【R18】その後の世界で君とともに

ぽんたしろお

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君とともに歩む未来(ヤマト編)

4話 アデル

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 仮想空間でたった二~三回しか見たことがないニーナ。実際に会ったことがないのに、恋焦がれた片思いの相手が、今、ヤマトに近づいてくる。
 
 北海道に来ることを知って迎えに来てくれた?……まさか! それは絶対あるわけがない! ヤマトの混乱をよそに、近づいてきた彼女は、嬉しそうにヤマトの正面で立ち止まった。
「初めまして! 有名なヤマトさんに会えて嬉しいくおもっています」
 いつもなら、有名なことを話題にされるだけで嫌になるというのに、ヤマトは女性をまじまじ見返した。
 長い黒髪と青いクリクリとした瞳。シンプルな紺色のシャツワンピースを共布のベルトをウエストで結んでいた。仮想空間で出会った印象より、溌剌とした感じをヤマトは持った。
 ヤマトは記憶の中のニーナの瞳の色を手繰り寄せようとしていた、青だっけ? 黒かった記憶があったけれど⁇
 ヤマトはなんとか声を絞り出して尋ねた。
「……ニーナさん?」
 彼女が大きく首を傾げた。ヤマトの言葉に戸惑っていた。
「アデルです」
 アデルは困惑しながた言葉を続ける。
「えっと、いっしょに実習することになっているんですが……違いました?」
 ヤマトは耳まで赤くなるのを感じつつ、慌てて言葉を続けた。
「アデルさん……、失礼しました。あなたと似ている女性と間違えてしまった」
 申し訳ない、とヤマトは頭を下げた。

 「いや、いいですよ。あの、アデルでいいです。フランクに話しませんか?」
「え、あぁ、そうですね、いや、そうだね」
 アデルをじろじろ失礼なほど見ながら、ヤマトの思考はいまだに混乱を続けていた。

 ヤマトの態度にアデルは何かひっかかるものがった。 
「ニーナさん? どこかで聞いたことある」
 アデルが呟いた。ニーナ、ニーナと繰り返し、ネットで調べている。やがて。
「パートナー型アバターのニーナさん?」
 ヤマトは驚いて頷く。
「知っているの?」
 アデルは頭を振った。
「知らないし、会ったこともない。でも関係はある」
「関係ある?」
 ヤマトは動揺を抑え、アデルの言葉を待った。
「私の遺伝子上の母をベースにして作成されたアバターが登録されている。ニーナという名前だね」
 アデルは更に情報をかき集める。
「上海はコロニー化する前、日本中国を含むアジア圏を管理する集中センターとパートナー型アバターの生産拠点になっていたんだ……」
 アデルは続けた。
「ニーナさんは、上海で訓練を受けて北海道札幌区に配置されているアバターなんだね」
 ヤマトはアデルの話に追いつけなくなっていた。動揺するヤマトを見ながら、アデルはほぼ状況を理解したようだ。
「あなたのお父さんって、札幌区に住んでいる方だよね? そのパートナーがニーナさんなんだね」
 アデルはそこで考え込む。
「ニーナさんと関係がある私がここに来ることを指定された、と」
 アデルは謎解きを楽しみ始めていた。
「意味あるよね? でもあなたは驚いている。知らなかった。偶然とは思えない。じゃあ誰が仕組んだ?」

 アデルの問いはヤマトに向けられたものではなかった、アデル自身がその答えを探し出そうとしていた。
「私は人工授精後、人口子宮で育って生まれたの。パマに育てられた子供で、父と母に会ったこともない」
 ヤマトは押し黙っているが、アデルの整然とした説明で次第に状況を把握できてきた。アデルは更に続ける。
「私のパマが、実習先に何か手心を加えるとは思えないし、意味もない。ヤマト、あなたは思い当たるんじゃないの?」
 アデルはヤマトに質問した。ようやくヤマトが口を開いた。
「僕の母とバートが仕組んだってこと?」
 ヤマトは軽くショックを受けていた。そこにアデルが傷口に塩を塗り込むように言った。
「つまり、ニーナさんの代わりに私が送り込まれたってことか」
 ヤマトは驚いて否定する。
「君を、そんなふうに見ていないってば。嫌なら、帰ってもらってもいいよ、君にあまりにも失礼だ」
 ヤマトが言うと、アデルは青い瞳をクリクリさせて笑った。
「別に代わりでもいいよ、気楽だし」
「え?」
「いいから、早く行こう、実習先へ。あなたのお母さんの故郷へ」
 アデルはヤマトの腕を引っ張って歩き出した。



(つづく)
 


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