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何が起こるのかわからないのに、それが間違いなく自分の性感を高める事に繋がるのだけはわかっている。
そういう状況の時、私はそわそわせず、落ち着いているというのとは違うけれど、何か重たい物がのしかかっているような、そんな重圧感を覚える。
部長会ランチの後は軽い頼まれ事しかなかったので、日中のビュッフェレストランでの出来事に影響される事もなく一日の仕事を終える事ができた。
…美咲さんは結局、あのリモコンローターをどこへ隠して持ち歩いてるのだろうか。
考えても仕方ない事だが、私は美咲さんと暮らす恵比寿のマンションへの帰路に就く。
帰り際に更衣室で梢さんに捕まり「今日の部長会ランチどうだった?」と明るく質問され、どきりとした。
梢さんは呼ばれた事がないらしく「いいなあ」としきりに呟いていた。
やましい所があるから、梢さんが何か勘付いているのかと焦ったけれど、実際はそうでもないらしく、単に部長会ランチの様子を知りたかっただけのようだった。
…聞かれた所で、まともに参加できていなかった私はあまり多くを語れなかったけれど。
「梢さんもお願いしたら呼んでもらえるんじゃないですか」と勧めてみたけれど、案外仕事に対しては真面目な梢さんは「そんなの秘書がおねだりするのは非常識だよ」と一蹴する。
進藤部長の大らかさに慣れ過ぎてしまって、秘書がそれぐらい言うのは構わないのではないか、という考えに染まりかけている自分を戒めたくなった。
…美咲さんと進藤部長はそういう所が似ているような気がする。
美咲さんの方は、進藤部長ほど誰に対しても適当という事はないだろうけど。
私にとって最初の担当が進藤部長で良かったのだろうか、不安になる。
*-*-*-*-*-
帰宅してシャワーを浴び軽く食事を済ませる。
いつも、夕食は満腹になるまでは食べないようにしているけど、今日は殊更に食事の量は少なくなってしまった。
…なんとなく、胃の辺りが張っているような気がして、無理に食べるとかえって調子が悪くなりそうだったからだ。
そんな自分の身体の声を聞いてようやく、自分が相当緊張しているのだなとわかる。
手持無沙汰になってベッドに横たわるけれど、時間の進みが遅い。
美咲さんは、予告通り早い時間に帰ってきたが、私に世話を焼かせないためか、夕食は外で済ませたとの事だった。
「ちょっと待っててね」
そう言い残して浴室へ向かう美咲さんはいつもと変わらず朗らかである。
自分だけがやたらと緊張している感じで、違和感があった。
…でも、美咲さんの事だから、ある瞬間にスイッチが入るんだろうな、などと他人事のように思う。
そこまではわかっているけど、その先はあまりよくわからない。
シャワーを済ませて脱衣所で髪も乾かし終えた美咲さんが出てきて、ふいに告げてくる。
いつものパジャマ姿かと思いきや、暑いためか下はショーツしか身に着けておらず、上も羽織っただけの恰好でボタンを留めていないから、胸の谷間がちらちら見えて、そこばかりに視線がいってしまう。
眼鏡は浴室へ行く時から外しっぱなしだ。
「ちょっと前にも言ったけど」
「…はい」
美咲さんは、一応こちらに近づいては来るものの、すぐ隣に座ったり、身体に触れてきたりはしない。
私は反射的に、腰掛けていたベッドから立ち上がっていた。
「冴子が人に見られて興奮するたちなのは知ってるけど、感じてる冴子の顔を他の人に見せたくないっていう思いが、強くなってるのよね」
美咲さんは自分の思う所を語っている。
…だから、昼間の事を面白くないと思っているという事なのだろう。
「すみません」
ほんの少しだけうつむいてそう応じるしかない私に、美咲さんは「ま、とにかく」と言葉を続けた。
「まずは全部脱ぎなさい」
「はい」
全部と言われても、部屋着はワンピース一枚だけで、ブラもショーツも身に着けてはいない。
躊躇なく、私はそのワンピースの肩を外してそのまま床に落とした。
「そうそう」
美咲さんはにこやかに言う。
まだ、怖い美咲さんには変わっていないらしい。
「そこに寝て」
立ったままの私にそう言い置いて、美咲さんは一旦別室へ引っ込んだ。
戻って来た美咲さんの手には、いくつか物が握られているけれど、ぱっと見て何なのかはよくわからない。
「…ねぇ、冴子」
「…はい」
所在なく裸で仰向けに寝そべっている私の傍に美咲さんは座り、優しく声をかけてくる。
「あの日からちょうど一年経って、記念すべきプレイをする事になりそうね」
「……」
何をされるのか知らない私は返答のしようがない。
「それも冴子が望んだ事なんだから、仕方ないわよね」
「…はい」
美咲さんは「うーん」と考えるようにうなりながら手元の何かを選び出す。
私は、あえて美咲さんの手元は見ないようにした。
必死になって天井ばかり見ていると、美咲さんが近づいてくる気配があって、「膝を立てて」という声が降ってくる。
言われるままに私は両膝を立てて、次の言葉を待っていたが、言葉の代わりに身体の傍で物音がした。
…パチン
あっと思ってその場所に視線をやると、私の右の手首と足首が、革ベルトのような黒い枷で留められていた。
少し長さがあるので、窮屈な態勢にはならないけれど、少なくともこの状態で膝は伸ばせないし、楽にしようとすると自然と脚は開いてしまう。
「…左もですか」
「そうよ」
美咲さんがベッドの反対側に回り込んで、左の手首と足首も枷で留めてしまう。
私はなんの違和感も感じないし、窮屈でもないから特に恐怖感は覚えなかった。
「まだあるわよ」
美咲さんは私の身体を起き上がらせて、背後に回り私の上半身を身体で支えてくれる。
「ごめんね」
そう言ったかと思うと、ねじった手ぬぐいのようなものを口に噛まされた。
そのまま、左右に引っ張って耳の上辺りを通し頭の後ろで固定される。
「髪が絡んじゃうかも」
痛くならないような力加減で、でも外れないようにそれが固定された。
私は、「髪が」と気にしていた美咲さんに大丈夫だと伝えるために首を軽く左右に振る。
そうした瞬間に、「言葉」を奪われた事への強烈な無力感に襲われた。
