Family 〜愛の歌〜

帆希和華

文字の大きさ
上 下
8 / 16
ごめんね

愛してる

しおりを挟む
 本当なら、そのうち里子に出すつもりでしたが、生まれたばかりでこんな辛い経験をして、傷もできて、きっと貰い手はないだろう。……いや、そうじゃない。この子は自分が育てたい! 
 そして、アロハと名付けたんです。
 兄妹犬のように、おっぱいに自分からグイグイと吸い付いていかず、なんだかおっとりした仔なんだな、自分がしっかり見てあげないといけないな、そんな風に思っていました。
 マハロ、アネラと一緒に散歩に行ったり、旅行に連れて行ったり、どんな表情するのかな? 甘えん坊だろうな、楽しみで仕方なかったです。
 だから、死んだことを受け止めたくなかった。夜、彼氏家の庭に埋めに行くまで、ビニール袋に入ったアロハを見るたび、涙が止まらなくて、どうしようもなくて、自分を責めることしかできなくて……
 その気持ちを歌にしたら少しは晴れるかと思い『ありがとう-愛の歌-』を書きました。
 書いたときは、自分の気持ちが少しは整理できたんだと思っていました。でも、そんなことは全くありませんでした。
 いつになっても後悔が頭をよぎり、悔しくて悔しくてたまりません。
 きっとこの気持ちが晴れることはないし、一生、後悔し続けるんだろうと思います。というか、ずっと後悔していたい。こんなダメな自分を肯定なんかしたくない。
 でも、感傷に浸ってばかりいられないのも事実。
 残された仔犬たち、マハロとアネラが自分のことを待っているから。
 何かやっていれば少しは気が紛れるようにも思う。バラエティー番組を見たらバカみたいに笑っているし、お腹も空くし、喉も乾くし、シャワーだってする、しなくちゃいけない、それが生活だから。
 ズルいよね? 自分の生活があるからって逃げてるのと一緒だよね?
 だからって自分が変わってあげるかって言ったらできないし。本当にズルい。
 
 自分はこのことを忘れずに生きていきたい。糧にしてとか、経験を活かしてとか、そんな美談なんかじゃなくて、アロハとモアニが生まれたことを伝えていきたい。
 生きていたなら、インスタやらツイッターやらでいろんな人にその生き生きとした姿を見てもらえたはず。
 そうできないのなら、せめて何かに書き残して伝えたい。
 生まれてきた証を。
 愛していることを。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

〈完結〉50女がママチャリで北海道を回ってみた

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:11

社畜とニートの日常会話式TRPGシナリオ

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

夢の代償: 健康サプリメントがもたらす奇妙な冒険

O.K
エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

怯える日々から卒業を

青春 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

死ねば死ぬほど強くなる不死者は死ぬ方法を探している。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:15

(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:20

処理中です...