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《ドコカノキオク》
第0話 物語のハジマリ
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────記憶を振り返ってみれば、どれも始まりは突然だった。自分がどれだけ無力だったのか。守られていたのか。世界を知らなかったのか。作り上げるのは難しく壊れる時は一瞬だと気付かされた。
今まで強さなんてものを求める機会は少なかった。
現状維持で満足……していたのだろう。自分から変わろうとしていなかった。時間が経てばそれに伴い成長し強くなれるだろうと漠然と思いながら日々を過ごしていた。
───何故かって?そんなことを考えている暇がないほど、毎日が楽しかった。両親がいて、心置きなく話せる仲間達がいて、こんな俺を求めてくれていた人たちがいた。暖かさを分け与えてくれる人達が居たから俺は今もここにいる。危険なことは幾度もあったが、今も昔も自分が成すことに揺らぎは無い。
「───さま?」
呼ばれる声に気が付き、持っていた筆を置く。机の横から小さなふたつの瞳がこちらを覗いていた。
「ああ、すまない。何か用か?」
「なにしているの?おえかき?」
「あはは、お絵描きじゃないよ───」
今書こうとしているのは自分の歴史とも言える自伝、と素直に伝えても目の前の少女にはまだ伝わらないだろう。
「───自分の物語かな?今まで小さい時から大人になって今になるまで何があったのか、楽しかったことや面白かったことを、本みたいに書いているかな?」
「ほん?ほんになるのっ!?」
本と聞いたからか小さなふたつの瞳が輝いていた。
「なるかもね」
まだ本になるかは不明だ、自分からではなく友人からの頼みで書き始めようとしている。ここから専門家に依頼して文章として読める物になるまでにどの程度の期間が掛かるのだろうか、想像がつかない。
それに実際になったところで万人受けするものでは無いだろう、それこそ全てを書くのならば到底子供には見せられる内容ではない。
「ねるまえによんでくれる?」
だが、小首を傾げ強請るようにお願いされたら断ることなどできない。
「ああ、約束だ──」
そう言いながら小指を差し出すと応じるようにまだ小さな小指が伸び、そして絡みあう。
「ゆーびきーりげんまーん─────」
子供には見せられないと言っても人生の全てが見せられない出来事ばかりで塗りつぶすように真っ黒だった訳ではない。半分程度飛ばせば問題ないだろう……なら追加で子供等の絵本を制作をお願いしようか。代わりに何を提示してくるか分からないが、条件さえこちらが飲めば了承してくれるだろう。
「───ゆーびきったっ!!」
元気な声が部屋に響く。
「────指きった」
釣られるように小さな声で呟く。
「えへへーまたやくそくふえたね」
「これで100個目くらいか?」
「そんなにしてないよっ、でもでもいっぱいやくそくがあるからってほかのやくそくもわすれちゃだめだよ?」
「大丈夫だ、今まで約束を破ったことは無いだろ?破れば針千本を飲む事になる、考えるだけで怖くて忘れられないさ。───ところで、お腹はすいていないか?」
「おかしたべたい」
「それならちょうどいい、少し前に南の友人から珍しい菓子を手に入れたからと送られてきたばかりだ。すぐ用意させる、皆と食べなさい。──案内を頼む」
部屋の端で待機していたメイドを呼ぶ。
「かしこまりました。───様、こちらへ」
「えっ、おとうさまは?いっしょにいかないの?」
少し悲しそうな表情を浮かべた最愛の子。
どう答えたものか……ここで仕事があると素直に答えても余計に悲しませるだけだろう。
「先に行って食べていてくれ、これを書いたら直ぐに行く。
菓子の種類は多いと聞いているが、もしかしたら他の者が食べてしまうから私の分を取っておいてくれると助かる」
「うん、わかったっ!シェーナちゃんがいっぱいたべちゃうもんね、おとうさまのおかしはとっておくわ」
なぜそこで個人の愛称が口から出てくるようになったのかを直接、本人に問いただしたくなるが理由が簡単に想像できてしまう。昔と比べまるくなったとでもいうのだろうか。彼女の事を良く知ったから思い当たったのだろうと、心の中で呆れながらも自答しておく。
「任せた」
「それでは後程、失礼いたします」
思わず見惚れてしまうような優雅な一礼をしたメイドに続き真似をするように同じくかわいい一礼を受けて、頷き二人を見送った後再びペンを手に取り紙と向き直る。
さて、どこまで考えを整理したのだったか─────
まずどこから書き始めるかになるのか。
記憶の断片になるほどの過ぎ去った過去、幼い頃の平凡な日常を最初に書いたとしても手に取り読もうと思うまで至るのは極少数だろう。自分だったら数ページ読んだ後、書庫の奥の方で眠ることになると分かりきっている。
記憶というのは曖昧で時間が経てば経つほど過去の記憶は薄れて行く。今となっては簡単に思い出せない記憶も存在するだろう。
あちらの要望としては「自由に書いてほしい」と言われている.....が、それらを踏まえた上で、自分の中の始まりは────
思考と記憶を頭の中で巡らせていると、一つ思い浮かんだ出来事があり思わずを胸を抑えた。
そうだなあの日だ、俺の物語の始まりは。1年に1度訪れる大切な日、1年を通しての成長を感じる日から始まる。それまでの積み重ねが、経験の大切さにまだ気づいていなかった歳の頃の話。今まで大切で幸せだった日が、その日だけは忘れられない日になった。幼い記憶と目と記憶に焼き付いた光景が今も鮮明に思い出せる。
なにもできなかった、ただその場からにげだしただけだった。
───そう、あれは14歳になる誕生日のことだった。