身動きを取れなくされても、特に何も思わなかったのに、美咲さんに自分の心を伝えるための手段が一つ奪われた事には、とてつもなく悲しい気持ちになった。
「目はふさがないわよ、本当に冴子がダメな時わからなくなるから」
「はい」と言う代わりに首を一度だけ縦に動かす。
「できた」
手ぬぐいがしっかり固定されている事を確かめて、美咲さんは私の頭の後ろでそう呟く。
そうしてから改めて私の恰好を見下ろしているようだった。
「本当、エロいわね」
「……」
背後から美咲さんの手が伸びてきて、無防備に晒された私の胸に触れてくる。
やわやわと揉んだり、乳首の先を軽く弾いたりして、私の反応を確かめているようだった。
勿論胸への愛撫は気持ちいいのだが、私としてはそれ以上に、背中に当たる美咲さんの胸の感触や、時々悪戯するように美咲さんの唇や舌先が、私の耳や首筋を這ってくすぐってくるのがたまらなかった。
「んん、んっ…ふぅ」
ねじった手ぬぐいを噛んだ口の端から、こもった声が漏れるばかりで普段とは全然感じが違う。
これだと、自分がいかに感じているかという事も、十分には伝えられない気がして、もどかしくなった。
その一方で、喘ぎ声をどれだけ思い切り出したとしても、これなら声がこもるから、うるさくならないように気を使う必要がない事にも気付いて、そういう意味では何かから開放されたような思いにも気付く。
感じてくると、私は言語化できないような声で喘ぐらしく、動物っぽいような感じがしていて、その事をほんの少し気にしていた。
けれども今の状態なら、それも気にしなくて良くなる。
「…感じてきちゃったの?」
後ろから耳元でそう囁かれて、私は耳から全身が溶けるかと思うほど興奮した。
「んん」とうなりながら首を縦に動かす。
「…なんか可愛いわね、一生懸命で」
片方の手は胸を掴んだまま、もう片方の手が私のお腹の方へと下りていく。
「可愛いからこっちも触ってあげる」
わざと、秘部の周辺を指先でくすぐってから、ようやく花弁に美咲さんの指が振れる頃には、そこは十分に潤っていた。
「…勝手に入っちゃいそう」
言葉ではそう言いつつも、指は無遠慮に花弁を押し開いてどんどん中をえぐってくる。
指の付け根までしっかり突っ込んだ所で、私の内側の、感じるポイントを的確に圧迫してくる。
「ん、ん…んふ」
身体をよじろうとするが、あまり大きな動きが取れない。
動くと枷の紐部分がぴんと張って、全身が不自然に突っ張った。
「鏡があれば良かったわね、よく見えるように」
「……ん」
美咲さんは、一瞬だけ指を浅い所まで引いてから、またズブリと突き入れてくる。
その時に秘部からいやらしく粘着質な水音がして、美咲さんは面白がるようにその音をわざと大きく立てながら、指を出し入れしてきた。
「ん、ん…んぅっ」
腰が前に出てしまい、自然と両脚は開いていく。
もっと奥までして欲しくなっている事が、身体の動きだけで伝わってしまいそうだが気にしている余裕はなかった。
「…気持ちいい?」
私は頷く代わりに必死で首をねじって美咲さんと目を合わせる。
ぱちりと一回瞬きをして、潤んだ瞳を向けると、美咲さんは煽られたように何かを堪えた表情になる。
「こんな恰好させられてもなお素直なのね、冴子は」
もう一度瞬きをして美咲さんを真っすぐ見つめる。
「キスができないのは残念だわ」
美咲さんはそう言いながら、苛立ったように乱暴に指を使って私の身体の内側を弄り回してきた。
「んふっっ、ん」
その激しい指の動きには全くそぐわないような、簡素なうめき声を私は漏らしてしまう。
しばらくそんな風に指で秘部を弄られた後、美咲さんが私の背後から離れていく。
そのまま、私はゆっくりと仰向けに倒れて枕に頭を預けた。
この状況は、何もできないと解釈すればネガティブな印象だが、何もしなくて良いととらえれば、楽でいいじゃないかと思う事もできる。
私は、自ら美咲さんの股間に顔を埋めて秘部をひたすら舐めて奉仕するのが大好きだし、自分もそれで興奮する。
でも、今日はそれができる状況にないし、望んだとしてもさせてもらえないだろう。
今は自由に動いて美咲さんの身体に触れる事が許されない状況だが、私は自分が動く事なくただ快感を与えられる悦びを、まだ知らないのかもしれない。
枷は、美咲さんから「何もしなくていい」と言われている証明のようだと思えるから、一般的に言うような、こういう行為の醍醐味とはまた違う心持にあるんだろうな、と私は思った。
だから、不自由ではあるけれど、恐怖感はない。
ただ、それでも私にとって自らの身体を使って美咲さんに奉仕する事ができないのは、十分残念な事だ。
そんな事を考えていたが、美咲さんは傍にいない。
寝室のどこにもいなくなっていた。
どこかへ行ってしまったとは考えにくいが、左右の手首と足首を繋がれて、口も利けない状態で放置されている事実にようやく思い至り、突然私は不安にかられた。
「……」
耳をすましても別室からの物音は聞こえないし、美咲さんはどこへ行ってしまったのだろうか。
急に悲しくなってきて、涙がこぼれそうになる。
変に濡らした秘部も、なんだか物悲しい。
私は身体を横に倒して、顔を半分枕に埋めた。
うっかり時計が目に入ってしまい、時間を確認してしまう。
「……」
そのまま、10分ぐらい経過して、私の心が真っ白になり、このまま眠ってしまおうにも口元が苦しい、と思っているとようやく美咲さんが戻ってきた。
私は思わず顔を上げて美咲さんを見上げる。
「自分の置かれている状況がわかったでしょ」
「……」
一つ頷いて、一度はおさまった涙がまた溢れかけた瞳で美咲さんをじっと見た。
「…これ」
そう言いながら美咲さんが笑顔を浮かべて見せてきたのが、昼間使ったリモコンローターだった。
昼間ベトベトに汚してしまったが、綺麗にしたらしく美咲さんの指につままれたローターは乾いてつるりとしている。
「はい」
美咲さんはそう言いつつローターを私の秘部のすぐそばに置く。
スイッチを入れて振動させると、ローターが動いてベッドのわずかな傾斜に沿い、ごく軽く私の秘部に接触してきた。
「…っ、ん…」
身体を動かすと、その反動でローターは身体から離れていってしまう。
諦めてじっとしていると、ローターはまた傾斜に沿って自重でシーツの上を滑り私の花弁にちょこんと触れてくる。
