【R18】その後の世界で君とともに

ぽんたしろお

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君とともに歩む未来(ヤマト編)

3話 千歳空港

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 カツンコツンと足音が響く。
人がいない建物の静寂さがヤマトを包んだ。

 ヤマトは、千歳実習地のある千歳空港に降り立った。飛行機はオーストラリアから貨物便に同乗だった。ようやく人がいない場所にたどり着いたという感覚がヤマトは心地良かった。

 リリカと喧嘩して別れた後、実習地の千歳行きの飛行機に乗るまでの騒動は思い出したくなかった。喧噪から逃れることができたことがヤマトは嬉しかった。

 千歳空港の待ち合わせ場所のベンチに座って、建物を眺めて、ここが『へき地』だと実感する。何もかも古かった。維持する最低限の管理しか施されていない。
 分散型居住システムが過去の遺物であることを、空港の建物を見ただけでも十分理解できた。

 今、原料資材は、タウンの新設及び拡張工事に集中的に割りあてられている。分散型居住システムの補修用の資材は後回しにされている。優先順位が低いのだ。
 効率の悪い分散型居住システムからの脱却が、世界の主流なのだ。分散型居住システムにしがみついている第ゼロ世代と第一世代――いわゆる旧世代は、これからますます取り残された存在になっていくだろう。

 ヤマトは自分も忘れられた存在になりたかった。ヤマトとリリカが破局したと噂が流れ始めると、人の目がヤマトを追いかけ始めたのだ。
 十八才になると、管理センターのお見合いシステムが紹介者をやたらめったら勧めてくるようになった。婚活パーティが毎日のようにセッティングされ、出席を促す文言が情報の中に入り込んできた。更に、ヤマトに片思いしていた女性たちは色めきだった。次から次へと告白される。そのたびに
「申し訳ない」
 とヤマトは頭を下げなた。頭を下げながら、自分の何が『申し訳ない』のかと心の中で自問していた。

 「十八歳になったとたん、この押しつけがましいの何なんだろう?」
 ヤマトがバートに愚痴をこぼすと、バートは笑いながら答えた。
「ユキコたちの世代は、十八歳になると精子卵子の提供が義務だった、知っているよな?」
 バートの問いに、ヤマトはうなづく。その不自然なシステムに歯向かったのが母のユキコで、結果、自分が生れたのだから。
「それと比較したら『カップルにならない?』と勧めてるぐらい、たいしたことでないだろう」
 それはそうかもしれないが、とヤマトはやはり腑に落ちない。
「それも実習に行くまでの我慢だ。実習に行けば、カップルのオススメは止まるからな」
 バートは意地の悪い笑みをヤマトに向けた。
「実習は、通称「お試し同居」だからなぁ」

 千歳空港の待合室でヤマトは、バートの言葉どおり、「お試し同居」の相手を待っているのだ。
「お試し同居」という言葉も不快だ、とヤマトは舌打ちをする。実習は二人一組に支援型アバターの組み合わせで行われる。
 その実習相手は、希望がなければ男女の組み合わせを指定されるのだ。
 結局、隙あらばカップルになれと無言の圧力がかかっていることに変わりはないのだ。
「同居に男性を希望した方が良かったのかな」
 今更手遅れなのだが。分散型居住システムでの実習があるから、タウン設計を専門に選んだ。片思いの彼女の近くに行ってみたい、そのために専門を選んだのだ。
 実習先でニーナの側に行ける、それしか考えていなかった。

 実習期間の相手の情報を知らされたとき、しまったとは思った。しかし、相性が悪ければ、実習相手はいくらでも変更できる。実習希望地だけ指定したヤマトが、ほかの地へ移動することはない。相手が別の場所に行くことになるだけだ。
 ヤマトにとって同居する相手に一切興味はなかったのだ。

 「えっと、名前はアデル。中国上海コロニー在住ね」
 千歳空港に到着して、ようやく同居相手の情報を確認しだすほど、ヤマトの無関心さは度を越していた。

 カツカツカツ。
足音が近づいてきた。アデルだ。足音の聞こえる方向に顔をあげた。女性のシルエットが近づいてきた。

 ヤマトの目が大きく見開いた。信じられかった。ヤマトに向かって近寄ってきた女性の姿がはっきりと見えた時、ヤマトは思わず口に出していた。
「……ニーナ?」



(つづく)


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