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第四章 あなたと友達になれない
置いていかないで
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小春が起きた時、そこは立派な病室だった。
「あら、起きた?」
隣から声をかけられて、小春は驚く。看護師かと思ったが、小春と同じ患者だった。たおやかな雰囲気の女性で、今は隣のベッドで上半身だけを起こしている。
「は……はい……」
「あんまり動かない方がいいわよ」
言われてから、小春は自分の格好を見た。両足がギプスで固定されている。片足だけでなく、両足ともに大変なことになっていた。他にも、刺された腕は包帯が巻かれている。
「お腹空いてない? お水は飲む?」
隣にいる女性は、心配そうに小春に話しかけてくる。優しそうな人だった。この部屋には小春と彼女以外に患者はいない。
「大丈夫です。それより、起きたら看護師さんを呼んだ方がいいですよね。どうやって呼べば……」
「あら、そうだった。話し相手ができたのが嬉しくて」
女性がナースコールのボタンを押す。
「それで、あなたのことは小春ちゃんって呼べばいいかしら」
「は、はい」
「私のことは早苗でいいからね」
「早苗さん」
小春が素直に呼ぶと、早苗は嬉しそうに唇をほころばせる。
しかし、どうやって小春の名前を知ったのだろうか。寝ている間に、名前を呼ばれているのを聞いたのかもしれない。
しばらくすると看護師が訪れ、その後に医師も部屋に入った。
医師からは怪我の説明を受ける。右足は骨折、左足は捻挫。完治するまでに早くても三ヶ月。長くて半年。
他にもあれこれ言われていたのだが、小春はほとんど頭に入らなかった。起きたばかりなので、相づちを打つので精一杯だ。
説明が終わって、小春はふうと息をつく。
この怪我では、しばらく入院することになる。そう思って改めて部屋を見渡すと、小春は本当にここにいていいのだろうかと不安になった。
「都会の病院ってすごいんですね……病室なのに、華やかです」
大きな窓からは日が差し、広いソファやテーブルもあった。壁に設置されたテレビは大きく、他にも絵画が何点か飾られている。ベッドはきちんと医療関係のものだと分かるのに、他はホテルのようだった。何て豪華な病室だろう。
小春は小さい頃に入院した経験があったが、こんなことは初めてだ。小さい頃の記憶では病院はいかにも幽霊が出そうな雰囲気で、強い風が吹けば窓ガラスがガタガタと揺れるような古い建物だった。
――こんな場所に何日も入院して、お金が払えるのかな?
「落ち着かない?」
「そうかもしれないです。……でも、私一人じゃないので」
豪華な病室に一人で目を覚ましていたら、小春はもっと不安でたまらなかっただろう。そう考えると、早苗がいるのはありがたいことだった。
小春が早苗に入院生活について聞いていると、病室の扉が開く。
「小春」
入って来た人物と目があった小春は反射的に布団を掴み、頭まで被った。
喉がひゅっと鳴る。柊が来ていた。
「……何してるんだよ」
足音が小春のベッドに近づいてくる。
小春はどうしていいのか分からずオロオロした。意識を失う前の土壇場で、告白してしまったことを思い出したのだ。
「柊、小春ちゃんに何したの?」
「……何もしてない」
「でもこんなに怯えて、隠れているじゃない」
「だからしてない……俺は」
柊が小さく付け足した言葉に小春は顔面蒼白になった。
「小春ちゃんが柊に何かするわけないでしょう。見ていてあげるから、さっさと謝ったら?」
「謝ることがあったとしても、どうして俺が母さんの前でしないといけないんだよ」
――母さん?