「んっ、んっ」
微弱な刺激しか与えられず、私の身体には熱が溜まっていくばかりだ。
美咲さんの手で、それを握ってがっちり当てて欲しいのに。
「くっついたり離れたりして、面白いわね」
「…んん」
美咲さんは呑気にそんな事を言うけれど、私の方はそれどころではない。
何とか、もどかしさを伝えようにもその方法もない。
「んん」
とにかく一生懸命に美咲さんを見て訴えてみるけれど、美咲さんは知らん顔である。
挙句、あろう事か美咲さんはローターのスイッチを切ってしまった。
「……」
思わず、私はもじもじと腰を振ってしまう。
脚を大きく開いた状態で秘部を晒したまま。
「…入れて欲しいの?昼間みたいに」
「っ…」
みわかに、ビュッフェレストランのトイレで美咲さんにされた事を思い出し、私の身体は硬直した。
見た目にもよくわかる、いい反応だったらしく、美咲さんはくすっと笑う。
「…冴子は、中を擦られるのが大好きなのよね?」
それは事実だが、面白がるように言葉で言われるのは恥ずかしい。
私は頷く事もできず、相変わらず固まっていた。
「あら、違うの?…」
違いません、と言おうと思ったが実際に発せられた音は「んぐぐ」という、言葉ではないうめき声だった。
「何を言ってるのか、わからないわね」
私は勢い良く首を左右に振る。
はちまきのようにくくられた手ぬぐいが、その動きに抗って少し頭に食い込んだ。
美咲さんの顔に近づきたくて、私は上半身を起こす。
「…本当はね」
美咲さんは私の顔ではなく、じっと私の秘部を見つめている。
そうして徐に語り始めた。
「人を虐めて興奮する趣味なんてなかったはずなのに、こうやってわざと、口を利けなくさせておいてあれこれ質問して、…そんなめちゃくちゃな状況にされているのにそんな素直に反応されて」
「……」
変だと思わないのか、理不尽だと思わないのか、そんな風に言いたいのだろうか。
私には、これのどこが理不尽なのか、ちっともわからない。
美咲さんは私の身体をどう扱おうと、それが私のためだとわかっているから、私は何とも思わない。
「手足を繋がれて、口もふさがれて、それなのに一生懸命感じているのを伝えようとして、もっとしてって欲しがる冴子が、可愛く見えてしょうがないのよね」
「……」
そう言い終わるか終わらないぐらいのうちに、すかさず美咲さんは私の花弁にしゃぶり付いた。
私は思わず、身体を後ろに倒してベッドに背中を預けて悶える。
「んっ、んぅっ…」
喘ぎ声がこもるから、どんなに感じていても私の秘部をすする音や美咲さんのちょっとした吐息がよく聞こえてしまう。
時折「はぁ」と、溜め息のように息継ぎしながら、美咲さんは私の秘部をチュウッと吸ったり、入り口の辺りに舌先を埋めて中をまさぐってきた。
私の口元から漏れるうめき声は、こもっていても徐々に甘ったるい音へと変化していった。
私は「…んん、くぅん」と、単調な声を漏らして、美咲さんの口淫に応え続ける。
いつもよりも美咲さんの口淫はしつこくて、萌芽を舐め回しながら指は蜜穴に差し込んでみたり、それに飽きると花弁を唇でしゃぶりながら、ローターを萌芽に当てて振動させてきたりする。
常に入り乱れて与えられる2つ以上の刺激に、私の身体はもたなくなりそうだった。
「ん、ふぅ……これだと、好きなだけ冴子の身体で遊べるわね」
「……」
いつの間にか、そうして欲しいと期待してしまう自分がいる。
攻守入れ替わる事のない、一方的な愛撫にただ溶かされてどこまでも堕ちていきたいと願ってしまう。
枷があるから、それが許されている気がした。
絶え間なく与えられる恍惚に涙を流していた目で、美咲さんに訴える。
美咲さんと視線が合うと、逆に美咲さんの方が先に視線を反らした。
「…いつにも増して素直に見えるのよね、冴子が」
「……」
美咲さんは急に秘部から口を離す。
今この瞬間に、何をするのか決める権利は全て自分にあるのだと、改めてわからせるように、それは唐突だった。
「でも、私のしたいようにするからね」
勿論です、と言う代わりに私は一つ瞬きをした。
それを美咲さんが見ていたかどうかはわからないが、美咲さんはさっとショーツを脱ぎ捨てて片足で私の腰をまたいでくる。
程なくして美咲さんの手が私の太腿をぐいっと引き寄せて、二人の身体が噛み合うように密着した。
私のものだけではない、美咲さんがこぼしたであろう蜜の感触と、柔らかい花弁やこりこりした萌芽の感触が、一挙にまとめて伝わってくる。
「…んふぅ」
甘い溜め息が漏れたのは、二人同時だった。
私は、あえてされるがままに美咲さんの動きに身を任せる。
美咲さんは、とりつかれたように激しく腰を打ち付けてきた。
「…冴子、冴子、あ…んっ」
気が付くと繰り返し名前を呼ばれていた。
その声は、助けを求めるような、切羽詰まった声色で、とてもこの場を支配している人のものとは思えない。
「ね、冴子、冴子…っ…」
激しい腰の動きを、私はただ受け止める。
美咲さんの手が伸びてきて、私の胸を掴み、乳首をめちゃくちゃにこね回されても、私はただそれを受け止めていた。
いつもとは違う、だけどやっぱり言語化できない喘ぎを漏らしながら。
これまでとはまた違う様子で私を求める美咲さんの姿に、それはもう、死んでしまいそうなぐらい陶酔していった。
「…やだ、すごい興奮してるの、私」
美咲さんは泣きそうになりながら訴えてくる。
「冴子の事、人形みたいに扱ってるのに、興奮しちゃうの」
私はまた思う。
それのどこがいけない事なのだろうと。
でも美咲さんは、何か罪悪感を覚えているようだった。
そしてまた美咲さんは、「冴子、冴子」と何度も私の名前を呼んで、身体を擦り合わせてくる。
私は、なぜか美咲さんを励ましたいような心持になり、自分の快感のためだけにではなく、美咲さんを肯定している事を知らせたくて、一生懸命に腰を動かした。
「んっ、んん」
「…こんなにされてるのに、まだそんな事するの、冴子は」
美咲さんは、それでも嬉しそうだった。
「本当に、いけない子…だからもっとお仕置きが必要だわ」
そう、そうやってもっと咎めて、突き落として欲しい。
美咲さんにだったら心からそうされたいと思っている。
