受けてるよ。理玖くんと一緒にしないで」

「え、俺もちゃんと起きてたよ!」


他愛もない話をしながら歩く私たちの指はしっかりと恋人繋ぎで繋がれていた。
理玖くんに会うとやっぱり好きだしずっと一緒にいたいと思う。


だけどそれと同時に自分が知らないところで理玖くんが言い寄られているのを想像すると、もやもやっと心に影が落ちていくのが分かった。
それを悟らせないように私は理玖くんに笑いかける。


家に着くと既に理玖くんが夜ご飯の準備をしてくれていて、そんな所からも優しさが伝わってきた。
私がいなくたって私のことを考えてくれているのが目に見えて分かるのに、私は自分がいない所での他の人が理玖くんをどう見ているのかが気になって仕方ない。
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