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────記憶を振り返ってみれば、どれも始まりは突然だった。自分がどれだけ無力だったのか。守られていたのか。世界を知らなかったのか。作り上げるのは難しく壊れる時は一瞬だと気付かされた。
今まで強さなんてものを求める機会は少なかった。
現状維持で満足……していたのだろう。自分から変わろうとしていなかった。時間が経てばそれに伴い成長し強くなれるだろうと漠然と思いながら日々を過ごしていた。
───何故かって?そんなことを考えている暇がないほど、毎日が楽しかった。両親がいて、心置きなく話せる仲間達がいて、こんな俺を求めてくれていた人たちがいた。暖かさを分け与えてくれる人達が居たから俺は今もここにいる。危険なことは幾度もあったが、今も昔も自分が成すことに揺らぎは無い。
「───さま?」
呼ばれる声に気が付き、持っていた筆を置く。机の横から小さなふたつの瞳がこちらを覗いていた。
「ああ、すまない。何か用か?」
「なにしているの?おえかき?」
「あはは、お絵描きじゃないよ───」
今書こうとしているのは自分の歴史とも言える自伝、と素直に伝えても目の前の少女にはまだ伝わらないだろう。
「───自分の物語かな?今まで小さい時から大人になって今になるまで何があったのか、楽しかったことや面白かったことを、本みたいに書いているかな?」
「ほん?ほんになるのっ!?」
本と聞いたからか小さなふたつの瞳が輝いていた。
「なるかもね」
まだ本になるかは不明だ、自分からではなく友人からの頼みで書き始めようとしている。ここから専門家に依頼して文章として読める物になるまでにどの程度の期間が掛かるのだろうか、想像がつかない。
それに実際になったところで万人受けするものでは無いだろう、それこそ全てを書くのならば到底子供には見せられる内容ではない。
「ねるまえによんでくれる?」
だが、小首を傾げ強請るようにお願いされたら断ることなどできない。
「ああ、約束だ──」
そう言いながら小指を差し出すと応じるようにまだ小さな小指が伸び、そして絡みあう。
「ゆーびきーりげんまーん─────」
子供には見せられないと言っても人生の全てが見せられない出来事ばかりで塗りつぶすように真っ黒だった訳ではない。半分程度飛ばせば問題ないだろう……なら追加で子供等の絵本を制作をお願いしようか。代わりに何を提示してくるか分からないが、条件さえこちらが飲めば了承してくれるだろう。
「───ゆーびきったっ!!」
元気な声が部屋に響く。
「────指きった」
釣られるように小さな声で呟く。
「えへへーまたやくそくふえたね」
「これで100個目くらいか?」
「そんなにしてないよっ、でもでもいっぱいやくそくがあるからってほかのやくそくもわすれちゃだめだよ?」
「大丈夫だ、今まで約束を破ったことは無いだろ?破れば針千本を飲む事になる、考えるだけで怖くて忘れられないさ。───ところで、お腹はすいていないか?」
「おかしたべたい」
「それならちょうどいい、少し前に南の友人から珍しい菓子を手に入れたからと送られてきたばかりだ。すぐ用意させる、皆と食べなさい。──案内を頼む」
部屋の端で待機していたメイドを呼ぶ。
「かしこまりました。───様、こちらへ」
「えっ、おとうさまは?いっしょにいかないの?」
少し悲しそうな表情を浮かべた最愛の子。
どう答えたものか……ここで仕事があると素直に答えても余計に悲しませるだけだろう。
「先に行って食べていてくれ、これを書いたら直ぐに行く。
菓子の種類は多いと聞いているが、もしかしたら他の者が食べてしまうから私の分を取っておいてくれると助かる」
「うん、わかったっ!シェーナちゃんがいっぱいたべちゃうもんね、おとうさまのおかしはとっておくわ」
なぜそこで個人の愛称が口から出てくるようになったのかを直接、本人に問いただしたくなるが理由が簡単に想像できてしまう。昔と比べまるくなったとでもいうのだろうか。彼女の事を良く知ったから思い当たったのだろうと、心の中で呆れながらも自答しておく。
「任せた」
「それでは後程、失礼いたします」
思わず見惚れてしまうような優雅な一礼をしたメイドに続き真似をするように同じくかわいい一礼を受けて、頷き二人を見送った後再びペンを手に取り紙と向き直る。
さて、どこまで考えを整理したのだったか─────
まずどこから書き始めるかになるのか。
記憶の断片になるほどの過ぎ去った過去、幼い頃の平凡な日常を最初に書いたとしても手に取り読もうと思うまで至るのは極少数だろう。自分だったら数ページ読んだ後、書庫の奥の方で眠ることになると分かりきっている。
記憶というのは曖昧で時間が経てば経つほど過去の記憶は薄れて行く。今となっては簡単に思い出せない記憶も存在するだろう。
あちらの要望としては「自由に書いてほしい」と言われている.....が、それらを踏まえた上で、自分の中の始まりは────
思考と記憶を頭の中で巡らせていると、一つ思い浮かんだ出来事があり思わずを胸を抑えた。
そうだなあの日だ、俺の物語の始まりは。1年に1度訪れる大切な日、1年を通しての成長を感じる日から始まる。それまでの積み重ねが、経験の大切さにまだ気づいていなかった歳の頃の話。今まで大切で幸せだった日が、その日だけは忘れられない日になった。幼い記憶と目と記憶に焼き付いた光景が今も鮮明に思い出せる。
なにもできなかった、ただその場からにげだしただけだった。
───そう、あれは14歳になる誕生日のことだった。
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