擦り合わせた秘部の間は、もうどちらのものかわからないぐらいに蜜が溢れてぐちゃぐちゃになり、それでもその出所をクチュクチュとくっつけては離して、を繰り返していくうちに、美咲さんの動きも徐々に緩慢になっていった。
「あ、はぁ…」
美咲さんは肩で息をしながら、ふいに絡めた身体を離す。
今度は、用意していたらしい「あれ」を装着し始めた。
「…貝合わせだけじゃ余裕なんでしょ、どうせ」
美咲さんはそう言いながら「あれ」を見せつけてくる。
私の反応からそんな事まで読み取っていたのかと戦慄を覚えつつも、「あれ」を見て私の身体は更に期待に熱くなった。
確かにそれは欲しい。
だけど、その前に、美咲さんが羽織っているパジャマの上を脱いで欲しくて、それを伝える術がなく私はもどかしくなった。
なんで、今そんな細かい事を思っているのか、自分でもわからないけど。
「…何?」
違和感に気付いた美咲さんが、私に覆いかぶさり顔を近づけてくる。
「あれ」は挿入されず私のお腹に当たっていた。
「…」
私は、動かない手を動かして、身体にかかっている美咲さんのパジャマの裾を握る。
それだけで、美咲さんはくすくすと笑った。
「これが、邪魔なのね」
私がうんうんと頷くと、「どうしようかしら」とわざとらしく迷ってから、美咲さんは羽織っていたパジャマの上を脱ぎ捨てた。
「これでいいの?」
露わになった美咲さんの上半身をうっとりと眺めつつ、私は頷く。
「まったく、素直なのかと思えば我儘なのね、冴子は」
ごめんなさい、と言おうとして言えない事に気が付く前に、いきなり「あれ」が私の中に押し入ってきて、私は呼吸ができなくなった。
思い切り上から身体を押し付けられて、胸も、お尻も圧迫される。
肺まで圧迫されて、口をふさがれている事もあり息が詰まりそうだった。
「…んっ」
私が本気でうめいていても、美咲さんは構わず思うままに腰を打ち付けてくる。
入る瞬間に強くえぐられるような感覚があって、そこからは一気に最奥まで貫かれた。
先ほどの、柔らかい花弁や萌芽の感触とは違う、荒っぽいもので中を穿たれて、私は意識が遠のきそうになる。
「んぐ…」
美咲さんの腕が私の首に絡んできて、ぎゅっと抱きしめられる。
顔に美咲さんの髪がかかって、それが揺れてくすぐったかった。
美咲さんの身体はゆらゆらと、水中を漂う海藻のように、そして時には陸に打ち上げられた魚のように腰を跳ねさせて、いやらしく私の中を「あれ」で器用に擦っていく。
「冴子…あぁっ、冴子っ…ん……」
身体の動きとは別人のように、美咲さんは切羽詰まった声で、何度も何度も私の名前を呼んだ。
耳元で直に聞く、美咲さんの吐息混じりの喘ぎ声と「冴子」と呼ぶ声が、私の脳にダイレクトに作用する。
その身体の動きと、声によって私は快感の果てにさらわれそうになった。
一方自分の声は枯れてしまったように、弱弱しいものしか絞り出せない。
あまり派手に喘ぐと、声は漏れないが息が苦しくなるので、生存本能から無意識のうちに私は声を出さないようになっていた。
「…っん…ふ」
私の弱弱しいうめき声に反して、美咲さんは盛大に喘いでいる。
それに、腰の動きもいつもより激しく、身体を揺らしている時間も長かった。
まるで、自分の意志では止める事ができなくなってしまったかのように。
「ん、ん…っ」
私はとにかく、美咲さんがそれを見ていようといまいと、視線で「気持ちいい」事を伝え続けようとした。
途中から、美咲さんは私の反応など気にせず、「あれ」を突っ込む事に夢中になってしまったようで、私が気持ちいいと思っているかどうかはあまり関係ない気もしたけど。
「あれ」でめちゃくちゃに突かれている間、私は何度か達していて、そしてまた意識を取り戻し、というのを繰り返していた。
「あ…はぁ……冴子」
何度呼ばれたかわからないぐらい繰り返し名前を呼ばれ、その後に美咲さんは達したようだった。
脱力した身体の重みが、それを物語っている。
「……」
美咲さんの動きが止まり、あるいはこのまま寝落ちするのではないかと思ったが、美咲さんはじっとしたまま呼吸を整えているようだった。
私もそうだけど、すぐに身体を離してしまうのは寂しい気がして、なんとなく繋がったままでしばらくじっとしているのが美咲さんも好きなのだと思う。
「…ああ、ごめんね」
体重をかけて苦しかっただろう、という意味合いでそういう事を言いながら、美咲さんは私の隣に横たわる。
「ごめん、今外すから」
そう言いながらも、すぐには身体を動かすのが億劫らしく、美咲さんは緩慢に寝返りを打った。
私は横になったまま美咲さんの方を向き、頭を下げて美咲さんの首の辺りに顔を近づけた。
美咲さんは腕だけを動かして、私の頭を抱えるようにしながら手ぬぐいを外してくれる。
「…苦しかったでしょ」
「あ、ん…と」
口を半開きの状態で固定されていたので、思うように言葉が出て来ない。
美咲さんは「いいから」と言って私の頭を両手で抱えて、抱き締めてくれた。
私の身体は、手首と足首が左右それぞれに拘束されているので、膝で美咲さんの腰をはさむような恰好でいる。
「ごめん、こっちも外さないとね」
美咲さんは手を伸ばして、手首側の枷を外した。
勢いで脚が伸びて、変にぶらぶらする。
脚の側のボタンが外れていないので、枷は足首にだけかかっている状態になった。
「…残りは自分で、外せます」
「うん」
美咲さんは珍しく、精根尽き果てた様子だった。
だから、無理をさせたくなくて、じっとしていて欲しいから、私は自分で残りの枷を外す。
枷がなくなったらそれはそれで、やはり不自然な態勢を続けていた事が身体に刻まれており、私は手足をだらりと伸ばして、美咲さんに寄り添いそのまま動けなくなった。
…ああ、堕ちる、そう思った直後に、私は眠りに誘われる。
その直前視界に入った美咲さんの様子も、どこか心ここにあらずといった風情で、人を気遣う余裕をなくしているように見えた。
…私の所為で無理させてしまっただろうか。
私にとっては、新しいプレイによる刺激そのものよりも、やはり美咲さんの新しい一面を目撃できた事が何より嬉しい。
自分の欲上に戸惑いつつも、自制できないぐらいに興奮していた美咲さんの様子を見られただけで、感動すらしている。