小春はベッドからひょっこりと顔を出し、二人の顔を見比べる。よく見れば似ていた。
「姉弟じゃないんですか」
そう思うほど、早苗は若々しかった。だが今、それは問題ではない。
「えっと、もしかしてここ……普通の病院じゃない?」
「うん。ここは八神専用の病室だよ、小春」
小春が気になっていることを、柊が答える。
柊はようやく小春の顔を見られて安心したのか、ほっとしたような表情を浮かべる。
「私、場違いでは」
震えながら絞り出すように声を出すと、双方から「そんなことはない」と否定されたのだった。
柊が訪れ、早苗は定期検査をするからと看護師とともに病室を出て行った。またね、と手を振る早苗に、小春は行かないでとすがりそうになったができない。足が動かせないのだ。
「足の痛み、大丈夫か」
「うん。起きてすぐにお医者さんから薬をもらって飲んだからかな、だいぶ楽になったよ」
心配そうに見つめてくる柊に、小春は平気なふりをする。これで片足でも持ち上げられたらよかったのかもしれないけれど、まだ痛みがあった。
柊はベッドのそばに椅子を置いて座る。
「その足でよく二階から落ちようとしたよな」
「戸塚さんの後ろに警察の人がいたから、もしかすると非常階段にもいるのかなって。いなかったとしても、あのまま膠着状態になるよりいいと思ったの。気絶しちゃったら、人質にされるかもしれないし」
「もっと早く来られたらよかった」
「充分早かったよ。でも、どうやって見つけたの?」
「あー……それは……」
珍しく柊はそろりと目をそらす。
「鎌倉に行った時、俺が渡したお守り覚えてる?」
「うん。そういえば返すの忘れていたかも……」
「そのお守りの中にGPSが……入っていて……ごめん……」
だから柊はすぐに小春の居場所を見つけられたのだろう。
「謝らなくてもいいよ。ただ、何も言ってくれなかったのが寂しかっただけで……言えなかったのかもしれないけど」
柊に居場所を知られるのは、不快でも何でもなかった。悪用するために渡したわけでもないのだ。
しかし、柊は小春の言葉に表情を暗くしていた。
「私、ループした時のことを思い出したの。自分が死んだことも、全部。だから何も言わないでいてくれたんだよね。……一人で頑張りすぎだよ、柊くん」
「それは小春もだろ、相談しないし」
確かにそうだ。どちらかが相談していれば、ここまでこじれなかっただろう。
互いに反省したいところはあるが、今度こそ無事に解決したのだ。
そこで会話が途切れ、小春はやはり気まずくなった。布団を掴み、顔の半分を隠す。
「それで、俺は小春に言いたいことがあるんだけど」
「……えっと、柊くん?」
柊は立ち上がると小春に覆い被さり、彼女の顔を覆っている布団を剥ぐ。
「俺の人生で小春が邪魔って何?」
「え」
何のことか分からず、小春は首を傾げる。けれど柊は目に力を込め、誤魔化されないと訴えるように小春を見た。
「聞こえてたよ。俺の人生で自分が邪魔だと思ったら離れるって言ってたの」
「あ……」
それは明音との会話だった。建物自体は古い。柊が二階の外壁近くにいたのなら、声が聞こえていてもおかしくなかった。
「誰が小春に、そんなこと言ったの」
「……私が勝手にそうなんじゃないかって思っただけで――」
小春は途中で言うのをやめた。自分を見つめる瞳が潤んで、今にも涙がこぼれ落ちそうになっていた。
「そんな風に、思わないでよ」
「…………ごめん」
「好きな人が邪魔なわけない」
痛みに耐えるような声で、柊は囁く。
「邪魔なわけ、ないんだよ。小春」
「いい、の……?」
望んでいいのだろうか。
「いいんだよ、小春」
唇を開き、小春は伝えたいことを言おうと思った。
それなのに、嗚咽がとまらない。
喉が潰れてしまいそうだった。
それでも、伝えたい。
伝えなければ、小春はこれから先も変われない気がした。
「……っ、き」
声が焼き尽くされてしまいそうだった。