心の中で「お姉さま」と呟いて、私は美咲さんにそっとしがみついて眠った。
そういう状況の時、私はそわそわせず、落ち着いているというのとは違うけれど、何か重たい物がのしかかっているような、そんな重圧感を覚える。
部長会ランチの後は軽い頼まれ事しかなかったので、日中のビュッフェレストランでの出来事に影響される事もなく一日の仕事を終える事ができた。
…美咲さんは結局、あのリモコンローターをどこへ隠して持ち歩いてるのだろうか。
考えても仕方ない事だが、私は美咲さんと暮らす恵比寿のマンションへの帰路に就く。
帰り際に更衣室で梢さんに捕まり「今日の部長会ランチどうだった?」と明るく質問され、どきりとした。
梢さんは呼ばれた事がないらしく「いいなあ」としきりに呟いていた。
やましい所があるから、梢さんが何か勘付いているのかと焦ったけれど、実際はそうでもないらしく、単に部長会ランチの様子を知りたかっただけのようだった。
…聞かれた所で、まともに参加できていなかった私はあまり多くを語れなかったけれど。
「梢さんもお願いしたら呼んでもらえるんじゃないですか」と勧めてみたけれど、案外仕事に対しては真面目な梢さんは「そんなの秘書がおねだりするのは非常識だよ」と一蹴する。
進藤部長の大らかさに慣れ過ぎてしまって、秘書がそれぐらい言うのは構わないのではないか、という考えに染まりかけている自分を戒めたくなった。
…美咲さんと進藤部長はそういう所が似ているような気がする。
美咲さんの方は、進藤部長ほど誰に対しても適当という事はないだろうけど。
私にとって最初の担当が進藤部長で良かったのだろうか、不安になる。
*-*-*-*-*-
帰宅してシャワーを浴び軽く食事を済ませる。
いつも、夕食は満腹になるまでは食べないようにしているけど、今日は殊更に食事の量は少なくなってしまった。
…なんとなく、胃の辺りが張っているような気がして、無理に食べるとかえって調子が悪くなりそうだったからだ。
そんな自分の身体の声を聞いてようやく、自分が相当緊張しているのだなとわかる。
手持無沙汰になってベッドに横たわるけれど、時間の進みが遅い。
美咲さんは、予告通り早い時間に帰ってきたが、私に世話を焼かせないためか、夕食は外で済ませたとの事だった。
「ちょっと待っててね」
そう言い残して浴室へ向かう美咲さんはいつもと変わらず朗らかである。
自分だけがやたらと緊張している感じで、違和感があった。
…でも、美咲さんの事だから、ある瞬間にスイッチが入るんだろうな、などと他人事のように思う。
そこまではわかっているけど、その先はあまりよくわからない。
シャワーを済ませて脱衣所で髪も乾かし終えた美咲さんが出てきて、ふいに告げてくる。
いつものパジャマ姿かと思いきや、暑いためか下はショーツしか身に着けておらず、上も羽織っただけの恰好でボタンを留めていないから、胸の谷間がちらちら見えて、そこばかりに視線がいってしまう。
眼鏡は浴室へ行く時から外しっぱなしだ。
「ちょっと前にも言ったけど」
「…はい」
美咲さんは、一応こちらに近づいては来るものの、すぐ隣に座ったり、身体に触れてきたりはしない。
私は反射的に、腰掛けていたベッドから立ち上がっていた。
「冴子が人に見られて興奮するたちなのは知ってるけど、感じてる冴子の顔を他の人に見せたくないっていう思いが、強くなってるのよね」
美咲さんは自分の思う所を語っている。
…だから、昼間の事を面白くないと思っているという事なのだろう。
「すみません」
ほんの少しだけうつむいてそう応じるしかない私に、美咲さんは「ま、とにかく」と言葉を続けた。
「まずは全部脱ぎなさい」
「はい」
全部と言われても、部屋着はワンピース一枚だけで、ブラもショーツも身に着けてはいない。
躊躇なく、私はそのワンピースの肩を外してそのまま床に落とした。
「そうそう」
美咲さんはにこやかに言う。
まだ、怖い美咲さんには変わっていないらしい。
「そこに寝て」
立ったままの私にそう言い置いて、美咲さんは一旦別室へ引っ込んだ。
戻って来た美咲さんの手には、いくつか物が握られているけれど、ぱっと見て何なのかはよくわからない。
「…ねぇ、冴子」
「…はい」
所在なく裸で仰向けに寝そべっている私の傍に美咲さんは座り、優しく声をかけてくる。
「あの日からちょうど一年経って、記念すべきプレイをする事になりそうね」
「……」
何をされるのか知らない私は返答のしようがない。
「それも冴子が望んだ事なんだから、仕方ないわよね」
「…はい」
美咲さんは「うーん」と考えるようにうなりながら手元の何かを選び出す。
私は、あえて美咲さんの手元は見ないようにした。
必死になって天井ばかり見ていると、美咲さんが近づいてくる気配があって、「膝を立てて」という声が降ってくる。
言われるままに私は両膝を立てて、次の言葉を待っていたが、言葉の代わりに身体の傍で物音がした。
…パチン
あっと思ってその場所に視線をやると、私の右の手首と足首が、革ベルトのような黒い枷で留められていた。
少し長さがあるので、窮屈な態勢にはならないけれど、少なくともこの状態で膝は伸ばせないし、楽にしようとすると自然と脚は開いてしまう。
「…左もですか」
「そうよ」
美咲さんがベッドの反対側に回り込んで、左の手首と足首も枷で留めてしまう。
私はなんの違和感も感じないし、窮屈でもないから特に恐怖感は覚えなかった。
「まだあるわよ」
美咲さんは私の身体を起き上がらせて、背後に回り私の上半身を身体で支えてくれる。
「ごめんね」
そう言ったかと思うと、ねじった手ぬぐいのようなものを口に噛まされた。
そのまま、左右に引っ張って耳の上辺りを通し頭の後ろで固定される。
「髪が絡んじゃうかも」
痛くならないような力加減で、でも外れないようにそれが固定された。
私は、「髪が」と気にしていた美咲さんに大丈夫だと伝えるために首を軽く左右に振る。
そうした瞬間に、「言葉」を奪われた事への強烈な無力感に襲われた。
身動きを取れなくされても、特に何も思わなかったのに、美咲さんに自分の心を伝えるための手段が一つ奪われた事には、とてつもなく悲しい気持ちになった。
「目はふさがないわよ、本当に冴子がダメな時わからなくなるから」