嘘ならいくらでも言えるのに、自分の言葉で話そうとすると声が出なくなる。
柊はその努力だけでも嬉しいと言わんばかりに、表情を緩めた。
けれど小春は、それではだめだともう一度唇を開く。
「……す、き……しゅうくん……」
たったの二文字がとてつもなく重たかった。
「夢みたいだ」
柊は顔を近づけ、たどたどしい声を出す小春の唇にキスをした。
「俺も好きだよ」
そう言って、柊は小春が泣きやむまで抱きしめてくれた。
「あら、起きた?」
隣から声をかけられて、小春は驚く。看護師かと思ったが、小春と同じ患者だった。たおやかな雰囲気の女性で、今は隣のベッドで上半身だけを起こしている。
「は……はい……」
「あんまり動かない方がいいわよ」
言われてから、小春は自分の格好を見た。両足がギプスで固定されている。片足だけでなく、両足ともに大変なことになっていた。他にも、刺された腕は包帯が巻かれている。
「お腹空いてない? お水は飲む?」
隣にいる女性は、心配そうに小春に話しかけてくる。優しそうな人だった。この部屋には小春と彼女以外に患者はいない。
「大丈夫です。それより、起きたら看護師さんを呼んだ方がいいですよね。どうやって呼べば……」
「あら、そうだった。話し相手ができたのが嬉しくて」
女性がナースコールのボタンを押す。
「それで、あなたのことは小春ちゃんって呼べばいいかしら」
「は、はい」
「私のことは早苗でいいからね」
「早苗さん」
小春が素直に呼ぶと、早苗は嬉しそうに唇をほころばせる。
しかし、どうやって小春の名前を知ったのだろうか。寝ている間に、名前を呼ばれているのを聞いたのかもしれない。
しばらくすると看護師が訪れ、その後に医師も部屋に入った。
医師からは怪我の説明を受ける。右足は骨折、左足は捻挫。完治するまでに早くても三ヶ月。長くて半年。
他にもあれこれ言われていたのだが、小春はほとんど頭に入らなかった。起きたばかりなので、相づちを打つので精一杯だ。
説明が終わって、小春はふうと息をつく。
この怪我では、しばらく入院することになる。そう思って改めて部屋を見渡すと、小春は本当にここにいていいのだろうかと不安になった。
「都会の病院ってすごいんですね……病室なのに、華やかです」
大きな窓からは日が差し、広いソファやテーブルもあった。壁に設置されたテレビは大きく、他にも絵画が何点か飾られている。ベッドはきちんと医療関係のものだと分かるのに、他はホテルのようだった。何て豪華な病室だろう。
小春は小さい頃に入院した経験があったが、こんなことは初めてだ。小さい頃の記憶では病院はいかにも幽霊が出そうな雰囲気で、強い風が吹けば窓ガラスがガタガタと揺れるような古い建物だった。
――こんな場所に何日も入院して、お金が払えるのかな?
「落ち着かない?」
「そうかもしれないです。……でも、私一人じゃないので」
豪華な病室に一人で目を覚ましていたら、小春はもっと不安でたまらなかっただろう。そう考えると、早苗がいるのはありがたいことだった。
小春が早苗に入院生活について聞いていると、病室の扉が開く。
「小春」
入って来た人物と目があった小春は反射的に布団を掴み、頭まで被った。
喉がひゅっと鳴る。柊が来ていた。
「……何してるんだよ」
足音が小春のベッドに近づいてくる。
小春はどうしていいのか分からずオロオロした。意識を失う前の土壇場で、告白してしまったことを思い出したのだ。
「柊、小春ちゃんに何したの?」
「……何もしてない」
「でもこんなに怯えて、隠れているじゃない」
「だからしてない……俺は」
柊が小さく付け足した言葉に小春は顔面蒼白になった。
「小春ちゃんが柊に何かするわけないでしょう。見ていてあげるから、さっさと謝ったら?」
「謝ることがあったとしても、どうして俺が母さんの前でしないといけないんだよ」
――母さん?