「はい」と言う代わりに首を一度だけ縦に動かす。
「できた」
手ぬぐいがしっかり固定されている事を確かめて、美咲さんは私の頭の後ろでそう呟く。
そうしてから改めて私の恰好を見下ろしているようだった。
「本当、エロいわね」
「……」
背後から美咲さんの手が伸びてきて、無防備に晒された私の胸に触れてくる。
やわやわと揉んだり、乳首の先を軽く弾いたりして、私の反応を確かめているようだった。
勿論胸への愛撫は気持ちいいのだが、私としてはそれ以上に、背中に当たる美咲さんの胸の感触や、時々悪戯するように美咲さんの唇や舌先が、私の耳や首筋を這ってくすぐってくるのがたまらなかった。
「んん、んっ…ふぅ」
ねじった手ぬぐいを噛んだ口の端から、こもった声が漏れるばかりで普段とは全然感じが違う。
これだと、自分がいかに感じているかという事も、十分には伝えられない気がして、もどかしくなった。
その一方で、喘ぎ声をどれだけ思い切り出したとしても、これなら声がこもるから、うるさくならないように気を使う必要がない事にも気付いて、そういう意味では何かから開放されたような思いにも気付く。
感じてくると、私は言語化できないような声で喘ぐらしく、動物っぽいような感じがしていて、その事をほんの少し気にしていた。
けれども今の状態なら、それも気にしなくて良くなる。
「…感じてきちゃったの?」
後ろから耳元でそう囁かれて、私は耳から全身が溶けるかと思うほど興奮した。
「んん」とうなりながら首を縦に動かす。
「…なんか可愛いわね、一生懸命で」
片方の手は胸を掴んだまま、もう片方の手が私のお腹の方へと下りていく。
「可愛いからこっちも触ってあげる」
わざと、秘部の周辺を指先でくすぐってから、ようやく花弁に美咲さんの指が振れる頃には、そこは十分に潤っていた。
「…勝手に入っちゃいそう」
言葉ではそう言いつつも、指は無遠慮に花弁を押し開いてどんどん中をえぐってくる。
指の付け根までしっかり突っ込んだ所で、私の内側の、感じるポイントを的確に圧迫してくる。
「ん、ん…んふ」
身体をよじろうとするが、あまり大きな動きが取れない。
動くと枷の紐部分がぴんと張って、全身が不自然に突っ張った。
「鏡があれば良かったわね、よく見えるように」
「……ん」
美咲さんは、一瞬だけ指を浅い所まで引いてから、またズブリと突き入れてくる。
その時に秘部からいやらしく粘着質な水音がして、美咲さんは面白がるようにその音をわざと大きく立てながら、指を出し入れしてきた。
「ん、ん…んぅっ」
腰が前に出てしまい、自然と両脚は開いていく。
もっと奥までして欲しくなっている事が、身体の動きだけで伝わってしまいそうだが気にしている余裕はなかった。
「…気持ちいい?」
私は頷く代わりに必死で首をねじって美咲さんと目を合わせる。
ぱちりと一回瞬きをして、潤んだ瞳を向けると、美咲さんは煽られたように何かを堪えた表情になる。
「こんな恰好させられてもなお素直なのね、冴子は」
もう一度瞬きをして美咲さんを真っすぐ見つめる。
「キスができないのは残念だわ」
美咲さんはそう言いながら、苛立ったように乱暴に指を使って私の身体の内側を弄り回してきた。
「んふっっ、ん」
その激しい指の動きには全くそぐわないような、簡素なうめき声を私は漏らしてしまう。
しばらくそんな風に指で秘部を弄られた後、美咲さんが私の背後から離れていく。
そのまま、私はゆっくりと仰向けに倒れて枕に頭を預けた。
この状況は、何もできないと解釈すればネガティブな印象だが、何もしなくて良いととらえれば、楽でいいじゃないかと思う事もできる。
私は、自ら美咲さんの股間に顔を埋めて秘部をひたすら舐めて奉仕するのが大好きだし、自分もそれで興奮する。
でも、今日はそれができる状況にないし、望んだとしてもさせてもらえないだろう。
今は自由に動いて美咲さんの身体に触れる事が許されない状況だが、私は自分が動く事なくただ快感を与えられる悦びを、まだ知らないのかもしれない。
枷は、美咲さんから「何もしなくていい」と言われている証明のようだと思えるから、一般的に言うような、こういう行為の醍醐味とはまた違う心持にあるんだろうな、と私は思った。
だから、不自由ではあるけれど、恐怖感はない。
ただ、それでも私にとって自らの身体を使って美咲さんに奉仕する事ができないのは、十分残念な事だ。
そんな事を考えていたが、美咲さんは傍にいない。
寝室のどこにもいなくなっていた。
どこかへ行ってしまったとは考えにくいが、左右の手首と足首を繋がれて、口も利けない状態で放置されている事実にようやく思い至り、突然私は不安にかられた。
「……」
耳をすましても別室からの物音は聞こえないし、美咲さんはどこへ行ってしまったのだろうか。
急に悲しくなってきて、涙がこぼれそうになる。
変に濡らした秘部も、なんだか物悲しい。
私は身体を横に倒して、顔を半分枕に埋めた。
うっかり時計が目に入ってしまい、時間を確認してしまう。
「……」
そのまま、10分ぐらい経過して、私の心が真っ白になり、このまま眠ってしまおうにも口元が苦しい、と思っているとようやく美咲さんが戻ってきた。
私は思わず顔を上げて美咲さんを見上げる。
「自分の置かれている状況がわかったでしょ」
「……」
一つ頷いて、一度はおさまった涙がまた溢れかけた瞳で美咲さんをじっと見た。
「…これ」
そう言いながら美咲さんが笑顔を浮かべて見せてきたのが、昼間使ったリモコンローターだった。
昼間ベトベトに汚してしまったが、綺麗にしたらしく美咲さんの指につままれたローターは乾いてつるりとしている。
「はい」
美咲さんはそう言いつつローターを私の秘部のすぐそばに置く。
スイッチを入れて振動させると、ローターが動いてベッドのわずかな傾斜に沿い、ごく軽く私の秘部に接触してきた。
「…っ、ん…」
身体を動かすと、その反動でローターは身体から離れていってしまう。
諦めてじっとしていると、ローターはまた傾斜に沿って自重でシーツの上を滑り私の花弁にちょこんと触れてくる。
「んっ、んっ」
微弱な刺激しか与えられず、私の身体には熱が溜まっていくばかりだ。
美咲さんの手で、それを握ってがっちり当てて欲しいのに。