小春はベッドからひょっこりと顔を出し、二人の顔を見比べる。よく見れば似ていた。
「姉弟じゃないんですか」
そう思うほど、早苗は若々しかった。だが今、それは問題ではない。
「えっと、もしかしてここ……普通の病院じゃない?」
「うん。ここは八神専用の病室だよ、小春」
小春が気になっていることを、柊が答える。
柊はようやく小春の顔を見られて安心したのか、ほっとしたような表情を浮かべる。
「私、場違いでは」
震えながら絞り出すように声を出すと、双方から「そんなことはない」と否定されたのだった。
柊が訪れ、早苗は定期検査をするからと看護師とともに病室を出て行った。またね、と手を振る早苗に、小春は行かないでとすがりそうになったができない。足が動かせないのだ。
「足の痛み、大丈夫か」
「うん。起きてすぐにお医者さんから薬をもらって飲んだからかな、だいぶ楽になったよ」
心配そうに見つめてくる柊に、小春は平気なふりをする。これで片足でも持ち上げられたらよかったのかもしれないけれど、まだ痛みがあった。
柊はベッドのそばに椅子を置いて座る。
「その足でよく二階から落ちようとしたよな」
「戸塚さんの後ろに警察の人がいたから、もしかすると非常階段にもいるのかなって。いなかったとしても、あのまま膠着状態になるよりいいと思ったの。気絶しちゃったら、人質にされるかもしれないし」
「もっと早く来られたらよかった」
「充分早かったよ。でも、どうやって見つけたの?」
「あー……それは……」
珍しく柊はそろりと目をそらす。
「鎌倉に行った時、俺が渡したお守り覚えてる?」
「うん。そういえば返すの忘れていたかも……」
「そのお守りの中にGPSが……入っていて……ごめん……」
だから柊はすぐに小春の居場所を見つけられたのだろう。
「謝らなくてもいいよ。ただ、何も言ってくれなかったのが寂しかっただけで……言えなかったのかもしれないけど」
柊に居場所を知られるのは、不快でも何でもなかった。悪用するために渡したわけでもないのだ。
しかし、柊は小春の言葉に表情を暗くしていた。
「私、ループした時のことを思い出したの。自分が死んだことも、全部。だから何も言わないでいてくれたんだよね。……一人で頑張りすぎだよ、柊くん」
「それは小春もだろ、相談しないし」
確かにそうだ。どちらかが相談していれば、ここまでこじれなかっただろう。
互いに反省したいところはあるが、今度こそ無事に解決したのだ。
そこで会話が途切れ、小春はやはり気まずくなった。布団を掴み、顔の半分を隠す。
「それで、俺は小春に言いたいことがあるんだけど」
「……えっと、柊くん?」
柊は立ち上がると小春に覆い被さり、彼女の顔を覆っている布団を剥ぐ。
「俺の人生で小春が邪魔って何?」
「え」
何のことか分からず、小春は首を傾げる。けれど柊は目に力を込め、誤魔化されないと訴えるように小春を見た。
「聞こえてたよ。俺の人生で自分が邪魔だと思ったら離れるって言ってたの」
「あ……」
それは明音との会話だった。建物自体は古い。柊が二階の外壁近くにいたのなら、声が聞こえていてもおかしくなかった。
「誰が小春に、そんなこと言ったの」
「……私が勝手にそうなんじゃないかって思っただけで――」
小春は途中で言うのをやめた。自分を見つめる瞳が潤んで、今にも涙がこぼれ落ちそうになっていた。
「そんな風に、思わないでよ」
「…………ごめん」
「好きな人が邪魔なわけない」
痛みに耐えるような声で、柊は囁く。
「邪魔なわけ、ないんだよ。小春」
「いい、の……?」
望んでいいのだろうか。
「いいんだよ、小春」
唇を開き、小春は伝えたいことを言おうと思った。
それなのに、嗚咽がとまらない。
喉が潰れてしまいそうだった。
それでも、伝えたい。
伝えなければ、小春はこれから先も変われない気がした。
「……っ、き」
声が焼き尽くされてしまいそうだった。
嘘ならいくらでも言えるのに、自分の言葉で話そうとすると声が出なくなる。
柊はその努力だけでも嬉しいと言わんばかりに、表情を緩めた。
けれど小春は、それではだめだともう一度唇を開く。
「……す、き……しゅうくん……」
たったの二文字がとてつもなく重たかった。
「夢みたいだ」
柊は顔を近づけ、たどたどしい声を出す小春の唇にキスをした。
「俺も好きだよ」
そう言って、柊は小春が泣きやむまで抱きしめてくれた。
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