「くっついたり離れたりして、面白いわね」
「…んん」
美咲さんは呑気にそんな事を言うけれど、私の方はそれどころではない。
何とか、もどかしさを伝えようにもその方法もない。
「んん」
とにかく一生懸命に美咲さんを見て訴えてみるけれど、美咲さんは知らん顔である。
挙句、あろう事か美咲さんはローターのスイッチを切ってしまった。
「……」
思わず、私はもじもじと腰を振ってしまう。
脚を大きく開いた状態で秘部を晒したまま。
「…入れて欲しいの?昼間みたいに」
「っ…」
みわかに、ビュッフェレストランのトイレで美咲さんにされた事を思い出し、私の身体は硬直した。
見た目にもよくわかる、いい反応だったらしく、美咲さんはくすっと笑う。
「…冴子は、中を擦られるのが大好きなのよね?」
それは事実だが、面白がるように言葉で言われるのは恥ずかしい。
私は頷く事もできず、相変わらず固まっていた。
「あら、違うの?…」
違いません、と言おうと思ったが実際に発せられた音は「んぐぐ」という、言葉ではないうめき声だった。
「何を言ってるのか、わからないわね」
私は勢い良く首を左右に振る。
はちまきのようにくくられた手ぬぐいが、その動きに抗って少し頭に食い込んだ。
美咲さんの顔に近づきたくて、私は上半身を起こす。
「…本当はね」
美咲さんは私の顔ではなく、じっと私の秘部を見つめている。
そうして徐に語り始めた。
「人を虐めて興奮する趣味なんてなかったはずなのに、こうやってわざと、口を利けなくさせておいてあれこれ質問して、…そんなめちゃくちゃな状況にされているのにそんな素直に反応されて」
「……」
変だと思わないのか、理不尽だと思わないのか、そんな風に言いたいのだろうか。
私には、これのどこが理不尽なのか、ちっともわからない。
美咲さんは私の身体をどう扱おうと、それが私のためだとわかっているから、私は何とも思わない。
「手足を繋がれて、口もふさがれて、それなのに一生懸命感じているのを伝えようとして、もっとしてって欲しがる冴子が、可愛く見えてしょうがないのよね」
「……」
そう言い終わるか終わらないぐらいのうちに、すかさず美咲さんは私の花弁にしゃぶり付いた。
私は思わず、身体を後ろに倒してベッドに背中を預けて悶える。
「んっ、んぅっ…」
喘ぎ声がこもるから、どんなに感じていても私の秘部をすする音や美咲さんのちょっとした吐息がよく聞こえてしまう。
時折「はぁ」と、溜め息のように息継ぎしながら、美咲さんは私の秘部をチュウッと吸ったり、入り口の辺りに舌先を埋めて中をまさぐってきた。
私の口元から漏れるうめき声は、こもっていても徐々に甘ったるい音へと変化していった。
私は「…んん、くぅん」と、単調な声を漏らして、美咲さんの口淫に応え続ける。
いつもよりも美咲さんの口淫はしつこくて、萌芽を舐め回しながら指は蜜穴に差し込んでみたり、それに飽きると花弁を唇でしゃぶりながら、ローターを萌芽に当てて振動させてきたりする。
常に入り乱れて与えられる2つ以上の刺激に、私の身体はもたなくなりそうだった。
「ん、ふぅ……これだと、好きなだけ冴子の身体で遊べるわね」
「……」
いつの間にか、そうして欲しいと期待してしまう自分がいる。
攻守入れ替わる事のない、一方的な愛撫にただ溶かされてどこまでも堕ちていきたいと願ってしまう。
枷があるから、それが許されている気がした。
絶え間なく与えられる恍惚に涙を流していた目で、美咲さんに訴える。
美咲さんと視線が合うと、逆に美咲さんの方が先に視線を反らした。
「…いつにも増して素直に見えるのよね、冴子が」
「……」
美咲さんは急に秘部から口を離す。
今この瞬間に、何をするのか決める権利は全て自分にあるのだと、改めてわからせるように、それは唐突だった。
「でも、私のしたいようにするからね」
勿論です、と言う代わりに私は一つ瞬きをした。
それを美咲さんが見ていたかどうかはわからないが、美咲さんはさっとショーツを脱ぎ捨てて片足で私の腰をまたいでくる。
程なくして美咲さんの手が私の太腿をぐいっと引き寄せて、二人の身体が噛み合うように密着した。
私のものだけではない、美咲さんがこぼしたであろう蜜の感触と、柔らかい花弁やこりこりした萌芽の感触が、一挙にまとめて伝わってくる。
「…んふぅ」
甘い溜め息が漏れたのは、二人同時だった。
私は、あえてされるがままに美咲さんの動きに身を任せる。
美咲さんは、とりつかれたように激しく腰を打ち付けてきた。
「…冴子、冴子、あ…んっ」
気が付くと繰り返し名前を呼ばれていた。
その声は、助けを求めるような、切羽詰まった声色で、とてもこの場を支配している人のものとは思えない。
「ね、冴子、冴子…っ…」
激しい腰の動きを、私はただ受け止める。
美咲さんの手が伸びてきて、私の胸を掴み、乳首をめちゃくちゃにこね回されても、私はただそれを受け止めていた。
いつもとは違う、だけどやっぱり言語化できない喘ぎを漏らしながら。
これまでとはまた違う様子で私を求める美咲さんの姿に、それはもう、死んでしまいそうなぐらい陶酔していった。
「…やだ、すごい興奮してるの、私」
美咲さんは泣きそうになりながら訴えてくる。
「冴子の事、人形みたいに扱ってるのに、興奮しちゃうの」
私はまた思う。
それのどこがいけない事なのだろうと。
でも美咲さんは、何か罪悪感を覚えているようだった。
そしてまた美咲さんは、「冴子、冴子」と何度も私の名前を呼んで、身体を擦り合わせてくる。
私は、なぜか美咲さんを励ましたいような心持になり、自分の快感のためだけにではなく、美咲さんを肯定している事を知らせたくて、一生懸命に腰を動かした。
「んっ、んん」
「…こんなにされてるのに、まだそんな事するの、冴子は」
美咲さんは、それでも嬉しそうだった。
「本当に、いけない子…だからもっとお仕置きが必要だわ」
そう、そうやってもっと咎めて、突き落として欲しい。
美咲さんにだったら心からそうされたいと思っている。
擦り合わせた秘部の間は、もうどちらのものかわからないぐらいに蜜が溢れてぐちゃぐちゃになり、それでもその出所をクチュクチュとくっつけては離して、を繰り返していくうちに、美咲さんの動きも徐々に緩慢になっていった。
「あ、はぁ…」
美咲さんは肩で息をしながら、ふいに絡めた身体を離す。
今度は、用意していたらしい「あれ」を装着し始めた。
「…貝合わせだけじゃ余裕なんでしょ、どうせ」
美咲さんはそう言いながら「あれ」を見せつけてくる。
私の反応からそんな事まで読み取っていたのかと戦慄を覚えつつも、「あれ」を見て私の身体は更に期待に熱くなった。
確かにそれは欲しい。
だけど、その前に、美咲さんが羽織っているパジャマの上を脱いで欲しくて、それを伝える術がなく私はもどかしくなった。
なんで、今そんな細かい事を思っているのか、自分でもわからないけど。
「…何?」
違和感に気付いた美咲さんが、私に覆いかぶさり顔を近づけてくる。
「あれ」は挿入されず私のお腹に当たっていた。
「…」
私は、動かない手を動かして、身体にかかっている美咲さんのパジャマの裾を握る。
それだけで、美咲さんはくすくすと笑った。
「これが、邪魔なのね」
私がうんうんと頷くと、「どうしようかしら」とわざとらしく迷ってから、美咲さんは羽織っていたパジャマの上を脱ぎ捨てた。
「これでいいの?」
露わになった美咲さんの上半身をうっとりと眺めつつ、私は頷く。
「まったく、素直なのかと思えば我儘なのね、冴子は」
ごめんなさい、と言おうとして言えない事に気が付く前に、いきなり「あれ」が私の中に押し入ってきて、私は呼吸ができなくなった。
思い切り上から身体を押し付けられて、胸も、お尻も圧迫される。
肺まで圧迫されて、口をふさがれている事もあり息が詰まりそうだった。
「…んっ」
私が本気でうめいていても、美咲さんは構わず思うままに腰を打ち付けてくる。
入る瞬間に強くえぐられるような感覚があって、そこからは一気に最奥まで貫かれた。
先ほどの、柔らかい花弁や萌芽の感触とは違う、荒っぽいもので中を穿たれて、私は意識が遠のきそうになる。
「んぐ…」
美咲さんの腕が私の首に絡んできて、ぎゅっと抱きしめられる。
顔に美咲さんの髪がかかって、それが揺れてくすぐったかった。
美咲さんの身体はゆらゆらと、水中を漂う海藻のように、そして時には陸に打ち上げられた魚のように腰を跳ねさせて、いやらしく私の中を「あれ」で器用に擦っていく。
「冴子…あぁっ、冴子っ…ん……」
身体の動きとは別人のように、美咲さんは切羽詰まった声で、何度も何度も私の名前を呼んだ。
耳元で直に聞く、美咲さんの吐息混じりの喘ぎ声と「冴子」と呼ぶ声が、私の脳にダイレクトに作用する。
その身体の動きと、声によって私は快感の果てにさらわれそうになった。
一方自分の声は枯れてしまったように、弱弱しいものしか絞り出せない。
あまり派手に喘ぐと、声は漏れないが息が苦しくなるので、生存本能から無意識のうちに私は声を出さないようになっていた。
「…っん…ふ」
私の弱弱しいうめき声に反して、美咲さんは盛大に喘いでいる。
それに、腰の動きもいつもより激しく、身体を揺らしている時間も長かった。
まるで、自分の意志では止める事ができなくなってしまったかのように。
「ん、ん…っ」
私はとにかく、美咲さんがそれを見ていようといまいと、視線で「気持ちいい」事を伝え続けようとした。
途中から、美咲さんは私の反応など気にせず、「あれ」を突っ込む事に夢中になってしまったようで、私が気持ちいいと思っているかどうかはあまり関係ない気もしたけど。
「あれ」でめちゃくちゃに突かれている間、私は何度か達していて、そしてまた意識を取り戻し、というのを繰り返していた。
「あ…はぁ……冴子」
何度呼ばれたかわからないぐらい繰り返し名前を呼ばれ、その後に美咲さんは達したようだった。
脱力した身体の重みが、それを物語っている。
「……」
美咲さんの動きが止まり、あるいはこのまま寝落ちするのではないかと思ったが、美咲さんはじっとしたまま呼吸を整えているようだった。
私もそうだけど、すぐに身体を離してしまうのは寂しい気がして、なんとなく繋がったままでしばらくじっとしているのが美咲さんも好きなのだと思う。
「…ああ、ごめんね」
体重をかけて苦しかっただろう、という意味合いでそういう事を言いながら、美咲さんは私の隣に横たわる。
「ごめん、今外すから」
そう言いながらも、すぐには身体を動かすのが億劫らしく、美咲さんは緩慢に寝返りを打った。
私は横になったまま美咲さんの方を向き、頭を下げて美咲さんの首の辺りに顔を近づけた。
美咲さんは腕だけを動かして、私の頭を抱えるようにしながら手ぬぐいを外してくれる。
「…苦しかったでしょ」
「あ、ん…と」
口を半開きの状態で固定されていたので、思うように言葉が出て来ない。
美咲さんは「いいから」と言って私の頭を両手で抱えて、抱き締めてくれた。
私の身体は、手首と足首が左右それぞれに拘束されているので、膝で美咲さんの腰をはさむような恰好でいる。
「ごめん、こっちも外さないとね」
美咲さんは手を伸ばして、手首側の枷を外した。
勢いで脚が伸びて、変にぶらぶらする。
脚の側のボタンが外れていないので、枷は足首にだけかかっている状態になった。
「…残りは自分で、外せます」
「うん」
美咲さんは珍しく、精根尽き果てた様子だった。
だから、無理をさせたくなくて、じっとしていて欲しいから、私は自分で残りの枷を外す。
枷がなくなったらそれはそれで、やはり不自然な態勢を続けていた事が身体に刻まれており、私は手足をだらりと伸ばして、美咲さんに寄り添いそのまま動けなくなった。
…ああ、堕ちる、そう思った直後に、私は眠りに誘われる。
その直前視界に入った美咲さんの様子も、どこか心ここにあらずといった風情で、人を気遣う余裕をなくしているように見えた。
…私の所為で無理させてしまっただろうか。
私にとっては、新しいプレイによる刺激そのものよりも、やはり美咲さんの新しい一面を目撃できた事が何より嬉しい。
自分の欲上に戸惑いつつも、自制できないぐらいに興奮していた美咲さんの様子を見られただけで、感動すらしている。
心の中で「お姉さま」と呟いて、私は美咲さんにそっとしがみついて眠った。
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